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養育費調停の流れとは|相手が来ない場合の対処法や有利に主張する方法を解説

「離婚をするのに養育費でもめている」「当事者だけでは解決できないので調停を考えている」
子供がいる夫婦が離婚する際、親権の決定や養育費の金額は、問題になりやすいテーマの一つです。

特に、子供への愛情と今後の生活のバランスから当事者間では話し合いがまとまりにくく、泥沼化する恐れもあります。

そのような場合に有効なのが、第三者を入れて話し合いをする調停の利用です。
しかし、どのように利用すればよいのか、相手が応じない場合はどうしたらいいのかなど、疑問点が多く利用に踏み切れないという方もいらっしゃると思います。

そこで今回は、養育費調停の流れはどのようなものか、相手が応じず来ない場合の対応や、有利に調停を進めるための方法について解説したいと思います。

養育費の決め方とは?養育費調停の3つの役割

(1)養育費の決め方の原則

未成年の子供がいる夫婦が離婚するときは、夫婦のどちらかを子供の親権者に決めることが離婚の条件になります。
親権者は、子供の財産を管理したり法律行為を代理したりする権利義務(財産管理権)と、居所を指定し監護する権利義務(監護権)を持つのが通常です。

離婚しても、親は子供を扶養する義務を負うので(民法877条1項)、子供の親権者となった親は、配偶者に対して、子供が成人するまでに必要な生活費に相当する監護教育に必要なお金を請求できます。これが養育費です。

養育費は、未成年の子供が成人するまで請求できるのが原則ですが、子供が18歳で結婚したり、高校を卒業して就職したり、親の扶養義務がなくなるといった事情によって養育費を支払わなくてよくなることがあります。

一方、成人しても学業を続けるなどの事情で経済的に自立できない場合は養育費を支払わなければならないこともあります。

また、令和4年4月から、民法改正により成人年齢が20歳から18歳へ引き下げられますが、子供の多くが18歳では経済的な自立は難しいとして、20歳まで養育費を支払うべきだと考えられています。
参考:平成30年度司法研究「養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究」研究報告の概要

(2)養育費調停を利用するケースとは

養育費は、通常は家庭裁判所の考えをもとに、親の年収、子供の人数と年齢別に、現在の社会情勢に見合った金額の目安を表にした「養育費算定表」に基づいて算出します。
しかし、これはあくまで目安の金額で、夫婦が同意すれば何円でも構いません。

とはいえ、養育費算定表の目安があっても、家庭の事情により増減しますし、養育費の金額でもめることは少なくありません。
夫婦間で養育費の金額の合意ができない場合は、第三者を間に入れて話し合いを進めることができます。これが「養育費調停」です。

また、養育費を支払う側の親の収入が減り減額を希望する場合、逆に収入が増えために請求する親が増額を望む場合、養育費が支払われない場合にも調停が利用されます。

このように、養育費調停には目的に応じて次の3つの役割があります。

  • 養育費請求調停…養育費を請求する調停
  • 養育費増額請求調停…養育費を増額したい場合の調停
  • 養養育費減額請求調停…養育費を減額したい場合の調停

それぞれ目的は異なりますが、家庭裁判所に申し立てをして日時などを決めて調停員を入れて話し合いをするという進め方は共通します。

養育費調停の手続きの流れ

養育費調停は、以下のような流れで行います。

(1)家庭裁判所への申し立て

(元)配偶者の住所がある地の家庭裁判所か、合意して決めた家庭裁判所に調停の申し立てを行い、必要な書類を提出します。

(2)調停期日呼出状の送付

家庭裁判所が養育費調停の日程を決め、当事者に調停期日呼出状を送付します。

(3)第1回目調停の開催

上記の期日に、第1回目の調停が行われ、裁判官1人と調停員2名が当事者双方の意見を聞きます。

(4)2回目以降の調停の開催

第1回目の調停で合意に達しなければ、1か月に1回程度のペースで再度調停が開催されます。

(5)調停の終了

以下3つのいずれかの場合に終了します。

  • 成立:当事者双方が合意し、調停で決まった内容について調書を作成し完了します
  • 不成立:合意が難しい場合に調停は終了し、審判に移行します
  • 取下げ:申立人が取下げ書を家庭裁判所へ提出し、調停自体が終了します

養育費調停にかかる期間は、内容によって変わりますが、概ね半年程度で終わることが多いです。
ただし、ケースによっては1年以上かかる場合もあります。

養育費調停で必要な書類や費用

(1)養育費調停に必要な書類

養育費調停の申立に必要な書類は次のようなものがあります。

  • 調停申立書とその写し
  • 対象となる未成年の子供の戸籍謄本
  • 申立人と相手方の戸籍謄本
  • 申立人の収入を把握するための書類(源泉徴収票写し、給与明細写し、非課税証明書写し、確定申告書写し等)

その他にも、裁判所が必要と認めた書類について、あとから追加で提出を求められることもあります。

(2)養育費調停にかかる費用

養育費調停を申し立てる際は、次のような費用がかかります。

  • 収入印紙代(子供1名につき1,200円)
  • 郵便切手(各裁判所によって異なりますが、概ね800円程度)

養育費調停を有利に進める5つのポイント

養育費調停も話し合いの一つです。話し合いの場での交渉を有利に進めるために、次の5つのポイントをぜひ押さえておきましょう。

(1)養育費の相場を知っておく

養育費は当事者が合意すればいくらでも構いません。とはいえ、やみくもに高い金額を請求し、いくらでもいいから欲しいというのでは、交渉を有利に進めることはできません。

養育費算定表をもとに、自身の家族構成や収入ではいくらの養育費の請求が目安になるのか相場を知っておくことで、その金額からの増額を交渉するなどしていきましょう。

(2)調停委員の納得と信頼を得る

調停委員は、話合いに加わる第三者です。交渉を導く進行役のため、有利に調停を進めるためには、調停委員の信頼を得て自身の主張に納得してもらうことが重要です。

具体的には、感情的にならないこと、子供の教育プランや自身の収入見込みを具体的に説明することなどです。
希望する養育費が必要である旨に納得してもらえるように主張しましょう。

(3)資料や陳述書の提出

養育費調停では、要求する養育費の金額が正当であることを、調停委員に納得してもらうことが重要です。
自分と相手の収入を証明する資料を提出して養育費の金額の合理性を主張したり、今後の教育費や生活費のプランを資料化して説明したりすることが有効です。

また、請求する金額の正当性を「陳述書」という形式で提出することもできます。
陳述書には、離婚後に生じる生活状況の変化や、将来の教育費・生活費とその根拠、請求する養育費金額と支払方法などを記載します。

ただ、いずれも、親の都合が中心だったり、相手を攻撃したりする内容になると、かえって調停委員の心証を害する恐れがあります。

養育費は子供のための費用ということを忘れないようにしましょう。

(4)審判の申し立ての検討

相手が話し合いに応じないことが明白な場合は、養育費請求調停を経ずに審判を申し立てることも不可能ではありません。
離婚などの通常の民事事件では「調停前置主義」といって、まずは調停で話し合うことがルールです。
しかし養育費の場合は例外とされています。

審判では、裁判官が直接関与し双方の事情を考慮した上で判断を下します。審判書が作成されると、養育費を請求する根拠として、不払いの場合は強制的に回収することもできます。

(5)弁護士への依頼

養育費調停は話し合いなので、弁護士をつけなくても当事者だけで行うことができます。
しかし、法律のプロである弁護士に依頼することで、調停を有利に進めるためのアドバイスを受けたり、正当な養育費金額の算定をしてもらったり、交渉の場でもサポートを受けることができます。

また、調停は本人が参加することが望ましいですが、弁護士に依頼すれば代理人として代わりに出席してもらえるので、仕事が多忙な場合も安心です。

相手が養育費調停に来ない場合の対処方法

相手が養育費調停に来ない場合、調停は自動的に不成立になり審判に移ります。

養育費調停の場合は、当事者が合意しないと成立しませんが、審判の場合は裁判官が結論をだすため相手が来なくても結論が出ることになります。

審判では、当事者の事情が全て考慮されるため、相手方の収入の証明も必要になりますが、調停に来ないような相手だと、収入の資料も提出してくれない場合もあるかもしれません。

そのような場合は、「賃金センサス」という、学歴や職歴、年齢をもとに推定収入を割り出す基準をもとにして、養育費算定表に基づいて養育費を算出します。

養育費の時効と払わない相手から確実に回収する方法

(1)養育費の時効とは

養育費を請求する権利にも時効があります。子供の進学などで大きな出費があり、本来支払ってもらえるはずだった養育費を後で請求しようとしても、時効が過ぎた分の金額については請求できなくなってしまいます。

養育費を請求する権利は、請求できるときから10年で時効にかかって消滅します。
時効のスタートは、養育費について合意した日からです。

なお、時効にかかる前であれば、過去の養育費を請求すること自体は可能です。
しかし、養育費は子供の現在から今後の生活のために必要なお金であり、過去の生活を充実させることはできないという性質があることや、過去の養育費の請求を認め過ぎると、支払う側が予測不能な多額の出費をしなければならない恐れがあることから、無制限に認められるわけではありません。

家庭裁判所が、両親の収入、子供の年齢や人数など諸般の事情を考慮してどこまで遡って認めるかを決定することになります。
実際は、養育費の不払いがあって調停をしたようなケースでは、事情にもよりますが調停を申立てた時以降の請求分が認められることが多いです。

(2)養育費を払わない相手から回収する方法

養育費は原則として毎月の分割払いで支払います。
しかし、日本では80%以上が不払いになると言われています。

養育費を払わない相手に請求する方法として、次のような方法があります。

①内容証明郵便で請求する

養育費の支払いが滞った場合、まず口頭で相手に請求し、それでも支払われない場合は内容証明郵便で請求します。
内容証明郵便は、郵便局が「いつ誰が誰にどのような内容の手紙を送ったか」を証明する郵便です。手数料はかかりますが、請求した事実を証明する証拠になります。

②調停で請求する

相手が内容証明郵便を無視したり、話合いでも支払いに合意したりしないような場合は、養育費支払調停を申し立てましょう。
養育費を支払わない場合の調停の申し立ての方法も、上記の養育費調停と同様です。

調停で支払いに合意すると調停調書が作成されますが、これは判決と同じ強い効力を持ちます。
調停を経ても相手が払わない場合は、調停調書に基づいて強制的に相手の財産から回収できます。

③履行勧告・履行命令を行う

調停調書や審判書、判決などがあれば、裁判所に「履行勧告」を出してもらい支払いを促すことができます。
それでも相手が応じなければ、「履行命令」を出して、一定期間内に養育費を支払うよう命じてもらうことができます。

履行勧告も履行命令も強制力はありませんが、履行命令に正当な理由なく従わない場合は10万円以下の過料になるので、心理的プレッシャーをかけることができます。

④強制執行で回収する

強制執行は、裁判所が相手の財産を差押さえ、現金化して養育費を回収する、最終手段ともいえる強力な手続きです。

強制執行するためには、和解調書、調停調書、勝訴判決など、強制執行の根拠となる法的文書が必要です。これを債務名義といいます。

調停に至らず、当事者で合意した場合でも、その内容を文書にして、公証役場で「強制証書認諾条項付き公正証書」にしておくことで、強制執行をかける根拠にすることができます。

弁護士に依頼したら養育費を増額できるか?依頼するメリット・デメリット

(1)弁護士に依頼するメリットと養育費増額の可能性

養育費は、当事者の話合いだけでも、調停や審判、裁判を利用する際も、弁護士をつけなくてもすることができます。

しかし弁護士に依頼することで、養育費を増額できる可能性が高まるメリットがあります。

  • 養育費算定表で算出される養育費金額はあくまで目安なので、弁護士に依頼して各家庭の事情や教育方針に応じた有利な交渉をすることができる。
  • 調停や審判になった場合に、自分の養育費請求の主張を根拠づける証拠や資料の提出を、弁護士のアドバイスを受けて適切に進めることができる。
  • 養育費の未払いがあった場合に、弁護士に依頼すれば豊富な手段から最適な手段で回収を相談、依頼できる。

また、弁護士に依頼すれば代理人となってもらえるので、相手方と代わりに交渉したり、調停、審判、裁判などにも代わりに参加してもらえたりするので、生活への影響を最小限に抑えられる点も大きなメリットと言えるでしょう。

(2)弁護士に依頼するデメリット

弁護士に依頼するデメリットとしては、費用がかかる点があります。
具体的には以下のような費用がかかってきます。

  • 相談料30分5000円+税というのが相場ですが、無料のところも増えています。
  • 着手金:弁護士に依頼する際、成功・不成功に関わらず最初に払う費用です。目安としては、10~30万が相場と言えます。
  • 報酬金:問題が解決した場合に払う費用です。一律の場合もあれば、養育費金額から一定の割合を請求する場合もあります。
    いずれにしても、20~50万円程度が相場です。
  • 日当:調停や裁判に出向いた場合の費用です。
  • 実費:郵送費用や交通費など実際にかかった費用です。

着手金や報酬金、日当の額は、弁護士や法律事務所によってかなり基準が違います。
まずは法律相談で見積もりを出してもらって検討するとよいでしょう。

まとめ

今回は、養育費調停の流れについて、ご説明しました。
有利に進めるためのポイント、相手が来ない場合の対処法など、初めて知ったという方もいるかもしれません。

養育費は、もめやすい反面、子供の安定した生活や今後のために大切な問題です。
当事者での解決が難しく、一人でお悩みの方は、まずは弁護士にお気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

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