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不倫・浮気の慰謝料をより多く請求する方法|相場から判例まで徹底解説

夫や妻が不倫しているが離婚したくない・・・夫や妻を不倫相手と別れさせたい・・・配偶者の不倫で悩んでいる方の中には、離婚するのではなく、不倫相手と別れさせて夫婦生活を取り戻したいと考えている方もいるのではないでしょうか。そのような場合には、愛人や不倫相手に対して、精神的苦痛に対する損害賠償である慰謝料を請求することが有効な場合があります。とはいっても、いくらくらい慰謝料を請求できるのか相場が分からない、できるだけ多くの慰謝料を請求したいけれど、どうしたらいいかわからないという方もいらっしゃるのではないでしょうか

今回は、不倫慰謝料の相場や請求方法に加え、慰謝料請求が不倫関係の清算に効果的なケースや、そのために効果的な慰謝料請求の方法は何なのかについて解説したいと思います。夫や妻の不倫で苦しんでいる方、平穏な結婚生活を送りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。

不倫慰謝料を請求する前に確認!不貞行為とは?

そもそも慰謝料請求できる不倫とは、どういうケースでしょうか?キスから不倫でアウト、デートをしたら慰謝料請求したいなど、考え方は夫婦によってさまざまだと思いますが、法律上の不倫とは「不貞行為」を指すと決まっています。

夫婦は、配偶者以外とは性的な関係を持たないという意味の「貞操義務」をお互いに負っています。夫や妻以外の人と性的関係を持つという不貞行為をすることは、この義務に違反して、相手の権利を侵害したと評価されます。具体的には、肉体関係を持ったことを指しますが、性器の挿入にとどまらず、口淫やその他の射精を伴う行為も不貞行為に当たります。不貞行為で相手の権利を侵害し、精神的苦痛を与えたことを損害として、その損害を金銭で賠償するのが慰謝料ということになるのです。

過去に、性的関係を伴わず、一緒に飲食するなどだけだった場合も不倫慰謝料の請求が認められた裁判例がありましたが、例外的なケースといえるでしょう。また、実際に不倫があった場合でも、夫婦関係がすでに破たんしている場合、不倫相手が配偶者を独身と信じる理由があった場合、時効が来ている場合、など請求できないケースもあるので注意しましょう。

不倫慰謝料請求の主な流れ・手順

不倫慰謝料について詳しく知る前に、慰謝料請求の主な流れ・手順を確認しておきましょう。慰謝料請求の主な流れ・手順は、以下のとおりです。

①不貞行為の証拠を集める
②慰謝料を請求する相手に内容証明郵便を送る
③当事者間で示談交渉する(裁判外交渉)
④調停
⑤裁判

加害者側が示談交渉に応じない場合は、調停で調停員を間に挟んで不倫慰謝料について話し合います。いきなり裁判に発展するわけではありません。それでも話し合いが合意に達しないときは、裁判で不倫慰謝料について争います。配偶者が不貞行為を働いたと判断、推認できる証拠を集めて、裁判時に提出しましょう。

不倫慰謝料請求の各手順については、次の項目から詳しく解説します。

不倫慰謝料請求の仕組み・慰謝料の相場

(1)不倫慰謝料が請求できる仕組み

不倫(不貞)」は、「結婚している夫婦は、配偶者以外の相手とは性交渉をしない」という夫婦間の「貞操義務」という義務に違反する行為です。そして、不倫された側は、不倫した配偶者とその不倫相手に対して、貞操義務に反されたことで受けた精神的苦痛という損害を、金銭で賠償するための慰謝料を請求することができます。

貞操義務は夫婦が負うものですが、不倫は当然ながら一人ですることはできず、必ず不倫相手がいます。そこで、この不倫相手にも、「配偶者と共同して不倫という不法行為をした」という責任(これを「共同不法行為責任」と言います)を追及することができるため、不倫相手にも慰謝料を請求できるという仕組みになっています。

(2)不倫相手への慰謝料の相場

実は、慰謝料額は、当事者間で合意すれば何円でもよく、決まりはないというのがルールです。ただし、裁判になった場合にこのくらい認められるであろうとか、実務では概ねこのくらいが相場といえるという目安はあります。

  • 不倫しても別居や離婚をしないケース…50万円~200万円程度
  • 不倫が原因で別居や離婚をするケース…100万円~300万円程度

ただし、これに、不倫関係や不倫された側の家庭の事情などが加わって金額が増減します。増減する事情としては次のようなものがあります。

  • 不倫期間(不倫期間が長いほど慰謝料は高額になる事情となる)
  • 不倫相手の経済的状況(社会的地位が高いほど慰謝料額が高額になる事情となる)
  • 不倫相手の年齢(不倫相手の方が高齢で主導的立場にあると慰謝料額が高額になる)
  • 不倫相手の立場(不倫相手が配偶者の部下であるなど弱い立場だと慰謝料額は低くなる)
  • 不倫の悪質性(一度別れると約束したのに復縁していた、家庭崩壊に積極的に働きかけたなど悪質性が高い場合は慰謝料額も高くなる)
  • 夫婦に幼い子どもがいる場合(幼い子どもがいる場合は慰謝料額が高くなりがち)

これらの諸般の事情を考慮して、具体的な慰謝料額が決められることになります。

(3)不倫慰謝料の請求相手

不倫慰謝料は、不倫をした配偶者と不倫相手の双方が支払う義務を負っています。一緒に不倫という不法行為をしたという関係を「共同不法行為」と言いますが、慰謝料を合計で300万請求する場合、不倫した共同不法行為者である両者から合わせて300万円請求できるというのが、共同不法行為の考え方です。

配偶者から300万円請求してもいいですし、配偶者と不倫相手に150万円ずつ請求することでも、どちらでも選ぶことができます。離婚しない場合は、不倫相手にだけ慰謝料請求するのも方法ですが、不倫相手にだけ300万円請求することは、事情によっては認められないこともあるので注意してください。

不倫慰謝料請求ができる場合とできない場合の判断基準

不倫慰謝料を請求できると思っていても、不倫関係に至った事情によっては、不倫慰謝料が請求できないケースがあります。また、それどころか、不倫相手から逆に損害賠償を請求される恐れもあることがあります。次の5つのチェック項目に当てはまるか、まずは確認してみてください。

(1)夫婦が結婚していること

不貞行為は、法的に結婚している配偶者間で問題になります。例外的に、婚姻届を出さず法的な夫婦ではないけれど、結婚する意志で夫婦同然の生活をしている「内縁関係」の場合は、準婚関係とみなされて貞操義務があるとされ、不貞行為があると慰謝料を請求できます。単なる同棲中の場合は、慰謝料が請求できないケースもあります。

(2)夫婦関係が破綻していないこと

不倫慰謝料を請求するためには、夫婦関係が破綻していないことが必要です。不倫慰謝料は、貞操義務に違反した不貞行為によって夫婦関係が破壊されたことで受けた精神的苦痛を損害として賠償するものなので、そもそも夫婦関係が破綻していたら損害が発生していないと考えられるためです。離婚はまだでも、すでに別居したり離婚手続きをしているケースでは、不貞行為があったとしても慰謝料の請求はできません。

(3)不貞行為について故意または過失があること

不倫相手に不倫慰謝料を請求する場合には、不倫相手に不貞行為をしたことについて故意・過失があることが必要です。具体的には、相手に家庭があるとわかって不貞関係をもった(故意)、結婚指輪をしていたのに深く考えず不貞関係をもった(過失)などです。逆に、配偶者が相手に独身と嘘をつき、それを信じる理由があった場合などは、相手に故意過失がないとして、慰謝料の請求が認められない場合があります。

(4)性的関係があること

不貞行為で慰謝料を請求する場合には、性的関係があったことが必要です。性交渉、性的類似行為が含まれますが、キスやデートでは慰謝料請求はできません。

(5)自由意思にもとづき不貞関係を持ったこと

性的関係は、自由意思に基づくものでなければなりません。強姦など、無理やり関係を結んだ場合は当然不貞行為にあたりません。反対に、強姦した側は不貞行為にあたるのはもちろん、犯罪行為として逮捕されるおそれがあります。

不倫慰謝料を請求するために準備すべきモノや書類や証拠

不倫慰謝料を請求するのに、不倫相手に素直に応じれば、特段書類や証拠は必要ありません。しかし、相手が応じない場合には、慰謝料請求の根拠になる証拠や、正式に請求する書類が必要になるので、いざという時に備えてあらかじめ準備しておいて損にはなりません。

(1)不倫があったことを示す証拠

配偶者と不倫相手の間に不貞行為があったことが分かる写真や動画(性行為の様子やラブホテルに出入りしている写真や動画など)、性交渉があった事を認めるものや、性的関係があったことを想像させるメールやSNSのやりとり、音声記録のデータ、ラブホテルの領収書等です。また、探偵業者に依頼して不倫の証拠をまとめてもらった調査報告書も有効です。

(2)請求書

不倫相手に慰謝料を請求するための請求書です。「不貞行為に基づく損害賠償として金○○円を請求する」という書き方をします。支払期日や、支払方法についても記載しておきます。

なお、この請求は「内容証明郵便」で行うことで、相手が支払いに応じやすくなることがあります。内容証明郵便とは、郵便局が、「いつ、だれが、だれに、どんな内容の手紙を出したか」を証明してくれる郵便です。普通郵便に加え手数料がかかりますが、もめた場合には裁判で証拠として利用することもできます。

(3)示談書

示談」とは、当事者間の合意を言います。慰謝料の支払いに相手が合意したら、示談書に双方署名・押印して、双方一通ずつ保存しておくのが良いでしょう。示談書には、慰謝料の支払いについてだけでなく、そもそも不貞行為があったことを認め謝罪すること、配偶者との不倫関係を清算すること、二度と連絡を取らないこと、不倫のことを口外しないこと、など、諸条件も記載しておきましょう。

これらの書類や証拠を用意しておき、まずは不倫相手と、不貞行為を認めるかどうか、慰謝料請求について話し合い、双方が慰謝料の支払いや諸条件に合意したら、示談書に署名押印します。示談書は2通作成して、双方が一通ずつ保管する流れで進めます。

不倫慰謝料をより多く請求・獲得する方法

不倫慰謝料をより多く請求、獲得する方法について解説していきます。少しでも多くの不倫慰謝料をもらえれば、離婚後の生活費に余裕ができます。離婚後の生活を安定させるためにも、これから解説する内容を確認しておきましょう。

(1)さまざまな種類の証拠を多く集める

不倫慰謝料をより多く請求、獲得したい方は、以下のような不倫の証拠を集めましょう。

  • 長期間不倫が続いているとわかる
  • 不貞行為を働いた回数が多いとわかる

不倫の期間が長かったり回数が多かったりする場合、請求できる慰謝料が増額しやすいです。たとえば、ラブホテルや風俗の領収書が数年分あれば、配偶者の不倫が長期間で不貞行為を働いた回数が多いと証明しやすくなります。

また、裁判時に裁判官から不倫の事実を認められやすくもなります。ですので、さまざまな種類の証拠をなるべく多く集めておきましょう。

(2)不倫問題に強い弁護士に依頼する

不倫問題に強い弁護士に依頼すれば、より多くの慰謝料を請求しやすくなります。不倫慰謝料の請求額は、過去の似た判例を参考にして決められるからです。不倫問題に強い弁護士であれば、過去の似た判例を把握しているため、より多くの慰謝料を請求できる可能性が高いです。ですので、少しでも多く慰謝料を請求したい方は、不倫問題に強い弁護士に依頼してみましょう。

弁護士事務所によっては、完全成功報酬制で依頼を受けてくれることがあります。完全成功報酬制であれば、着手金や相談料が発生しません。金銭的に余裕がなくても依頼できるので、依頼を検討している方は完全成功報酬制の弁護士事務所を探してみてください。

不倫慰謝料はいつまで請求できる?時効と注意点

(1)不倫慰謝料請求の消滅時効・除斥期間とは

不倫慰謝料は、いつまでも請求できるわけではありません。一定の期間が経過すると、慰謝料請求をできる権利は消滅するのが原則です。慰謝料を請求する権利が消滅するのは、次の2つの基準です。

①消滅時効

消滅時効は、不倫の事実と不倫相手を知った時から3年間です。
※「不倫相手を知った時」とは、実際に慰謝料請求できる程度に知ったことをいい、 LINEのIDや顔しかわからない場合には時効は開始しないと考えられます。

②除斥期間

除斥期間とは、不倫関係がスタートした時から20年間です。
※除斥期間は、どんな事情があっても成立します。

(2)消滅時効が迫っている場合の対処法

消滅時効が間近に迫っている場合は、すぐに時効をストップさせる手続きをとりましょう。

①催告

内容証明郵便などを送り慰謝料を請求することです。催告をすると、消滅時効が一旦ストップし、催告から6か月間は消滅時効が来るのを阻止する効果があります。

②裁判上の請求

支払督促の申立、調停や和解の申立、訴訟の提起などをすることです。不倫慰謝料を請求する裁判を起こした時点で消滅時効期間がゼロにリセットされ、そこから再度時効期間のカウントがスタートする効果があります。

(3)配偶者に対する慰謝料請求の時効の注意点

上記の消滅時効の問題は、不倫相手に対する慰謝料請求の時効についてです。不倫をした配偶者にも慰謝料を請求することはできますが、結婚している間は、配偶者に対する慰謝料請求の時効はスタートしません。ただし、離婚をすると、不倫慰謝料の時効もスタートするので、請求するときは気を付けてください。

なお、不倫の慰謝料は、不倫によってどのような精神的苦痛を被ったか、によって、時効のスタート開始時期が変わる可能性があります。具体的には、「不倫されたことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料」を請求する場合は、不倫の事実を知った時から時効がスタートしますが、「不倫が原因で夫婦関係が破綻したことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料」を請求する場合は、夫婦関係が破綻した時から時効が始まります。

さらに、「不倫で離婚したことで受けた精神的苦痛に対する慰謝料」を請求する場合は、離婚時から時効がスタートします。すでに消滅時効が来ている場合には、どのような精神的苦痛に基づく慰謝料請求をするかによって、時効の問題をクリアできることがあります。このような場合は、できるだけ早く専門家である弁護士に相談してください。

不倫慰謝料を請求する際は冷静に行動する

不倫慰謝料を請求することは、不倫をされた配偶者の権利です。しかし、いかに権利の行使であっても、感情的になってしまうと、逆に損害賠償請求されたり、場合によっては犯罪行為にあたる可能性もあります。特に次のような行為にご注意ください。

(1)脅迫罪

脅迫罪は、相手の生命・身体・自由・名誉・財産に対して、何らかの害悪を加えることを伝えることで成立する犯罪です。権利の行使であっても、相手が恐怖心を感じ、自由に意思決定できない程度のものだった場合は、脅迫にあたります。具体的には、そのつもりもないのに相手を怖がらせるために「裁判で不倫したことを世間に広めてやる」などというと、脅迫罪に問われる可能性があります。

(2)暴行罪

暴行は、相手に対して何らかの有形力を行使することで成立します。殴る、蹴るだけでなく、唾を吐きかける、水をかけるなどの行為も暴行にあたるので、特に話し合いの場でこのような行為に出ないように十分気を付けてください。

(3)名誉棄損、業務妨害

不倫相手が許せないからと言って、「この人は不倫をするような人間だ」などとネットに書き込んだり、勤務先に怪文書やFAXを送るような行為は、名誉棄損や業務妨害にあたる可能性があります。

不倫慰謝料請求で夫婦関係が破綻するケースを想定しておく

慰謝料請求をするときに気を付けるべきポイントは、慰謝料の金額と請求の態様です。

不倫慰謝料には明確な目安はなく、不倫の程度や夫婦への影響によって50万から300万円程度と言われています。相場をはるかに超える様な高額な慰謝料を請求すると、もはや払えないと開き直って別れるどころか縁が深まる恐れも否定できません。慰謝料請求をする際には、相場を踏まえた上で、あくまでも精神的苦痛に対する損害賠償であるというスタンスを崩さないようにしましょう。

不倫慰謝料請求後に離婚を考えている場合にやるべきこと

不倫慰謝料後に離婚を考えている場合は、つぎの3つを始めましょう。

(1)資産状況の把握

上記でお話した財産分与は、まさに離婚のときに行う手続きです。夫婦の資産状況があいまいなまま離婚し、本来取得できるはずの財産をもらい損ねることのないように、夫婦の資産状況の把握をできるだけ早く進めましょう。

(2)離婚後の生活の確保

離婚しても一人で暮らしていける家と収入があれば問題ありませんが、結婚中に専業主婦だった方等は、離婚後の住居と収入の確保を考えておくことが大切です。家を借りるにも、保証人がおらず、収入が不安定で少ない場合は、離婚後の生活をスタートさせるのは難しいのが現状です。親を頼れる場合は事前に相談をしたり、市役所の福祉課などに問い合わせて公的なサポート制度を確認しておきましょう。

(3)親権獲得の準備

夫婦に未成年の子がいる場合、親権者を決めることが離婚の条件です。親権を取りたい場合は、最低限住居と収入が確保されていることが必要です。親権者は、子の福祉の観点から、子どもができるだけこれまでと同じ生活ができること、安心して教育を受け進学できることなどが重視されるので、場合によっては不倫をした有責配偶者側に親権が認められることもあります。

子どもが落ち着いた環境で生活できることをしっかり伝えられるように、働く場所、住まい、家族や福祉のサポートなどを書面化してまとめておきましょう。

不倫慰謝料請求後も離婚しない場合にやるべきこと

不倫慰謝料を請求しても、離婚をしない場合、いざという時にはあなたの気持ちに沿って動けるように準備しておくということが大切です。今回の不倫では、配偶者を許したとしても、後で許せなくなってやはり離婚をしたくなることもあるかもしれません。その際には、スムーズに行動を起こせるように準備をしておいて損はありません。

具体的には、夫婦の資産状況を把握しておくことです。離婚をする際には、夫婦が結婚中に築いた財産を折半するのが原則です。これを「財産分与」と言います。

この財産分与は単純ではなく、夫婦名義のお金が全て夫名義の預金通帳に入っていたり、不動産や預貯金などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産があるケースもあります。特に住宅に関して、住宅ローンを組んで購入したマイホームに住んでいる場合は、住宅ローン残高と不動産価値を調べておき、離婚時にご自身がどうしたいかを検討しておきましょう。

マイホーム価値より住宅ローン残高が少ない場合(アンダーローン)は財産分与対象になりますが、逆にマイホーム価値より住宅ローン残高の方が高い場合(オーバーローン)は、経済価値ゼロとなり、借金の保証等の問題になってくるからです。もし今後気持ちが変わった場合に行動しやすいように、夫婦の財産を事前に把握しておきましょう。

不倫慰謝料を得た後に不倫を繰り返さないようにするべきこと

不倫慰謝料を請求し、支払いを得ても、復縁するのではないか、また不倫を繰り返すのではないかと心配な方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような不安を少しでも解消するためには、不倫慰謝料を含めて配偶者や不倫相手と合意し、示談書を作成する際に、示談書に不倫を繰り返さないように明記しておくことが効果的です。具体的には、次の5つの項目を盛り込みましょう。

(1)不貞行為をした事実

誰と誰が、いつ、どのような不倫をしたかを書きます。わかれば不貞行為のあったラブホテルの住所なども記載します。この場合、「不倫した」ではなく、必ず「不貞行為をした」と書いてください。

(2)示談金の支払

示談金とは、不倫問題を解決する一切のお金のことをいい、慰謝料は示談金の一部です。慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償ですが、もし不倫の事実が広まって転居を余儀なくされた場合は引っ越し費用なども、示談金の一部として慰謝料とは別に請求できることになります。金額だけでなく、支払期限や支払い方法も示談書に書いておきます。

(3)不貞行為をやめる約束

不倫した配偶者と復縁する以上、二度と不倫をしない約束を、示談書にも記載します。

(4)禁止行為

配偶者と不倫相手が、慰謝料の支払い後にひそかに関係を再開したりやり取りをしないよう、連絡や再会の禁止などの禁止行為を盛り込みます。不倫関係について口外しないことも書いておくとよいでしょう。

(5)ペナルティ

上記の内容に違反した場合のペナルティを示談書に書いておくことで、不倫を繰り返させない効果が高まります。復縁した配偶者が上記の合意に反した場合は離婚すること、配偶者に今回は慰謝料を請求しない場合は、その額も上乗せして請求することなどを厳しく決めておきます。具体的な金額は、金銭価値が変わる可能性も含めて、その時に協議するとしておいて構いません。

不倫相手と別れさせる方法

配偶者が不倫しても離婚をしたくないという場合に、配偶者と不倫相手を別れさせるのに、不倫慰謝料の請求が効果的な場合があります。

(1)配偶者に不倫慰謝料を請求すると効果的な理由

結婚している配偶者が不倫をする理由は様々です。本当に夫や妻が嫌になったというのではなく、お酒に酔って関係をもって以来不倫が続いているとか、相手のアプローチを断りきれなかった、水商売の女性にはまってしまったなど、一時的に気が移ったというようなケースも少なくありません。勝手な言い分のようですが、そのような不倫の場合には、不倫はしたけれど離婚までは考えていない、という人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。

そのような場合、不倫している夫や妻に対して不倫慰謝料を請求することで、夫婦間の不倫という問題を金銭的に解決し、夫婦関係を続けるという意思を示すことで、不倫関係を清算させられる可能性も十分にあるといえます。不倫をしている夫や妻の側からすれば、慰謝料を払うことで今回の不倫を水に流してもらえると期待して、不倫相手と別れる結論に至ることが期待できるのです。

(2)不倫相手に不倫慰謝料を請求すると効果的な理由

上記で、不倫をする配偶者の理由についてお話しましたが、不倫相手の理由も様々です。完全に相手にはまってしまい、夫婦関係を破たんさせようと思い詰めている場合もありますが、特に若年層の不倫相手の場合には、不倫を軽く考えている人もいます。そのような不倫相手に慰謝料を請求することで、不倫相手が現実に気づき、不倫関係を清算して自ら別れるケースは多くあります。

仮に不倫相手が慰謝料請求されたことを理由に配偶者と別れたとしても、不倫をしたという不法行為の事実は消えないので、時効消滅するまでは慰謝料を請求できるという法律上の権利は消えません。しかし、不倫相手の中には、多額の慰謝料を用意できない人もいます。そのような場合には、慰謝料の支払いを免除する代わりに、必ず別れて今後二度と連絡を取らないように約束させるといった内容で示談をすることも、不倫相手と別れさせて結婚生活を取り戻すのに有効な場合もあります。

(3)不倫相手と別れさせるのに効果的な慰謝料の請求方法

不倫相手と別れさせるために効果的な不倫慰謝料の請求方法としては、慰謝料を請求するときには、示談の提案と合わせて行うと効果的です。「示談」とは、前述のように、当事者同士の合意のことをいいます。

したがって、示談の内容は、当事者が自由に決めることができます。不倫相手と別れさせるために慰謝料請求をする場合には、「配偶者と二度と連絡を取らない」ことや、「もし再度不倫をすることがあったら倍額の慰謝料を請求する」などの文言を盛り込み、不倫相手と別れさせて復縁しないように釘を刺しておくこともできます。

相手が慰謝料請求に応じて、示談に合意し、不倫関係を解消して別れればベストな結果です。しかし、相手が仮に慰謝料の全額を相手が支払えない場合でも、示談案を提示することで自身の本気の度合いを示し、不倫相手と別れさせる交渉の手段とすることも可能です。

不倫慰謝料請求に応じないときの対処法

配偶者や不倫相手が慰謝料請求に応じないときの対処法を解説します。内容証明郵便を送付しても、無視したり示談請求に応じなかったりする方がいます。慰謝料請求が上手くいかない場合に備えて、対処法を確認しておきましょう。

(1)離婚する場合

配偶者と離婚する場合は離婚調停を行います。離婚調停とは、家庭裁判所で調停委員会を挟んで配偶者と行う話し合いのことです。相手が住んでいる地域の家庭裁判所に申し立てることで行えます。

配偶者との離婚調停では、慰謝料や財産分与などといった離婚に関わる一切のことを話し合います。前もってご自身が最終的にどうしたいかや、不倫の証拠について整理しておきましょう。話し合いに折り合いがつかないときは、裁判を起こすことになります。

不倫相手に慰謝料請求する場合も、同じ手順で慰謝料請求調停や裁判を行うことになります。調停を申し立てるために、特別な知識は必要ありません。まずは調停を申し立てて、配偶者や不倫相手と慰謝料について話し合いましょう。

(2)離婚しない場合

配偶者と離婚せず、不倫相手にだけ慰謝料を請求することもできます。慰謝料請求の手順は、配偶者と離婚する場合と変わりません。

ただし、配偶者が不倫相手から慰謝料を請求される可能性があります。不倫相手が求償権を持っているからです。求償権とは、共同不法行為者に対して、慰謝料の負担を求めることができる権利のことです。

ですので、不倫相手と示談書を交わすときは、示談の条件に配偶者に求償しないことを追加しておきましょう。示談後に求償される可能性もあるので、記載し忘れないようにしてください。

不倫慰謝料請求を弁護士に依頼する際にかかる費用

弁護士に不倫慰謝料請求を依頼すると、弁護士費用がかかります。費用は、弁護士や法律事務所によって多少異なりますが、大まかな目安としてご参考ください。

  • 相談料(依頼前の相談費用)…30分5000円、1時間1万円
  • 着手金(慰謝料請求依頼時にかかる費用)…10万円~30万円
  • 日当(弁護士の出張費用)…1回1万円~5万円
  • 報酬金(成功した場合にかかる費用)…経済的利益の10~20%
  • 実費(郵送料や印紙代)…数千円程度

特に、弁護士報酬については事務所によって差が出やすいところです。回収できた慰謝料の額によって、パーセンテージで報酬金を決める事務所が最近は多くなっています。最初の法律相談は無料で対応している事務所も多いので、ホームページをチェックしたり法律相談で弁護士費用についても、納得いくまで確認しておきましょう。

不倫慰謝料の請求判例

不倫慰謝料の請求で、裁判に至るケースも少なくありません。ここでは、過去の実際の不倫慰謝料の請求判例をご紹介します。

(1)夫が不倫した挙句暴力を振るったケース

夫が結婚後も不倫癖が治らず自宅に女性を連れ込むなどしたケースで、妻からの慰謝料3000万円の請求に対し、1000万円の慰謝料額が認められたケース(岡山地裁平成15年2月18日)

(2)夫が20年にわたって不倫していたケース

夫が同僚と20年にわたり不倫をしていたケースで、妻からの1200万円の慰謝料請求に対し、300万円の慰謝料額が認められたケース(大阪地裁平成11年3月31日)

(3)夫が不倫したが、夫婦は別居しなかったケース

夫が2年以上不倫していたが夫婦は別居しなかったケースで、妻からの1000万円の慰謝料請求に対し、100万円の慰謝料額が認められたケース(名古屋地裁平成3年8月9日)

これらの事例は、裁判になったケースの一例ですが、なかなか請求全額が認められるのは難しい反面、相当高額な慰謝料請求が認められうることもお分かりいただけるのではないでしょうか。

まとめ

不倫相手に慰謝料請求をする方法と、不倫関係を制裁して別れさせるのに慰謝料請求が効果的な理由、その効果を高めるための方法についてお話しさせてもらいました。

夫や妻の不倫で苦しんでいる方の中には、慰謝料請求が解決の道になりうることを初めて知ったという方もいるかもしれません。ご自身の負担をできるだけ少なく不倫相手と別れさせるためには、早い段階で弁護士に依頼し、代理人として慰謝料請求を任せることが有効なケースが多くあります。不倫で悩んでいる方は、まずは弁護士に相談して、慰謝料請求の方法を検討してみることをお勧めします。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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