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夫や妻の浮気相手と面会するときに注意すべきポイント

「夫や妻に浮気をされたので、浮気相手に慰謝料を請求したい」というご相談は法律事務所に数多く寄せられます。

浮気は法律上「不貞行為」といい、民法が規定する不法行為に該当します。
したがって、浮気をされた当事者は浮気相手や浮気をした配偶者に対して損害賠償を行うことができます。

損害賠償の額はケースバイケースですが、概ね50万円から300万円程度の慰謝料が認められるのが一般的です。

信頼していた夫や妻に裏切られたときの当事者の精神的なショックは計り知れません。
このようなとき、相手に対して慰謝料という形で精神的な損害を補填してもらうことは法律で認められた当然の権利です。

浮気相手に慰謝料を請求するためには何らかの方法で相手と接触を取らなければなりません。
浮気相手との接触は、電話、メール、文章のやりとりのほか、直接会って行われることもあります。

当事者同士の面会はどうしても感情的になりがちです。面会のときに失敗すると慰謝料請求の手続において不利になる可能性もあるため、事前に十分に準備をしたうえで冷静に対処することが重要です。

この記事では、浮気相手と面会するときに注意すべきポイントについて解説いたします。

浮気相手と面会をする理由

「配偶者(夫や妻)の浮気相手と面会することになったが、どうすればよいか」というお悩みを抱えている方は少なくないようです。
まず、そもそも何のために浮気相手と面会するのか考えてみましょう。
大きく分けると次の2つがあります。

一つは、面会によって浮気の事実を認めさせたり、何らかの約束を取り付けたりしたことを目的とするパターンです。

具体的には、「肉体関係があったことを認めさせる」「不貞行為による精神的損害に対する賠償として慰謝料を支払うことを約束させる」「二度と会ったり連絡をとったりしないことを約束させる」などが考えられます。
浮気相手に認めされたり合意した内容を念書や誓約書といった形で書面に残したりすることもあります。

もう一つは、単に「浮気相手にひとこと言ってやりたい」「浮気の詳細について当事者から直接聞きたい」といったパターンです。
このような場合であっても、浮気相手から何らかの同意を取り付けたときにはそれが法律上の意味を持つことがありますし、面会時の対応によっては浮気相手の態度が硬化してしまい、その後の慰謝料請求の手続に影響を及ぼすこともあります。

このように、浮気相手との面会は実は交渉としての意味合いを持っています。
うまく対応すればその後の慰謝料請求などの手続で有利に進む可能性がありますが、逆に対応を誤れば自分の首を絞めることにもなりかねません。

浮気相手を前にして、つい感情的になってしまうのはよくわかりますが、今後の対応を見据えて冷静に対応するようにしましょう。

浮気相手との面会で気を付けるべきポイント

浮気相手と面会するときにはいくつか注意すべきポイントがあります。

一つは、面会をするタイミングです。
浮気相手との面会は浮気の証拠を十分に集め、浮気の事実が間違いないと確信を持ってから行うべきです。
十分な証拠がないにもかかわらず「浮気をしたに違いない」と思い込んで浮気相手に面会を申し入れてしまうと、浮気相手や配偶者に警戒されて証拠を消されてしまうおそれがあります。

浮気の証拠となるのは、ラブホテルや相手のマンションに出入りしている写真や動画、肉体関係を窺わせるメールやLINEのやりとり、ラブホテルの領収書などです。

相手に気づかれる前にこれらの証拠を十分に集めた上で浮気相手に面会を申し入れ、面会の場で浮気相手や配偶者に証拠を突きつけるという流れが理想的です。

二つ目は、感情的になりすぎないことです。
夫や妻の浮気相手を目の前にしたときに感情が高ぶったり、怒りをぶつけたくなったりするお気持ちはとてもよくわかります。

しかし、怒りに任せて浮気相手を脅迫するような言葉を投げかけたり暴力的な行為をしてしまったりすると、逆に相手から訴えられて刑事責任を問われるおそれがあります。

また、感情的な言動によって相手の気持ちを刺激してしまい、その後の交渉に悪影響を及ぼすこともあり得ます。

たしかに浮気は悪いことですが、浮気相手にも言い分があるかもしれません。今後のことを考えれば不用意に相手の感情を刺激することは危険です。

もちろん、浮気によって自分が傷ついたこと、大切な家庭が損なわれたことを伝え、精神的な損害を慰謝料という形で償ってもらいたいという意思を告げることは問題ありません。
しかし、感情に任せた言動は危険です。

最後の一つは、不用意な約束をしないことです。
たとえば、「不倫慰謝料の相場を知らずに浮気相手と『慰謝料として10万円を支払えばこの件は水に流す』という約束をしてしまい、後になって相場よりずっと安い金額であることに気づいた」というケースがあります。

「約束と言ってもただの口約束ではないか」と思われるかもしれません。
しかし、たとえ口約束であっても契約は成立しますし、それが録音されていれば「口頭で約束があった」という事実を推認させる証拠として裁判で採用されることもあるのです。

繰り返しになりますが、浮気相手との面会は交渉の場であると考え、不用意な約束は避けるようにしましょう。

浮気相手との面会は録音すべき?

浮気相手と面会するとき、会話をスマートフォンやICレコーダーで録音すべきかというご質問をいただくことがあります。

結論を先に述べると、録音はしておいた方がよいと思われます。

口頭のやりとりであっても浮気の事実を認めたり慰謝料を支払うことを約束したりした場合にはそれによって法律上の効果が生じることはあります。

しかし、文書と異なり口頭での約束は後になって「言った言わない」の争いになる可能性が非常に高いので、録音という「動かぬ証拠」を確保するべきです。

では、浮気相手との会話をスマートフォンやICレコーダーを使って無断で録音することは許されるのでしょうか。
これはいわば「隠し録り」ですので違法なのではないかと心配される方もいらっしゃるかもしれません。

相手との会話を無断で録音することは刑法上の罪には当たりません。
問題は証拠として使えるかどうかです。

過去の裁判例には、著しく反社会的な手段を用いて人の精神的肉体的自由を拘束する等の人格権侵害を伴う方法によって採集された証拠には違法であり、証拠として使えないと判断したものがあります(昭和52年7月15日東京高等裁判所・判例時報867号60頁)。

しかし、会話を黙って録音したというだけであれば「著しく反社会的な手段」を用いたとは到底言えないでしょう。

したがって、相手に無断で録音された会話は裁判の証拠として使用することができると考えられます。

もっとも当然ですが浮気相手の方がこっそり録音している場合もあります。
うっかり浮気相手との間で自分に不利な内容の約束をしてしまい、後になって慌てて「そんなことは言っていない」と言ったが実は録音されていた、というケースもありえますので注意が必要です。

あえて浮気相手に「今日の会話は録音します」と告げる方法もあります。
これは法的な手段も辞さないという「本気度」を浮気相手に伝え、牽制する効果があります。

ただし、自分の会話も全て記録されているという意味では「諸刃の剣」ですので注意しましょう。

浮気相手との面会で書かせるべき誓約書とは

面会の場で浮気相手から誓約書(「念書」ということもあります)を書かせる場合もあります。「不貞行為があったことを認める」「慰謝料を支払うことを認める」といった内容の書面を残すことができればその後の交渉を有利に進めることができますが、やはり注意しなければならない点もあります。

一つは、後になって浮気相手が言い訳できないような内容にすることです。

たとえば、「○○さんと浮気したことを認めます」という誓約書を書かせたとしましょう。
一見何ら問題はないようですが、後になって「『浮気』というのは手をつないだりキスをしたりしたという意味であって、肉体行為はなかった」「浮気をしたのは事実だが、既婚者だとは知らなかった」あるいは「相手から無理に誘われて一度だけ浮気をしただけだから、慰謝料は少なくて済むはずだ」という主張をされる余地が残っています。

不倫慰謝料請求の基本的な要件は「相手が既婚者であることを知りながら肉体関係を持つこと」です。

そして、慰謝料の額は浮気の回数や期間によって左右されます。
したがって、誓約書には「2人の関係はいつ始まったか」「どこでどのような浮気をしていたか」「相手が既婚者であることを知っていたか」「どのような浮気を何回したか」といった情報を詳しく記載するのが理想的です。

「浮気をされたというだけでもショックなのに、わざわざそんなことを聞きたくない」と思われるのはもっともですが、不倫慰謝料請求はあくまでも法律に基づいて行われる請求であることを忘れてはいけません。

浮気相手に慰謝料の支払いを約束させる場合には、金額をどうやって設定するかも問題となります。
不倫慰謝料には相場があり、弁護士が介入して交渉を行ったり裁判になったりした場合には、概ね相場の範囲内で合意に至るのが一般的です。

ところが、相場を知らない本人同士の交渉では相場よりもずっと低い金額で合意してしまうおそれがあります。
一度慰謝料の金額について合意してしまうと、後になってそれを覆すのは簡単なことではありません。

誓約書は、不倫慰謝料の相場を知る専門家のアドバイスの下で作成するようにしましょう。

浮気相手との面会はどこで行うべきか

浮気相手との面会を行う場所として、お互いの自宅、喫茶店やレストラン、貸し会議室などが思い浮かぶと思います。
では、面会はどこで行うのがよいのでしょうか。

まず、お互いの自宅は避けた方が賢明です。
浮気相手を自分の家に入れたくないという方が大半だと思われますし、相手の自宅という相手の領域にわざわざ入って話し合いをすることは交渉のやり方として得策ではありません。

喫茶店やレストランはお互いにとって中立的な場所で手軽であるというメリットがありますが、周りの目が気になってお互いに言いたいことが言えないことがあります。

その点、貸し会議室は中立的な場所ですし周りに声が漏れないのでおすすめです。

この後に詳しくご説明しますが、弁護士に慰謝料請求の手続を依頼して法律事務所内で面会をする方法もあります。
自分が依頼した弁護士のオフィスで面会を行うことができれば、交渉を有利に進めることができる可能性が高くなります。

浮気相手との面会に誰に同席させるべきか

浮気相手と2人きりで面会をするとどうしてもお互いに感情的になりがちです。
第三者に交渉に同席してもらうことで冷静に話をし、場合によっては当事者の間に入って仲裁してもらうことができます。

面会に同席してもらう人として最適なのが、弁護士です。
弁護士は法律と交渉の専門家で、浮気相手との面会はまさしく専門領域です。

法律の専門家には弁護士の他に司法書士や行政書士などがありますが、慰謝料請求において相手方との交渉を代理することができるのは弁護士だけです。

当事者同士で感情的な言い合いになったときでも、弁護士が「法律的にはこうなります」という客観的な意見を言うことで冷静な議論に戻すことができますし、脅迫や暴行などの違法行為が行われそうになったときには、それが刑法上の犯罪に該当することを忠告することもできます。

弁護士は不倫慰謝料請求の相場を知っていますので、いくらだったら合意すべきか、逆に合意すべきでないかという判断を行うこともできます。

また、慰謝料の額がなるべく高額になるように代理で交渉を行ってもらうこともできます。

浮気相手に対して不倫慰謝料を請求したいと考えたときには、弁護士に依頼し、面会に同席してもらうことをお勧めいたします。

まとめ

自分の配偶者の浮気相手と直接会って面会することは非常に大きなストレスになります。
そればかりか、不用意に浮気相手と約束をしてしまうと「本来もらえるはずだった慰謝料がもらえない」という結果にもなりかねません。

慰謝料請求の手続は専門家である弁護士に相談し、万全の準備をした上で相手方との面会を行うようにしましょう。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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