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浮気の誓約書を書きたくない!拒否した場合のリスクと対処法

多くの場合、浮気がバレてしまったあとに待っているのは配偶者や浮気相手の配偶者との話し合いです。
話し合いの場では、示談の条件を書面にまとめた示談書または誓約書にサインするよう求められます。

浮気をしてしまったけれど、不利になることを危惧して誓約書にサインしたくない方もいるでしょう。

では、相手方から提示された誓約書にサインしたくないときは、拒否することはできるのでしょうか。
また、サインを拒否した場合、どのようなことが起こるのでしょうか。

この記事では誓約書へのサインを拒否した際のリスクと、サインしたくないケースでの対処法を考えていきます。

浮気の誓約書を書かないとどうなる?

慰謝料を払いたくないなどの理由から、浮気をしても誓約書を書きたくないという方は一定数存在します。

では、浮気が発覚した後も誓約書を書かない場合はどうなるのでしょうか。
誓約書の記入を拒否したときに考えられるリスクを解説します。

(1)訴訟に発展する場合がある

第一に、浮気の誓約書を書かない場合、不倫問題が裁判に発展することがあります。
前提として、誓約書の記入に応じないということは、協議(話し合い)による示談交渉がまとまらないことを意味するからです。

記入を拒否することで相手方が諦めてくれれば、と思う方もいるかもしれませんが、浮気被害者の怒りが強いと訴訟に発展する可能性が高いといえます。

一度訴訟になると「①訴えが取り下げられる」「②裁判の判決が出る」「③和解がまとまる」他に事態を収束できる方法はありません。

「無視すればよいのでは」と思う向きもあるかもしれませんが、訴状の到着後も無視してほとぼりが冷めるのを待っていると、被告不在のまま欠席裁判となります。
被告不在で裁判が終了すると、基本的には原告の訴えが無条件で認められるため、一方的に敗訴となります

また、浮気相手の配偶者に訴訟を起こされると、自宅や職場に訴訟関連の書類が送達されることとなります。
職場や配偶者に不倫を隠していた場合、これが原因で事実が露見することもあるでしょう。

誓約書の記載を拒否していると「訴訟に持ち込まれる可能性がある」「周囲に不倫がバレる」という二つのリスクがあることを覚えておいてください。

(2)慰謝料を増額される可能性がある

浮気の事実が明らかで、客観的な証拠が揃っているにもかかわらず、浮気を認めず誓約書にサインしない場合は慰謝料の増額要件になります。
当事者の不誠実な態度が、精神的苦痛を増加させる要因になると考えられるためです。

また、誓約書にサインしないことが不倫被害者の処罰感情を刺激することも考えられます。
将来的に慰謝料の減額や分割払いを予定しているときは同意を得にくくなる可能性があるでしょう。

素直に誓約書にサインしておいた方が最終的なダメージは少なく済むケースも多いため、注意してください。

(3)配偶者との再構築が難しくなる

浮気問題を解決したあと、配偶者と夫婦関係の再構築を目指す場合、誓約書へのサインを一方的に拒否するのは得策とはいえません。

浮気が明らかなのに示談のテーブルに着かない姿は「償う気がなく逃げ回っている」と取られかねないからです。
自分(配偶者)に対する不誠実な態度だと判断され、離婚の引き金になることも珍しくありません。

浮気相手の配偶者や、配偶者からの要求が過大だと感じるのであれば交渉もできますので、まずは応じる姿勢を見せることが大切です。
話し合いにすら出席せず逃げ回っているような状態は、配偶者からの心証に多大な悪影響を及ぶすため、今後の夫婦関係に致命的な亀裂を入れる可能性が高くなります。

浮気の誓約書の内容は?

浮気の誓約書を相手方が用意する場合、どのような内容が記載されるのでしょうか。
不倫の示談を行う際に、一般的に盛り込まれる誓約書の条項を見てみましょう。

(1)慰謝料の支払い

不倫問題の示談では、多くの場合不倫被害者の精神的苦痛に対して金銭で賠償を行ないます。
慰謝料の支払いについては、おおむね以下がおもな内容となります。

  • 慰謝料の金額
  • 支払い期日
  • 支払い方法(一括か分割かなど)
  • 慰謝料の振込先

なお、慰謝料の金額はおおむね100万円から300万円程度が一般的です。

また、このほかにも分割払いで支払いを行うときは支払いが遅れた際のペナルティが定められることもあります。
ペナルティとしては、年利5%までの遅延損害金を設けることが多いです。

夫婦間で誓約書を交わす場合などによく見られるのですが、慰謝料の金額など細かい内容を確認せずにサインしてしまう人もいます。

しかし、法的に有効な誓約書に署名すると、その内容は実際に効力を持つため注意が必要です。よく読み、納得できた場合は合意したルールに従って賠償を行ないましょう。

(2)謝罪の条項

浮気の誓約書には、ほとんどのケースで不貞行為の事実と慰謝料の支払い義務を認識し謝罪する条項が設けられています。

謝罪条項自体はあくまで便宜的に記載されていることが多いのですが「不倫を認める」旨が併記されているため、サインすることで不倫の事実を認めることになります。
不倫自体が誤解であるなど、身に覚えがなければサインしてはいけません。

(3)接近禁止の条項

不倫の当事者が水面下でよりを戻すことを防ぐため、接近禁止の条項が盛り込まれるケースも見られます。
浮気の再犯率は決して低くなく、また夫婦の再出発を目指す場合、再度の浮気は足かせになるからです。

接近禁止の条項は、多くの場合「ふたたび連絡を取らない」「正当な目的なく会わない」など、具体的な内容で記載されます。
違反した際の罰金についても併記されるため、条件や金額を確認しておきましょう。

なお、配偶者との離婚を前提としているのであれば、浮気相手との今後の付き合いをどうするかは個人の自由です。
そのため、このケースでは接近禁止の条項やペナルティが設けられていても無効であると考えられます。
離婚するのであれば意味のない条項ですのでその点は覚えておいてください。

公序良俗に反する内容の誓約書は無効

不倫の被害者の中には、あまりの怒りの大きさから無理のある示談条件を設けてしまう方もいます。

しかし、誓約書の内容には何を書いても良いわけではなく、法に照らして有効な内容でなければなりません。
とくに、公序良俗(公の秩序又は善良の風俗)に反する常識外れの条項は同意があっても無効です。
以下で具体例を確認してみましょう。

(1)高額すぎる慰謝料の請求

慰謝料の金額が高すぎる場合、公序良俗に違反しており無効になる可能性があります。
不倫の慰謝料の金額がいくらになるかはケースバイケースですが、一般的には100万円から300万円程度に収まるのが一般的です。

例えば、出会い系アプリで行きずりの相手と一度関係を持ったので5,000万円払う、といったケースは、相場に対して慰謝料の金額が明らかに高額すぎます。
たとえ条件に同意していても無効とされる可能性が高いでしょう。

示談内容が有効か無効かは、最終的には裁判の結果裁判所が判断しますが、不倫の態様に対して負う責任が過大であると評価されれば、定めた金額は無効もしくは減額という結果になるでしょう。

(2)法に抵触する内容

誓約書の条項自体が法に反している場合も、公序良俗に違反しているとして無効になる可能性が高くなります。

例えば、再犯したときは暴行によって制裁を加える、その際は刑事・民事ともに訴えを起こさないなどの条項は刑法に違反しており有効とは認められません。
実行したときは刑事事件に発展する可能性が高いですし、民事でも損害賠償請求の対象となります。

傷害や恐喝などを始めとして、刑事事件に発展するような内容は基本的に無効と考えてよいでしょう。

(3)転職や退職の強要

不倫をした二人が同じ職場に勤めているケースでは、不倫相手の配偶者などから退職するよう求められることがあります。
ただ、職場での労働は雇用先との間の労働契約によって行われるものであり、不倫問題とは直接関係がありません。

退職や転勤も、労働者と雇用先の協議のうえ決定されるものです。そのため、示談条件として誓約書に盛り込み、退職や異動を強制することは難しいでしょう。
仮に退職を要求されたとしても、あくまでお願いベースの求めであり、応じる義務はありません。

一点注意が必要なのですが、不倫の悪影響が職場の労働関係にまで波及していると話が違ってきます。

例えば、職場の風紀を不倫により著しく乱した場合は退職など懲戒処分の対象となることもあります。

また、学校の教師と父兄の関係だった場合、被害者が教育委員会へ告発し、懲戒免職や転勤の対象となる可能性はあるでしょう。

誓約書を書くよう求める理由は?

そもそも、不倫の被害者が誓約書を書くよう求めるのはなぜなのでしょうか?誓約書の効果と目的を考えていきます。

(1)示談内容を書面で残すため

不倫被害者が誓約書にサインするよう求める主要な理由の一つが、示談の条件と、条件に同意したことを書面に残すことです。
契約や示談といった法的手続きは、口頭での同意でも一応成立はします。

ただ、この場合当事者どうしで「言った」「言わない」と主張が食い違うことが多く、同意の存在を客観的に証明できません。

書面に残しておけば、加害者が同意を覆すことを阻止できます。「逃げ」を防止し、円滑に賠償を行なわせるために、紙の誓約書への記載は有効なのです。

(2)再犯を防止するため

誓約書にサインさせることは、浮気の再犯を防止するのにも効果的です。まず、浮気の誓約書にはしばしばペナルティ付きで接近禁止の条項が盛り込まれるため、経済的ダメージの面から再犯を防止させられます。

また、浮気をした当人にとって、配偶者や浮気相手の配偶者の前で誓約書に署名するのは少なからず心理的圧力を感じるものです。
このような意味合いからも、誓約書へのサインは再犯防止効果を期待して求められることがあります。

(3)反省させるため

不倫の当事者に対して反省を促すことも、誓約書にサインさせる理由の一つです。
とくに配偶者に対しては、誓約書に記入させることで自分のおかした過ちの大きさを知り、心を入れ替えて欲しいという気持ちから誓約書の記入を求めることがあります。

慰謝料を請求する目的で書かせる、という方ももちろん多いのですが、誓約書へのサインは単なる金銭賠償の要求にはとどまらない目的があるのです。

誓約書を書きたくない場合はどうする?

誓約書を書きたくない場合、サインを拒否することはできるのでしょうか。
また、書きたくない場合はどのように対処すればよいのでしょうか。考えられる対処法を見てみましょう。

(1)サインを拒否しても根本的解決にはならない

第一に、サインを拒否しても不倫問題の根本的な解決にはならないということを覚えておく必要があります。というのも、誓約書にサインしないからといって浮気の被害者が慰謝料の請求やその他の償いを諦めることは少ないからです。

ひとたび拒否しても本人や代理人の弁護士からの働きかけが引き続きあるでしょうし、前述のように訴訟に発展することも少なくありません。
素直に応じておいた方が後の影響は小さく済むケースも多いのです。

サインを拒否したいという心理には、恐らく何らかの理由があるのではないでしょうか。
まずは不倫被害者からの要求を拒否するのではなく、交渉のテーブルに着く姿勢を見せた方が、事情を話したうえでの条件交渉もしやすくなるでしょう。

(2)誓約書の内容はよく確認する

夫婦間での誓約書などは、内容をよく見ずにサインしてしまう人も多いです。
しかし、法的に有効な誓約書にサインしてしまうと、基本的に記載されているとおりの効果が発生します。
そのため、誓約書の内容はしっかりと読んで確認することが大切です。

なかには、口頭で説明のない条項やペナルティが盛り込まれているケースもあります。
まずは最初から最後までじっくり読み、不明点がないか確認してからサインするようにしましょう。

また、弁護士など法律の専門家を介さずに作成された書面だと、前述の公序良俗に反する内容が盛り込まれている可能性があります。
負い目がある分内容の確認などはしづらいかもしれませんが、不明点やおかしいと感じる点はしっかりとその意味を調べておきましょう。

(3)誓約書の内容は交渉できる

一方的にサインを拒否して逃げ回るのは事態を深刻化させる可能性があるため得策とはいえません。
しかし、誓約書に記載されている要求が過大な場合や、慰謝料の条件を変更して欲しい場合は交渉することもできます。

不倫問題の示談でよく見られるのは、慰謝料の金額や支払いに関する交渉です。
経済状況がかんばしくなく、支払いが難しい、一括では難しいため分割払いにして欲しいと主張するケースが代表的です。

また、過去の判例から判断して相場より高額すぎるときも減額交渉の余地があります。

ただ、示談条件についての交渉は受け入れられにくいため、不倫被害者への粘り強い交渉が必要です。
交渉が決裂すると裁判に発展する可能性もあるため、自分ひとりで交渉に応じるのはリスクが高いといえます。

示談内容に関する交渉は一人では思うように進まないため、弁護士を挟んで交渉をおこなうことが望ましいでしょう。

まとめ

「慰謝料が支払えない」「不利になりたくない」このような事情から、誓約書・示談書へのサインを拒否する方もいます。
ただ、基本的に誓約書へのサインを拒否して交渉から逃げることはおすすめできません。というのも、書面へのサインを拒否したからといって不倫被害者が慰謝料の請求を諦めることは少ないからです。

配偶者や会社へ不倫がバレる、訴訟に発展するなど事態が悪化する可能性も大いにあるため、まずは交渉のテーブルにつき、事態の改善に努めることが大切です。

浮気の誓約書を作成するのは、示談条件への合意を客観的に分かる形で残すことが主な目的となります。
記載内容が法的に有効であれば効力が発生するため、サインの前にしっかりと内容を確認しましょう。

提示された示談条件があきらかに課題要求である、事情があり応じることが難しいといった場合は、弁護士を通じて相手方に内容の変更を申し入れるようにしましょう。
交渉自体は自分でも可能ですが、不倫の当事者からの要望は受け入れられにくく、さらに浮気の負い目もあることから難航が予想されます。

浮気や不倫問題に強い弁護士事務所を探し、代わりに交渉してもらうことがおすすめです。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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