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不倫されても経済的理由で離婚できない

経済的理由で不倫されても離婚できない…離婚後に受けられる手当・支援制度とは

夫が不倫しているけれど、離婚後の生活が不安で不倫の事実を切り出せないという方はいらっしゃいませんか?夫が許せない、離婚したいけれど踏み切れずに日々つらい思いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

離婚は、勢いですると後々生活で苦労したり、本来相手から受け取ることができるお金を受け取り損ねたり、子供と離れ離れにならざるを得ないなど、後悔する結果にもなりかねません。そこで今回は、不倫されても離婚できずにお悩みの方に、離婚後に利用できる手当や支援制度、気を付けておくべき点を解説します。

不倫夫が離婚に応じない場合に取るべき3つの対処方法

(1)弁護士に相談する

夫の不倫は、法律で定められた「裁判になれば離婚が認められる理由」にあたります。これを「離婚事由」といい、不倫以外にも生活費を渡されないなどの悪意の遺棄や相手の3年以上の生死不明、回復の見込みがない強度の精神病などが決められています。

夫婦が離婚する場合は、不倫夫に離婚したいという意思を相手に伝え、話し合いで離婚が決まったら離婚届を役所に提出するのが流れです(協議離婚)。しかし、不倫夫が妻からの話し合いに応じない場合は、弁護士に相談して、場合によっては代理人として夫と交渉してもらうことが有効です。

妻の話には耳を貸さなくても、弁護士が妻の代理人として出てくることで夫へのプレッシャーになり、離婚の話し合いに応じることが期待できます。また、弁護士がついていると、話し合いの中で不倫慰謝料や離婚の際の財産の分け方について決めることもできるので、妻の負担は軽く済むことが可能です。

(2)調停を利用する

弁護士が入った話し合いでも離婚がまとまらない場合は、調停を利用することを検討します(調停離婚)。日本では、話し合いがまとまらなくてもいきなり離婚裁判はできず、裁判の前に調停をするのがルールです(調停前置主義)。

調停は、調停委員という専門家が仲介役となり、夫婦の話し合いで離婚できることを目的としています。調停がまとまれば「調停調書」という書面に内容がまとめられて離婚が成立します。

(3)調停でもまとまらない場合の手続きの流れ

調停でも離婚が合意できなければ、次に審判に移行します(審判離婚)。審判離婚は、家庭裁判所が調停の代わりに行う手続きで、非公開でできる、裁判より安く済むなどのメリットがある反面、審判の内容に不満があると異議申し立てをして裁判で争わないといけなので、二度手間になる恐れがあります。

審判で異議申し立てがでると、いよいよ裁判で離婚を決めることになります(裁判離婚)。裁判離婚は、家庭裁判所が強制的に離婚の結論を出す方法なのでむやみには利用できず、法律で決められた

  • 不貞行為(不倫)
  • 悪意の遺棄
  • 配偶者の生死が3年以上不明であること
  • 強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
  • その他婚姻を継続し難い重大な事由がある場合

のどれかがないと争えない決まりです。

離婚後の生活が心配で離婚できない方へー受けられる手当や制度とは

不倫夫が許せず離婚をする場合、特に専業主婦や兼業主婦で収入が多くない方は、離婚後の生活に不安を感じることも多いのではないでしょうか。ここでは、離婚後に受けられる手当や制度をご紹介します。

(1)支援制度

①生活保護

離婚したかどうかにかかわらず、収入が厚生労働大臣が定める最低生活費よりも少ない人は、最低生活費と収入の差額を生活保護費として受給することができる制度です。反対に、貯金や資産がある人や、扶養してくれる家族がいる人は利用できません。生活保護費の金額は、家族構成、居住地、収入によって差があるので、申請する場合は地域の福祉事務所の生活保護担当者に相談してください

②児童手当

児童手当は、離婚したかどうかにかかわらず、0歳から中学校卒業までの子どもを養育する親などに支給されます。児童手当の金額は、子どもの年齢によって変わります。

  • 0~3歳未満 : 月額15,000円
  • 3歳~小学校修了前 : 月額10,000円(第1子・第2子)、15,000円(第3子以降)
  • 中学生 : 月額10,000円

ただし、世帯収入が約960万円以上の場合は一律月額5,000円に制限されます。
児童手当の受給の際は、市区町村に申請して手続します。

③児童扶養手当

両親の離婚や死別などの一人親家庭や、DVで保護命令を受けた家族の子どもに、地方自治体が一定の手当を支給するものです。児童扶養手当の金額は、収入と子どもの人数によって変わります。

  • 子どもが1人 : 月額9,990~42,300円
  • 子どもが2人 : 月額5,000~9,990円を加算
  • 子どもが3人以上 : 月額3,000~5,900円を加算

④特別児童扶養手当

子どもに障害があり、親などの収入が一定以下の場合に、国から支給されます。特別児童扶養手当の金額は障害の程度によって変わります。

  • 1級 : 月額50,400円
  • 2級 : 月額33,570円
  • 重度の障害で常に介護が必要な場合(障害児童福祉手当) : 月額14,280円

⑤就学援助

離婚しているかどうかにかかわらず、経済的な理由で義務教育の学校に通うことが難しい子どもの保護者を、市区町村が支援する制度です。具体的には、学校用品費や給食費などの支援を受けることができます。申請は、市区町村の学務課や教育委員会に問い合わせてみてください。

(2)特別な貸付制度

①生活福祉資金貸付制度

離婚したかどうかにかかわらず、収入が低い人が安定した生活ができるように貸し付けを受けられる制度です。金利が年利0~3パーセントと低く、連帯保証人がいれば大半は無利子で利用でき、貸し付けの目的によっては連帯保証人がいなくても無利子で借りられるなど良い条件で融資を受けることができます。

利用できるのは、収入が少なく金融機関から借金できない低所得世帯、65歳以上の高齢者がいる世帯、身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳の保有者がいる障害者世帯ですが、多重債務者など返済できない人は除きます。お金の利用目的によって利率が変わるので、融資を受けたい場合は各都道府県の社会福祉協議会にお問い合わせください。

②母子及び父子福祉資金貸付金

20歳未満の子どもを扶養している母子、父子家庭の親が、子どもの就学資金や医療費、親が就労するための資金を借りられるものです。

12の目的のいずれか(事業開始資金、事業継続資金、技能習得資金、 修業資金、就職支度資金、医療介護資金、 生活資金、住宅資金、転宅資金、結婚資金、 修学資金、就学支度資金)によって融資の上限金額や返済期限が異なりますが、どれも0~3%の低金利で利用でき、返済期間も3~10年と長く利用しやすいメリットがあります。融資を受けたい場合は市区町村の児童福祉所に申請してください。

③女性福祉資金貸付制度

結婚しておらず、家族を扶養しているか収入が一定以下の女性で、以前母子家庭で20歳未満の子を扶養したか、40歳以上で婚姻歴があるなどの条件を満たし、融資を受ける必要があると認められた女性が利用できる制度です。融資を受けるのに保証人が要りますが、年利0~1%と低金利で利用できます。

④応急小口資金

離婚したかどうかにかかわらず、低所得世帯が医療費の支払いや火災にあったなど、様々な事情で、一時的に緊急の生活費が必要な場合で返済の見込みがある場合に無利子で利用できる融資制度です。母子家庭・父子家庭の場合は母子及び父子福祉資金貸付金が優先されることもあります。

(3)その他の有利な制度

①母子家庭・父子家庭自立支援教育訓練給付金

母子家庭・父子家庭で、20歳未満の子どもを扶養し、児童扶養手当の支給を受けているなどの条件を満たす親が、対象の教育訓練の講座を受けて修了した場合に、経費の60パーセント(12,001円~上限20万円)が支給される制度です。看護師などの、資格取得を目指す場合に一定の金額が支給される「高等職業訓練促進給付金等事業」もあります。

②母子生活支援施設、公営住宅優遇措置

母子生活支援施設は、母子家庭で18歳未満の子どもを養育していたり、離婚届けを提出できない女性が、子どもと利用できる施設のことで、住民税や所得税の金額によって利用料などが決まります。希望する場合は、地域の福祉事務所にお問い合わせください。一方、公営住宅優遇措置は、母子家庭・父子家庭で住居に困っている人が公営住宅に優先的に入居できる制度です。

③マル親(ひとり親家庭等医療費助成制度)

母子・父子家庭で、収入が一定以下で、18歳になった最初の3月31日までの児童を養育している保護者に、高額療養費および入院時食事療養費を除く医療費の自己負担分を補助するものです。全額負担ではないので、一部負担する金額は、住民税の課税・非課税によって変わります

④税制優遇制度

母子・父子家庭や、収入が一定以下の家庭が、所得税や住民税の軽減を受けられる制度です。そのほか、生活保護受給世帯、児童扶養手当受給世帯は、上下水道料金や粗大ごみの処理手数料を減免される制度もあります。

⑤ホームヘルパー派遣制度

母子・父子家庭で中学生以下の子どもがおり、病気やけがで支援が必要な場合にホームヘルパーを派遣してもらい、料理、洗濯などの家事をしてもらえる制度です。所得金額によって自己負担が生じる場合があります。

離婚後の子どもの不安を解消するために知っておくべき対策とは

(1)親権をとりたいならやっておくべき2つの準備

夫婦に未成年の子どもがいる場合は、親権を決めなければ離婚できません。親権をどちらの親が持つかは、子どもにとって良い環境になること(子の福祉)を中心に検討されます。子どもの親権を取るには、離婚後でも子供の生活への影響を最小限に、安定した生活を送れることが最低条件です。

親権をとるために、特に離婚後の「住居」と、安定した生活ができる「収入」の2つは確保しておきましょう。それ以外にも、親のサポートが受けられるなどの事情があれば有利になるので、利用できるサポートは、家族、公的制度を問わず調べておきましょう。

(2)養育費を確実に払ってもらうための対策

養育費は、夫婦の話し合いがまとまればいくらでもいいのですが、通常は夫婦の収入や子どもの人数をもとにした「養育費算定表」に基づいて決めるのが一般的です。
参考:http://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf(東京家庭裁判所)

養育費算定表は、子どもの人数と年齢別に表10~19までの9つの種類があり、その中から家族の状況に応じた表を選び、養育費を請求する親と支払う親の年収を当てはめて養育費の目安を算出し、最後にローンの有無などの個別の事情を加味して金額を決定します。

このようにして決める養育費ですが、実は8割程度が途中で不払いになるといわれています。養育費を確実に回収するためには、いざというときに相手の財産から強制的に回収できる、「強制執行」の準備をしておくこと、具体的には「債務名義」があることが必要です。

債務名義とは、強制執行をするために必要な文書のことで、養育費について書かれた協議離婚した際の公正証書、調停離婚の調停調書、離婚裁判の判決などのことです。特に話し合いで離婚した協議離婚の場合は、公正証書の中に「支払いができなくなったら強制執行しても構わない」という「執行任諾条項」が書かれていることをチェックしましょう。

強制執行では、相手の給与や預貯金などの金銭、自宅などの不動産、車や貴金属などの動産などが含まれます。給与については一定の制限がありますが、合わせて差し押さえる財産も確認しておきましょう。

(3)面会交流の決め方

面会交流は、離婚して子供と一緒に暮らせない側の親が、子どもと面会できる権利のことです。平均的には、月に1回程度、日帰りで認めるのが一般的です。これに加えて、年に数回泊りの面会交流を決めることも多いです。面会のペースや面会の場所は、夫婦の話し合いで決定します。もし、相手が子どもに暴力を振るったり、拉致する恐れがある場合は、面会交流を認めないこともできます。

養育費をできるだけもらうために、面会交流の回数を増やすといった交渉方法もありますが、子どもと会いたくないという親は少ないので、子供のためにも、夫婦で決められない場合は弁護士に相談することをお勧めします。

有責配偶者からの離婚方法とはー不倫した側で離婚したくてもできない方へ

不倫、つまり不貞行為は、法律で認められた離婚原因の一つです。不倫をした側を「有責配偶者」といいますが、有責配偶者からの離婚請求は認められないのが原則です。ただし、例外的に次の3つの場合は認められる場合があります。

  • 夫婦が別居している期間が、夫婦の年齢や一緒に暮らした期間と比べてかなり長期間であること
  • 夫婦に幼い子どもがいないこと
  • 不倫された側の配偶者が、離婚で精神的・社会的・経済的に厳しい状況に陥るなどのダメージが受ける事情がないこと

裁判例では、同居が12年、別居が36年に及んだ子どものいない夫婦で有責配偶者からの離婚請求が認められたり、同居4年、別居30年で子供がすでに独立した夫婦で有責配偶者が住宅ローンの支払いを続けている場合に有責配偶者からの離婚請求が認められたケースがあります。

裁判例はあるとはいえ、原則有責配偶者からの離婚請求は認められず難しいこと、離婚請求する際には不倫をされた妻へのケアをきちんとすることなどの条件が必要になることから、お悩みの場合は専門家である弁護士に相談されることをお勧めします。

相手とは言え、大半のケースで責任能力はあるといえるでしょう。ただし、未成年の不倫相手の親が、子供に代わって慰謝料を支払うと自発的に申し出る場合は、親に慰謝料を請求しても構いません。

まとめ

今回は、不倫されても離婚できない方への支援制度のご紹介や、有責配偶者からの離婚請求について解説しました。離婚する際は、財産の分け方、慰謝料の請求、子どもがいる場は親権者の決定や養育費など、決めなければならないことが膨大ですし、離婚後の生活も確保しなければなりません。

不倫されても離婚に踏み出せない、有責配偶者だが離婚請求したいなどお悩みなら、まずは気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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