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シングルマザーの年金はいくら?母子家庭の年金額と対処方法を解説

母子家庭における平均年収は243万円といわれています。
参考:厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査
一方、国民年金第1号被保険者の1か月の国民年金保険料は16,410円(令和元年度)と、決して安い金額ではありません。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150313-02.html

限られた収入の中で、子供を育て、年金保険料も納付するというのは大変です。
「生活が辛いので年金の納付が免除にならないか」「将来が心配なのでもらえる年金額が知りたい」「母子家庭なので将来のために備えておきたい」とお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、シングルマザーの年金の納付や、将来受け取ることができる年金額の計算方法、老後に向けた対処方法についてお伝えしたいと思います。

シングルマザーは年金の納付が免除されるか?

(1)免除の条件

離婚をして夫の扶養から外れると、3号被保険者から1号被保険者になり、自分で年金保険料を払わなければいけません。
残念ながら、シングルマザー・母子家庭であることを理由にした年金保険料の免除制度はありません。しかし、収入が一定以下の場合には、免除制度を利用できます。

ただし、シングルマザーでも、勤務先の厚生年金等に加入している場合は、免除制度を利用できず、国民年金に加入している人が対象になるのでご注意ください。

国民年金の免除には、「法定免除」と「申請免除」があります。
法定免除は、「障害年金を受給している人」「生活保護の扶助を受けている人」です。
申請免除は、4段階に分かれていて、前年所得が以下の金額の範囲内であることが要件です。

障害年金、生活保護を受けていない場合は、以下の所得の計算式をご確認ください。

なお、所得とは、収入から経費を引いた金額のことをいいます。お給料をもらっている場合は給与所得控除後の金額になります。
児童扶養手当分の給付額は、所得に含まれません。
「扶養親族等控除額」「社会保険料控除額等」は、源泉徴収票や確定申告の控で確認しましょう。

  • 全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円
  • 4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
  • 4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

(2)免除された場合の年金支給額への影響

免除が認められると、その期間は、年金の受給資格期間にカウントされます。ただし、将来うけとる年金額を計算するときは、免除された期間は保険料を払った時に比べて1/2(平成21年3月までの免除期間は1/3)になります。

全額を払った場合に比べると、受け取る年金の金額は以下のように影響します。

  • 全額免除の場合:1/2(平成21年3月以前の免除期間については1/3)
  • 4分の3免除の場合:5/8(平成21年3月以前の免除期間については1/2)
  • 半額免除の場合:3/4((平成21年3月以前の免除期間については2/3)
  • 4分の1免除 の場合:7/8(平成21年3月以前の免除期間については5/6)

具体的には、5年間、全額免除されたケースでは、この5年は納めていた期間としてカウントされますが、将来的に受け取る年金額は1/2として計算されることになります。

(3)納付猶予制度

もう一つ、年齢の制限がありますが、申請によって年金保険料の納付の支払いを待ってもらえる「納付猶予制度」があります。
これは、20歳から50歳未満で、本人・配偶者の前年所得が一定額以下(1月から6月までに申請する場合は前々年の所得額)の場合に申請できるものです。
基準となる所得額は、以下の計算式で算出します。

  • (扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

支払を待ってもらっている期間は、年金の受給資格期間にはカウントされますが、受給額にはカウントされません。

免除も、猶予も、この間の年金保険料はあとから払うこともできるので、生活が落ち着いたら納付することを検討するとよいでしょう。

夫と死別したシングルマザーがもらえる年金

夫が亡くなってシングルマザーになった場合、生前夫が公的年金に加入していた場合、妻や子供は国から遺族年金が支給されます。
支給される金額は、加入していた公的年金の種類や、子供の有無・年齢等によって変わります。
種類も複数あるので、以下をご参考ください。

(1)遺族基礎年金

18歳未満の子供と同居している世帯が、子供が18歳になるまで受給できる年金です。
ただし、年間850万円以上の収入または年間655万5000円以上の所得がないことが条件です。

(2)遺族厚生年金

夫が生前厚生年金に加入していた場合、もらえる予定だった厚生年金の約3/4の金額分をもらえる年金です。
受給できる期間は、残された配偶者である妻が亡くなるまでです。ただし、妻が夫の死亡時に30歳未満だった場合は、遺族年金の資格を失ってから5年間でストップすることになります。

(3)寡婦年金

死別した夫と、10年以上継続して結婚していた(婚姻関係にあった)65歳未満の妻が受給できる年金で、妻が60歳から65歳になるまで受給できます。
25年以上年金保険料を納めていた場合、65歳で受け取る予定だった老齢基礎年金の約3/4の金額を受け取ることができます。

(4)死亡一時金

亡くなった人と生計を同じくしていた人が、まとめて一度納付できるものになります。
妻に限らず、親も該当することがあります。遺族基礎年金を受給できる人がおらず、亡くなった人が一定期間以上国民年金を納めていた場合に、その納付期間に応じて12万円から32万円の一時金を受け取ることができるものです。

離婚の際の年金分割

年金分割制度とは、厚生年金・共済年金の保険料納付実績を、夫婦でわけあう制度をいいます。

例えば、離婚した夫が会社員だった場合に、結婚期間中に夫が納付した年金保険料の一定割合を、妻が納付したものとして記録を付け替えることによって、妻が年金を受給するときにその割合を考慮して受給できることになります。
ただし、国民年金や、厚生年金基金・国民年金基金等は対象にならないのでご注意ください。

年金分割には、「合意分割」と「3号分割」という2種類がありますが、3号分割の方はほとんど利用されないのが実情です。

(1)合意分割

合意分割とは、年金分割をする割合を、夫婦の話合いで決めるものです。
上限は50%までとされているので、20%でも30%でもいいように思われますが、実務ではほぼ50%で合意されます。

例外的に、長期間別居していたとか、離婚原因が妻側にある場合などは少なり割合で認められるケースも否定できませんが、稀といえるでしょう。

なお、分割できるのは、結婚期間中の夫婦の標準報酬総額の合計額で、夫だけのものではありません。
夫婦双方の対象期間標準報酬総額の合計額に対して、妻の分割後の標準報酬総額の割合が50%になるように分割するのが基本です。

具体的にみると、結婚期間中の夫婦の標準報酬総額が、分割前に夫が6000万円、妻が4000万円だった場合、多くの場合分割の割合が50%になるので、分割によって夫から妻に割り当てるのは、1億円に対する妻の標準報酬月額5000万に満たない1000万円になります。

年金分割は、必ず離婚と同時にしなければいけないわけではなく、離婚後2年以内に請求すれば間に合います。

(2)3号分割

3合分割とは、第2号被保険者(サラリーマンや公務員など)の厚生年金保険料や共済年金保険料の納付済み記録の1/2について、第3号被保険者(第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の専業主婦などの配偶者で、年収が130万円未満の人)だった期間について第3号被保険者に分割する制度です。

3号分割の場合は、第2号被保険者の同意は不要で、請求すると自動的に1/2が分割されます。
ただし、平成20年4月以降の第3号被保険者期間のみが対象になるので、全婚姻期間が分割の対象になる合意分割と比べてあまり利用されていません。

シングルマザーが将来もらえる年金額の計算方法

皆さんの中には、ご自身が受給できる年金額がいくらになるか計算したことがある人はいらっしゃいますか。
ねんきん定期便というハガキが来るけれど、中をよく見たことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは年金の額を計算する概要をご説明したいと思います。

(1)ねんきん定期便の見方

ねんきん定期便は、毎年誕生月に送られてくるもので、50歳未満か50歳以上かで2つのタイプに分かれます

①50歳未満の場合のねんきん定期便

50歳未満の人に届くねんきん定期便では、現時点までに支払った保険料に基づいた年金額が記載されています。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/20190405.files/31-01.pdf
上から、各年金実施機関に問い合わせるときの照会番号、これまでの加入期間の欄に、国民年金・厚生年金の加入期間が記載され、それぞれの内訳に続いて最後に合計が記載されています。
下の「これまでの加入実績に応じた年金が買うと【参考】これまでの保険料納付額(類型学)」の欄に記載されているのが、現時点までに支払った保険料に基づいた年金額です。

50歳未満のねんきん定期便には、実際に本人が納付した年金しか載っていないので、上記でご説明した結婚期間中の年金分割分は掲載されません。
年金分割の手続きをしても、ねんきん定期便ではまだいくらもらえるか具体的な金額は分からない内容になっています。

②50歳以上の場合のねんきん定期便

50歳以上の人に届くねんきん定期便は、このまま年金加入を続け、60歳(60歳以上の人は現時点)でやめた場合が想定されているので、実際に将来受給できる金額に近い数字を見ることができます。
参考:https://www.nenkin.go.jp/service/nenkinkiroku/torikumi/teikibin/20190405.files/31-02.pdf

50歳未満の人に届くねんきん定期便との違いは、下の方に記載された「老齢年金の種類と見込み額(年額)」です。ここには、左側に65歳より前から特別支給の老齢厚生年金がもらえる人についての支給開始年齢と予想額が、右側に65歳からの予想年金額が記載されていま記載されています。

(2)年金額の計算方法

年金額は、これまで年金保険料を納付していた期間や金額によって決まるのが基本です。よく「2階建て構造」といわれるように、「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」がセットで支給されます。

老齢基礎年金は、20歳から60歳まで年金保険料を払うことを基本として、この40年間を納付し続けると満額の年金を受給できます。
令和元年の満額は、年額 780,100円なので、支払った期間が欠ける場合は以下で計算します。

  • 780,100円×支払った月数÷40年

老齢厚生年金は、給与や働いていた時期や期間により複雑に計算が変わるので、おおむね月収20万円の人が40年間保険料を払っていた場合の年額が約53万円になると考えていただければいいでしょう。

将来の年金額が不安なシングルマザーが取りうる方法

上記のように、ねんきん定期便をみたり、ご自身の年金額を計算してみたりすると、将来受け取ることができる年金額が予想より少なく、心配になる方もいるかもしれません。
そのような方は、ご自身で不足する年金をカバーする対処方法を取ることをおすすめします。

(1)厚生年金への加入

シングルマザーで子育てが大変な場合、外で働くことが難しい方も多いかと思います。
もし、外で働ける、子育てに余裕ができたという場合は、厚生年金に加入できる勤め先を選ぶことで、将来受給する年金をふやすことを検討してはいかがでしょうか。

例えば、給与月額20万円の会社につとめ20年間厚生年金に加入した場合、これから増やせる厚生年金は概ね以下のように計算できます。

  • 20万円×12か月×0.55%×20年=264000円

つまり、年間で約26万円老齢厚生年金を増やすことができます。
また、厚生年金に加入すると、健康保険に傷病手当金が付加されるので、もし病気になった場合でも1年半は傷病手当がつくので安心につながります。

(2)個人型確定拠出年金(iDeCo)の利用

iDeCo(イデコ)は、税金の優遇措置を受けつつ老後資金を増やすために、国が作ったいわゆる自分年金の制度です。
iDeCoで積み立てた資産は、一時金として60歳以降に一括して受け取っても、年金として5年以上20年以下の有期年金として分割して受け取っても、一部を一時金、残りを分割で受け取っても構いません。

iDeCoの掛け金は、被保険者の種類により変わっていて、シングルマザーに多い第1号被保険者の場合は月額68,000円まで掛け金を払うことができます。

そのうち、月3万円をかけたとすると、

  • 元本:3万円×12か月×20年=720万円となります。

この元本に、年3%で運用して20年積み立てた場合の「終価係数(1.806)」や、年3%で運用して60歳から80歳まで受け取る場合の「資本回収係数(0.06722)」などを使って計算すると、

  • 総額:36万×1.806(終価係数)=1300万4001円

1年間の受取額:1300万4001円×0.06722(資本回収係数)=874,128円

一見たくさんのお金を受け取ることができるように見えますが、あくまで運用商品なのでリスクとリターンが異なること、中途解約が原則できず、口座開設や維持に手数料がかかることなどのデメリットもあります。
掛け金を払う余裕と、60歳までは原則引き出せないという制約を考えて、利用を検討するとよいでしょう。

年金が未納な場合のリスクとは

年金保険料の納付が難しい場合には、上記でご説明したような免除や納付猶予の制度がありますが、実際は約40%の方(第1号被保険者)がいると言われています。

よく、「日本の年金制度はそのうち破綻するから払わなくていい」、「払い損になる」などの意見もあります。また、年金未納は2年で時効消滅するという話を聞いて、2年たてば大丈夫と考えている方もいるようです。
しかし、2年の時効経過前に督促状が届き、督促状が届くと時効は中断され、延滞金も発生します。また、未納が続くと、財産を差し押さえられる可能性もあります。

シングルマザーで日々の生活が大変なことも多いと思いますが、年金の支払いが難しい場合は放置せずに、まずは弁護士に対処方法をご相談ください。

まとめ

今回は、シングルマザーの年金について、納付が難しい場合の対処方法や、年金額の計算方法をご紹介しました。
離婚後の生活や子育てが中心になり、年金は後回しになりがちですが、後々のリスクを避けるためにも、納付猶予や免除など、できる対応を取っておきたいものです。

そのほかにも、シングルマザーが受けることができる優遇措置はありますので、離婚後の生活や年金でお悩みの方は、まずはお気軽に弁護士にご相談ください。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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