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夫が不倫に隠し子がいた際の解決方法と慰謝料請求方法を解説

夫が不倫をしていただけでもショックですが、そのうえ隠し子の存在まで発覚したらどうすればいいのか気が動転してしまいそうですね。隠し子のことまで考えられないと匙を投げたいところですが、結婚生活を続ける場合も、離婚する場合も、夫の隠し子は妻に金銭的な影響を及ぼします。
ここでは、夫に隠し子がいた場合の対処法や慰謝料の請求について解説しましょう。

夫の不倫と隠し子の存在が発覚。最初に何からすべき?

まずは情報を集め、事実関係を把握するところから始めましょう。

  • 不倫相手の女性の素性
  • いつから不倫関係か
  • 子どもをいつ出産したのか、まだ妊娠中なのか
  • 夫は子どもを認知しているのか
  • 本当に夫の子なのか

すでに不倫相手が子どもを出産している場合、夫がその子を「認知」しているかどうかが重要になります。認知とは、正式な婚姻関係にない男女の間に生まれた子を、父親が自分の子であると認めることです。

認知をしている場合は、後述するように妻にも影響が及びます。認知に至った経緯を調べるなかで、不倫相手と話し合いが必要になることもあります。もしも、夫が不倫相手から求められるままに認知をしているなら、不倫相手にDNA鑑定を依頼するなどして、本当に夫との間の子どもなのかを確定させましょう。

隠し子の「認知」について知っておきたいこと

夫の隠し子の「認知」は、妻にも無関係ではありません。認知をしていれば、夫と隠し子の間には親子関係があるからです。親子関係があれば、扶養義務が発生し、養育費を支払う必要があります。支払う期間は20歳までが基本ですが、子どもが大学生である場合は大学卒業までの養育費を支払うケースが多いです。また、夫の死後に相続が発生した場合には、妻や夫婦の間の子と同様、隠し子も法定相続人となります。

夫が隠し子を認知しない場合、隠し子(未成年の場合は法定代理人である母親)は家庭裁判所に認知の調停を申し立てできます。調停で当事者同士が話し合い、認知が認められれば隠し子が生まれたときにさかのぼって親子関係が認められます。もしも、調停で解決しない場合は、裁判で認知すべきかどうかが決められます。調停や裁判では、血液検査やDNA鑑定などが判断の材料として用いられます。

子が認知されると「認知届」が提出され、夫と隠し子の間には親子関係が成立しますが、認知届を出したあとも、子どもは母親の戸籍に入っています。父親の戸籍に入るには入籍届を提出する必要があります。

夫の不倫・隠し子が発覚後、離婚する場合

夫が不倫をし、隠し子までいることがわかった場合、離婚という道を選ぶ人も少なくないでしょう。民法770条では離婚できる理由として「不貞行為」を挙げています。不倫は「不貞行為」にあたり、夫の不倫を理由に妻が離婚を要求することは認められています。

(1)隠し子がいるパターンは慰謝料アップの可能性

不倫は夫と不倫相手の2人が行っていたことなので、慰謝料は夫または不倫相手のいずれかに請求することができます(どちらにも請求はできません)。ただし、不倫相手の女性が夫のことを既婚者であると知らずに付き合っていた場合、請求はできません。

不倫相手が夫の子どもを産んでいる、または妊娠している場合、妻が受ける精神的な苦痛は出産を伴わない不倫よりも大きいものです。妻としては、不倫相手に慰謝料を請求したいところですが、経済的な事情や出産後の状況から考えて、不倫相手のみに慰謝料の請求をするのは難しいと思われます。ただし、夫への慰謝料請求は増額される可能性が高いでしょう。

(2)隠し子の養育費と慰謝料は別計算

夫と不倫相手の不倫に対して、妻は慰謝料を双方のどちらかに請求することができる一方、夫が隠し子を認知した場合は、不倫相手から夫に養育費が請求されます。「妻から不倫相手に慰謝料を請求しても、夫から隠し子への養育費で相殺されてしまうのでは?」と心配する人もいるかもしれません。しかし、慰謝料と養育費の請求は別々に計算されるので、養育費と慰謝料で相殺されることはありません。

もっとも「夫に隠し子がいたからたくさんの慰謝料を請求できる」といった単純な話ではなく、慰謝料の金額は「長期間別居状態にあった」「夫婦関係が悪化していた」といった夫婦の状況や、夫の不倫期間、不倫相手の状況などをもとに総合的に判断されます。

(3)離婚に伴う財産分与も

また、慰謝料とは別に、結婚生活中に2人で築いた財産を分ける「財産分与」も行います。名義がどちらであるかは関係なく、結婚してから購入した土地や家、車、預貯金、年金などが対象になります。妻が専業主婦であったかどうかにかかわらず、2人で1/2ずつ分けることが多いです。

(4)慰謝料・財産分与についての取り決めは離婚協議書で

離婚は、夫との話し合い=「協議」によって決めるのが基本ですが、うまく話がまとまらない場合は家庭裁判所で「調停」(裁判所に間に入ってもらって話し合う)をし、それでも合意が得られないときは「裁判」を起こし、裁判所に判断をしてもらい、離婚を成立させることになります。もっとも、調停まで進む例は約1割程度。裁判に持ち込まれるのは数パーセントしかなく、9割近くは話し合いで決着をつける「協議離婚」です。

協議離婚の際には、「離婚協議書」を作成し、慰謝料や財産分与についての取り決めを明記しておきます。さらに、離婚協議書を一定の書式に従って作成し、公証役場に持っていって手続きをすると、離婚協議書を公正証書にすることができます。「公正証書」とは、相手が金銭の支払いについて約束を守らない場合、裁判所に訴えて判決を待つことなく、「強制執行」手続き=強制的に金銭を払わせることができます。

慰謝料を分割にした場合、離婚後支払いが滞るケースは少なくありません。支払いトラブルを回避するうえで、公正証書は効力を発揮します。慰謝料・財産分与の金額の決定や離婚協議書の作成、離婚協議書を公正証書にする手順などは、ひとりで行うのは難しいのが現実です。弁護士などの専門家に依頼するとスムーズ、かつ確実に進めることができます。

不倫・隠し子が発覚しても結婚生活を続ける場合

夫が不倫をし、隠し子がいることがわかったとき、離婚に踏み切れる人ばかりではありません。「夫に対してまだ愛情があり、夫も反省しているからもう一度やり直そう」「自分の子どもが成人するまでは結婚生活を続けよう」などの理由で、結婚生活を続けるという選択肢もあります。

(1)隠し子の存在を受け入れながら結婚生活を続ける覚悟

隠し子を認知するかわりに不倫相手と別れるという条件で、夫との結婚生活を続ける場合、妻は不倫相手に慰謝料を請求することになります。先述したように、不倫をして子どもを出産している場合は慰謝料が高額になる傾向にあり、数百万円にのぼることも珍しくありません。

しかし一方で、夫は認知した子どもが自立するまで養育費を支払い続ける義務があります。また、認知した不倫相手との子にも、妻やその子どもと同様に夫の遺産を相続する権利があり、妻は生涯隠し子のことを意識しながら生活することを覚悟しなければなりません。

慰謝料の取り決めについては、相手との話し合い=「示談」が基本です。当事者たちが連絡を取り合い、直接会って慰謝料について話し合いができればよいですが、実際は会うのに抵抗がある人も少なくないでしょう。「内容証明郵便」で不倫相手に慰謝料請求書を送り、相手からの了承を得ることができれば示談書を作成し、慰謝料を支払ってもらいます。

「内容証明郵便」とは、差出人が郵便物の文書の謄本(書き写したもの)を作成し、郵便局に謄本を預けておくことで、“誰から誰に、どんな内容の郵便物が出されたか”を郵便局が証明してくれるものです。

不倫相手に慰謝料を請求する際、気をつけなければならないのが「求償権」です。本来、不倫は夫と不倫相手による不貞行為であり、慰謝料も2人で負担すべきものです。不倫相手が夫に「本来はあなたが負担すべき分を私が払ったのだから、差額を私に支払ってほしい」と請求する権利を「求償権」といいます。

妻が数百万円の慰謝料を不倫相手に請求した場合、後になって、不倫相手から夫に求償権が行使される可能性があります。示談書に「夫への求償権を放棄すること」を明記し、その代わりに慰謝料の減額に応じるようにするなど、不倫相手への慰謝料請求は慎重に進めましょう。

(2)誓約書で不倫再発防止を

妻は夫に対し、今後の不倫再発防止のために「誓約書」を夫と結ぶことをおすすめします。誓約書には、以下のような項目を記述します。

  1. 不倫をした事実とその相手
  2. 今後は不倫相手と関係を断つ
  3. 異性との密会禁止
  4. 再度、不倫をした場合は慰謝料〇〇円を払う
  5. 再度、不倫をした場合は離婚の申し出を受け入れる
  6. 再度、不倫をした場合、子どもの親権は〇〇にあり、養育費は××円とする
  7. その他、誓約事項

できれば、不倫相手にも誓約書を書かせたほうがよいでしょう。その場合は、1・2・4のような内容を入れます。

不倫相手の中絶費用はどうすればよい?

もしも、夫の不倫相手がまだ妊娠中であり、中絶することになった場合、中絶にかかわる費用は「不貞行為は2人の共同行為」という民法の定義のもと、折半とされることが多いようです。しかし、相手女性の肉体的・精神的な苦痛を考えると、夫が全額負担するのがよいでしょう。特に、夫が妻と結婚生活をやり直そうと考えているなら、なおさらです。

さらに、不倫相手が中絶した場合、慰謝料を請求されることがあります。妊娠そのものは夫と不倫相手との合意の上でのことであり、中絶についても2人の合意の下で行われる行為とみなされます。中絶したことそのものは、慰謝料を要求する正当な理由とは見なされません。

しかし、夫が不倫相手の女性との関係を清算し、相手女性の肉体的・精神的苦痛や経済的な負担を少なくしようという誠意の気持ちを示すために、慰謝料を支払う意思があれば相手の女性は慰謝料を受け取ることができます。妻から不倫相手への慰謝料請求との兼ね合いもあり、中絶した相手女性への慰謝料については、十分な話し合いが必要になります。

不倫相手の状況によって冷静な判断を

夫が不倫をした上に相手との間には隠し子までいる。その事実を知ったとき、妻はどうすればよいか。夫婦関係や子の有無、さらには相手女性の状況に応じて、選択肢は変わってきます。慰謝料や隠し子の認知、養育費など法的知識が必要となるシーンもたくさんあります。

どうすればよいか迷ったときには、弁護士に相談すると、妻が離婚した場合やしなかった場合など、さまざまなパターンを想定して慰謝料の金額を算出してくれたり、法的な手続きのフォローをしてくれたりします。また、専門知識が必要となる慰謝料請求書や示談書などの書類作成も安心して任せることができます。弁護士などの専門家のアドバイスを受けつつ、不倫相手の状況を把握して冷静な判断をしましょう。

まとめ

夫の不倫相手に隠し子がいた場合、離婚するか結婚生活を継続するかで流れが異なります。離婚する場合、妻は自立して生計を営むだけの覚悟が必要になります。しかし、結婚生活を継続する場合も、認知した隠し子をつねに意識する生活に耐えなければなりません。どちらを選ぶのかよく考えたうえで、弁護士などの専門家に相談し、フォローをしてもらいながら手続きを進めてください。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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