1. 不倫慰謝料請求ガイド
  2. 不倫中絶の慰謝料とは

不倫相手が旦那の子供を妊娠・中絶した場合の慰謝料相場と対処法

皆さんの中には、夫の不倫相手が妊娠・中絶してお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。反対に、ご自身が配偶者がいる男性の子供を妊娠し、中絶を考えている方もいらっしゃるかもしれません。

女性にとって妊娠・中絶は大きな決断ですし、不倫された妻側も気持ちの面でも揺らぐことは多く、慰謝料をどうしたらいいか、逆に請求されることはあるのか不安になることもあると思います。今回は、夫の不倫相手が妊娠・中絶した場合の慰謝料相場や対処方法についてお話したいと思います。

旦那の不倫相手が妊娠中絶した場合に慰謝料を請求される可能性はあるか?

夫が不倫し、その不倫相手が妊娠・中絶した事実は、不倫された妻にとっても大きなショックになるのではないでしょうか。夫の裏切りに加え、不倫相手から中絶を理由に慰謝料を請求されるとなると、精神的な負担はさらに大きくなります。ここでは、不倫相手から中絶の慰謝料を請求できるのか解説します。

(1)中絶で発生する慰謝料とは

「慰謝料」とは、他人の行為で受けた精神的苦痛を、金銭で賠償することです。慰謝料を請求するには、

  • 法律上守られるべき権利があり、相手がわざと(故意)またはうっかり(過失)侵害したこと(不法行為)
  • 損害が発生したこと
  • 侵害行為と損害の間に因果関係があること

という条件が必要になります。

妊娠中絶の場合は、不倫相手の女性が、妊娠・中絶を余儀なくされて精神的苦痛を受けたと言えるかどうかが問題になります。

(2)不倫相手からの慰謝料請求される可能性

不倫で妊娠中絶した場合、不倫した女性は、不倫相手の男性やその家族に対して、慰謝料を請求できないのが原則です。というのも、通常男女が合意して性交渉を行うため、妊娠も同意に基づいて生じたことと言えること、中絶も同様に、どちらかが中絶を要求したとしてもそれに応じた以上は同意の上での行為と言えることから、そもそも権利が侵害されたとは言えないからです。

ただし、次のような場合は不倫関係でも権利の侵害があったといえ、慰謝料を請求される場合があります。

  • 夫が不倫相手をレイプして妊娠させた場合
  • 夫が既婚者であることを隠して性交渉していた場合
  • 避妊していると嘘をついて性交渉していた場合
  • 不倫相手が妊娠中絶する際に、夫が中絶費用などを折半しなかった場合

実際に過去の裁判例では、妊娠させた男性には、中絶する女性の負担を軽減させるように努める義務があり、これを怠ったとして慰謝料の請求が認められたケースがあります(東京高裁平成21年5月27日判決)。

妊娠中絶した不倫相手に慰謝料は請求できる?

結婚している夫婦は、配偶者以外の異性と性交渉をしないという「貞操義務」をお互いに負っています。不倫された側は、貞操義務に違反して受けた精神的苦痛を受けたとして、この損害を賠償するための慰謝料を、不倫した配偶者と不倫相手に請求できます。

不倫相手にも慰謝料を請求できるのは、不倫は1人ではできず、2人以上が一緒になって相手の権利を侵害する「共同不法行為」という性質の行為だからです。

夫の不倫相手が妊娠・中絶したということは、明らかに両者の間に性交渉があったということなので、妻は夫と不倫相手の女性に対して慰謝料を請求することが可能です。

不倫相手の子供を妊娠・中絶する際の慰謝料額の相場や目安

(1)不倫された妻から夫と不倫相手に請求できる慰謝料の相場とは

①不倫慰謝料の相場

不倫された妻が、夫と妊娠中絶する不倫相手に対して請求できる慰謝料の金額に、法律の決まりはないので、いくら請求しても構いません。とはいえ、実務では一定の相場があり、不倫が原因で別居・離婚をしない場合は数十万~200万円程度、別居・離婚をする場合は100万~300万円程度というのが目安です。

②妊娠・中絶で慰謝料が増額される場合がある

不倫慰謝料は、不倫されたことで生じる精神的苦痛をお金で填補するものなので、不倫相手が妊娠中絶していなくても、不倫の事実だけで請求できます。しかし、不倫相手が妊娠中絶することは、平穏な夫婦関係を破壊しうる悪質な行為と考えられ、慰謝料を増額させる理由になりえます。

具体的にどの程度増額するかは、夫や不倫相手の経済状況や社会的地位(収入が多いほど高くなります)、パワーバランス(不倫相手が夫の若い部下だったような場合は少なくなります)、不倫相手の意図(明らかに家庭を壊す意思があった場合は高くなります)などによって変わります。

③妻が慰謝料請求できる相手

妻がトータルで200万円の慰謝料を請求する場合には、夫と不倫相手に100万円ずつ請求しても、不倫相手にだけ200万円請求することもできます。ただし、夫と不倫相手の双方に200万ずつ請求して二重取りすることはできません。

(2)妊娠中絶する不倫相手から夫に請求できる慰謝料の目安とは

①不倫相手が請求できる慰謝料

妊娠中絶する不倫相手が請求できる慰謝料の金額は、妊娠・中絶の状況によって変わります。

まず、性交渉自体が合意によらずレイプされたような場合は、非常に高額になりますし、そもそも強制性交等罪という犯罪に該当します。この場合の慰謝料は少なくとも100万円以上、場合によっては1000万円にのぼるケースもあります。同様に、既婚者であることを隠して性交渉をした場合も、慰謝料が高額になる事情になります。この場合は、相手の年齢や男性の社会的地位にもよりますが、高くて数百万円が相場と言えるでしょう。

一方で、不倫相手も既婚者と知りつつ合意のもと性交渉をしていたような場合は、いくら男性が「妻とは不仲で離婚予定」などと甘言を弄していても、慰謝料は低額になります。

また、中絶そのものに慰謝料請求が認められる場合もあります。

上記でご紹介した東京高裁の裁判例では、男女が合意して性交渉し妊娠したこと自体は不法行為にはあたらないとしつつ、男性には女性の肉体的・精神的負担を軽減する義務があるとして、男性が話し合いに応じず女性だけに中絶の結論を出させたなどの事情から、200万円の慰謝料請求に対して半額の100万円の慰謝料の支払いと、中絶費用の半額の負担を認めました。

②妊娠・中絶で請求できるそのほかのお金

不倫相手から請求されるお金としては、慰謝料のほかに中絶手術の費用があります。

  • 妊娠8週目まで:12~13万円
  • 妊娠9~10週目:15~16万円
  • 妊娠11~12週目:18~19万円
  • 妊娠13~22週目:30~50万円(要入院)

妊娠22週以降は妊娠中絶をすることはできません。

その他にも、妊娠に際しての初診料(エコーなど)、性病の検査費用、交通費などに加え、妊娠・中絶で会社を休んだ場合の休業損害なども請求の対象になります。これらの費用は、男性に資力がある場合は全額男性に請求するか、話し合いで半額になるケースが多いです。

③不倫相手が慰謝料請求できる相手

不倫相手が請求できる相手は、性交渉を持った男性のみで、男性の家族に請求することはできません。

不倫で中絶する慰謝料を払う場合の示談書の書き方

示談は当事者の合意をいい、示談書はその内容を記した書面のことを言います。示談書は「合意書」などということもありますが効果は変わりません。示談は、原則として1回限りのチャンスなので、示談の際には今回の問題を最終解決できるように、情報をきちんと盛り込んでおきましょう。

示談書に書く内容は、合意の内容によっても変わりますが、一般的な書き方をご紹介します。なお、示談書は、ワードでも手書きでも大丈夫ですが、最後の署名押印は直筆で書くようにしてください。

(1)不倫の事実

夫と不倫相手が不倫した事実を記載し、認めさせることは必須です。できるだけ具体的な日時や不貞行為の内容を記しましょう。不倫相手が妊娠・中絶した場合は、不貞行為によって妊娠したことまで書いて構いません。

この際、「不倫」ではなく必ず「不貞行為」と書きます。不倫は一般概念なので、法律上の不倫である「不貞行為」と書かないと、後でうやむやになる恐れがあります。

(2)示談金の支払い

示談金とは、今回の問題を解決する一切のお金を指し、慰謝料もこれに含まれます。妻が夫に離婚を請求する場合には、後述する財産分与などのお金の分配も含めて記します。反対に、妊娠・中絶した不倫相手から請求する場合は、慰謝料に加えて中絶費用なども含めたお金について記載します。

(3)不倫関係を解消することの合意

特に夫と離婚しない場合は、夫が不倫相手との関係をやめ、二度と不倫をしないように約束させます。

(4)禁止行為、秘密保持

不倫していた2人は、関係解消後も連絡を取り合ったり、こっそりあったり、SNSにアップしたり、会社にばらしたりと面倒を起こす人もいます。そのような事態を防ぐために、二度と面会しない、電話、手紙、メール、SNSなどでも連絡を取らない、本件について互いに口外しない等の禁止事項を盛り込んでおきます。

(5)ペナルティ

今回の不倫による妊娠中絶は示談で合意するけれど、上記の約束を破って不倫したり連絡を取り合うなどの違反行為がないように、厳しいペナルティを書いておくことで、不倫の再発防止につながります。夫に対して、次は離婚する場合には、条件はその時に協議すると書いておくとよいでしょう。

示談書の最後には、「本示談内容を証するため、本示談契約書を2通作成し、各自1通を保有する。」と記して同じものを2通作成し、それぞれに当事者が署名押印して1通ずつ保管します。

不倫で妊娠中絶する場合の慰謝料請求の時効とは

(1)不倫をされた妻からの慰謝料請求の時効

不倫慰謝料は、民法で定められた「不法行為」に基づく損害賠償として請求します。不法行為に基づく損害賠償請求権の時効は、損害及び加害者を知ったときから3年と定められています(民法第724条)。そのため、不倫された妻が夫と不倫相手に慰謝料を請求する際は、不倫の事実や不倫相手を知った時から3年以内に行いましょう。

(2)妊娠中絶する不倫相手からの慰謝料請求の時効

上記と同様に、不倫相手からの慰謝料請求の時効も3年で消滅します。

そのため、性交渉自体が権利の侵害だった場合は性交渉の時から3年、妊娠中絶の際に男性が適切に負担を軽減する義務をしなかった場合は、中絶した時から3年以内に慰謝料を請求します。

他方で、中絶費用の負担については、法律の根拠が異なり、「不当利得金の返還請求」という性質を持ちます。この場合の時効は10年なので、中絶から10年以内に請求することになります。

旦那の不倫相手が中絶した場合に離婚できるか

(1)旦那の不倫相手の妊娠中絶で離婚できる場合とは

夫婦は、お互いに納得すればどんな理由でも離婚できますが、合意できずに離婚裁判をする場合には、法律で決められた理由が必要です。これを「法定離婚事由」といいます。

不倫は、前述のように夫婦の貞操義務に違反した行為として、裁判で慰謝料を請求できる行為ですが、同時に「法定離婚事由」のひとつでもあります。

ここでいう不倫は、性交渉があったという「不貞行為」を指しますが、不倫相手が妊娠・中絶したということは必ず性交渉があったと言えるため、不倫相手が妊娠・中絶した場合には離婚することができます。

(2)不倫相手の妊娠・中絶で離婚する場合の流れ

まずは当事者で話し合い、離婚に向けて合意します。これを「協議離婚」といい、日本の離婚の9割は協議離婚です。
話合いでまとまらない場合は、裁判所で調停委員という第三者を入れて話しあう「調停離婚」に移行し、それでもまとまらなければ、裁判所が職権で行う「審判離婚」に移ります。審判離婚は、細かな条件で合意できない場合にだけ行われること、一方に不服があれば裁判に移行することから、実務ではほとんど利用されていません。

それでもまとまらない場合に「裁判離婚」として、裁判所が判決により離婚を決定しますが、裁判の中で和解を勧められることも多いです。

(3)不倫相手の妊娠・中絶で離婚する際に請求できるお金

夫と不倫した相手の妊娠・中絶で離婚する場合は、上記の慰謝料と合わせて、次のようなお金を請求できます。

①離婚慰謝料

夫婦がどちらか一方の原因で離婚する場合は、離婚すること自体の精神的苦痛を理由に、離婚慰謝料を請求できます。ただし、原因が不倫の場合は、不倫慰謝料と一緒に請求するのが通常です。

不倫相手が妊娠・中絶を一時は受け入れたけれど、何年もたって離婚したくなった場合など、不倫慰謝料が時効にかかっている場合には、離婚慰謝料を請求することを検討するとよいでしょう。

②財産分与

財産分与とは、夫婦が離婚する際に、結婚期間中に築いた財産を原則として半分ずつ分けあうルールのことです。マイホームなどの不動産、車、預貯金、株などのプラスの財産がメインで、借金については借金の理由などを踏まえて検討されます。

③年金分割

年金分割とは、結婚期間中に夫婦の一方が納付した厚生年金と共済年金の保険料の納付実績を分けることです。記録を分けるものなので、すぐにお金になるわけではありませんが、将来年金を受給する際に納付実績を考慮してもらえます。

④養育費

夫婦に未成年の子供がいる場合は、親権者を決めることが離婚の条件です。妻が親権者になった場合、子供が成人するまでの生活費を養育費として夫に請求できます。養育費の金額は、子供の年齢と人数、夫婦の収入によって決められます。

養育費は分割払いが原則ですが、実態は8割が途中で不払いになると言われています。養育費について合意した内容を、公証役場で「強制執行認諾付きの公正証書」という書類にしておくことで、不払いになった場合に夫の財産を差し押さえて回収することができます。

まとめ

今回は、不倫相手が妊娠・中絶した場合の慰謝料の相場や、妻側、不倫相手側のそれぞれの対応についてお話しさせていただきました。

不倫で妊娠中絶することは、妻にとってもショックが大きく、不倫相手にとっても肉体的にも負担が大きいものです。お互いに、負担の大きさからどうしたらいいかわからず悩みを深める方も多いと思います。そのような場合は、まずは弁護士にご相談ください。

慰謝料請求やその他の対応についても、適切なアドバイスを受け、代わりに交渉を依頼することもできます。初回の相談は無料という事務所や弁護士も多いので、まずはお気軽にご相談されてみてはいかがでしょうか。

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