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  2. 別れさせ屋が違法になる基準

別れさせ屋が違法になる基準は?裁判で倫理違反が指摘された事例も紹介

「夫と不倫相手を破局させるのに別れさせ屋に頼みたい」
「妻の不倫に悩んでいるが別れさせ屋に頼んだら違法なのか」
夫や妻の不倫に悩み、不倫相手との関係を清算させるのに別れさせ屋を使うことを検討している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

反面、別れさせ屋に依頼することが違法になるのではないか、別れさせ屋が行う工作の共犯にならないか等、不安を感じている方もおられるかと思います。

別れさせ屋に依頼すると、自分で手を出さなくてよい反面、別れさせ工作が問題になり、裁判になった事例もあります。

そこで今回は、別れさせ屋の行為に関する裁判例などの事例をご紹介しながら、別れさせ屋が違法になる基準等についてご説明します。

別れさせ屋の存在自体は違法なのか

「別れさせ屋」とは、配偶者や交際相手の不倫に悩んでいるけれど、ご自身では解決ができない人等の依頼を受けて、その不倫相手に別の異性を近づけたるなどして破局させようとする業者をいいます。
現在は、調査業者や一部の探偵業者などが、業務の一環として別れさせ屋を行っているケースが多いです。

そもそも別れさせ屋という仕事をすること自体が違法ではないかとお考えの方もいらっしゃるかと思います。

結論から言うと、別れさせ屋の存在自体は、原則として違法ではありません。
ただし、別れさせ屋の料金等が著しく高額で反社会的勢力の力を借りて別れさせ工作を行う業者は、個別の判断で違法とされる可能性があります。

また、別れさせ屋が行う、別れさせ工作の方法、状況、態様、またその依頼の目的によっては、その行為が違法になる場合があります。

別れさせ屋への依頼が違法になる基準とは

(1)別れさせ屋と公序良俗違反

日本の法律では、「公序良俗」、つまり、社会(公)の秩序(序)と日常生活のしきたり(良俗)などに反する法律行為は無効と規定されています(民法90条)。
とすると、交際中の人を別れさせるような行為を依頼する契約は、公序良俗違反で無効になるのではないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

実際、この法律を受けて、日本調査業協会の自主規制では「別れさせ屋に準じた事案については絶対にしない」という旨を決めています。
しかし、別れさせ屋との契約が、すべて違法で無効になるわけではありません。

①公序良俗違反になりうるケース

別れさせ屋との契約が公序良俗に反すると考えられるのは、夫婦を離婚させる依頼を受け、別れさせ屋が働きかけて肉体関係を持ち、離婚に至らしめるようなケースです。

夫婦には、配偶者以外の異性とは性交渉をしないという「貞操義務」があります。別れさせ屋が依頼を受けて、夫婦の一方と性交渉を行い、貞操義務を積極的に侵害しようとするような行為は、公序良俗に違反し契約も違法と考えられます。

②公序良俗違反にならない可能性があるケース

別れさせようとする2人が単なる恋人同士、浮気相手等の場合は、夫婦と違って貞操義務がありません。
そのため、別れさせ屋が依頼を受けて性行為をして、恋人を別れさせたとしても、公序良俗違反に当たらない可能性が高いです。

しかし、別れさせ工作の態様や、依頼の目的によっては公序良俗に反すると判断される可能性も否定できません。

③違法な方法を用いたケース

別れさせ工作を行うのに相手の住居に侵入したり、郵便物を勝手に開封したりするような行為をした場合は、その別れさせ工作は違法です。
そのため、そのような契約自体も違法の評価は免れません。

(2)別れさせ屋が問題になった事件・裁判例とは

上記のように、どのようなケースで違法になるのか、別れさせ屋の工作の違法性が問題になった裁判例をもとにご紹介します。

①別れさせ工作の公序良俗違反が問題になったケース

参考:大阪地裁平成30年8月29日判決
元彼女との復縁を希望する男性が、元彼女と今の彼氏を別れさせようとして、約130万円で別れさせ屋に工作を依頼したケースです。

今の彼氏に工作員の女性が接触し、食事をしたり連絡先を交換したりするなどの仲になり、元彼女にも彼氏と親密な関係になっていることを告げた結果、元彼女が今の彼氏と別れる結果になりました。

本件では、依頼者の男性が、別れさせ工作が公序良俗に反して違法と主張して成功報酬の支払いを拒んだため、別れさせ屋が依頼人男性に残金の支払い求めて裁判になりました。

第一審の大阪簡裁では、交際を解消するかどうかは付き合っている女性の意思によるので、公序良俗に反しているとまでは言えないとして男性に残金の支払いを命じ、控訴審の大阪地裁も別れさせ工作は違法ではないと判断しました。

②別れさせ屋の行為が殺人につながったケース

参考:東京地裁平成22年3月9日判決
妻との離婚を求める夫の依頼で妻と交際した別れさせ屋が、夫婦の離婚後も交際を続けていたところ、別れさせ屋だったことを知った妻から別れ話を切り出されて激高し、首を絞めて殺害したケースです。

本件では、別れさせ屋の行為は短絡的で自己中心的な犯行だとして懲役15年の判決が下りました。依頼した夫が罪に問われることはありませんでしたが、裁判官から、別れさせ屋について「不法のそしりや社会的非難を免れないもので、金目当てにそのような工作に及ぶ者や、目的のため手段を選ばずそのような工作を依頼する者が存在すること自体が甚だ遺憾なことだ」と批判を受けました。

また、遺族側から別れさせ屋共々損害賠償請求が起こされています。

別れさせ屋の工作で離婚する場合の注意点

(1)夫婦関係における別れさせ工作の問題

上記で、別れさせ工作が公序良俗に反しないと判断された裁判例をご紹介しました。

上記のケースの特徴は、別れさせ工作を受けて別れた元彼女と今の彼氏、女性工作員も全員独身だったために貞操義務を負わないこと、女性工作員の別れさせ工作は一緒に食事をしたことなどが中心で性交渉はなかったことといえます。

日本では、未婚の男女は、たとえ二股でも自由に恋愛関係になることができます。また、夫婦でも食事やキスなど性交渉を伴わないデートをするなどは合法です。
上記の裁判では、このような事情から別れさせ工作は違法な点がないと判断されました。

しかし、夫婦の場合は事情が異なります。先にご説明したように、夫婦には、配偶者以外の異性とは性交渉をしないという「貞操義務」があるので、その義務を積極的に侵害しようとする行為は違法と判断されます。

たしかに、不倫(不貞行為)は法律で定められた離婚原因なので、夫婦のどちらかが別れさせ屋と性交渉を行った場合は離婚原因になり得ます。

しかし、そもそものきっかけが別れさせ屋への依頼にあるため、依頼自体が公序良俗に反して無効と判断される可能性が高く、離婚に際しても慰謝料の請求が認められなかったり、逆に損害賠償を請求されたりする恐れが高いと言えるでしょう。

(2)別れさせ屋の問題

上記でご説明した裁判例のうち、後者の殺人事件は特殊な事例と思われるかもしれません。しかし、悪質な業者を利用した場合、殺人までいかなくても刑事事件に発展するリスクはあることに注意が必要です。

不倫が原因で離婚する場合、不倫をされた側はした側に慰謝料を請求することができます。自分が不倫の原因を御膳立てしておいて慰謝料請求をすることも悪質ですが、悪質な業者の場合は依頼料とは慰謝料の一部を請求してくるケースもあるようです。

どうしても別れさせ屋を利用する場合は、公序良俗違反のリスクがあることを踏まえたうえで、探偵として登録している業者に依頼するなど、少なくとも信頼に足る業者を選ぶように注意してください。

違法性や倫理違反のリスクなく別れさせたい場合の相談先

夫や妻が不倫をしていて不倫相手と別れさせたいと思われる場合、別れさせ屋に頼んで破局させることで復縁したいというお気持ちはわかります。

しかし、別れさせ屋への依頼は、上記のような違法性や倫理違反のリスクが伴います。
そのようなリスクなく、不倫相手と配偶者を別れさせたい場合には、まず弁護士に相談してはいかがでしょうか。

(1)慰謝料請求で別れさせれられる場合

配偶者と不倫相手が性的関係を持っている場合、不倫された側は不倫した当事者2名に対して慰謝料を請求することができます。
これは、夫婦の貞操義務を侵害されたことで被った精神的苦痛を、お金で補填してもらうためのお金です。

慰謝料は、不倫した配偶者と不倫相手の双方に請求しても、どちらか一方だけに請求しても構いません。

裁判上で認められている不倫慰謝料の目安は、次のようになっています。

  • 不倫が原因で離婚する場合
    100万~500万円(相場は200万円程度)
  • 不倫が原因で別居や離婚をしない場合
    数十万~200万円

不倫期間や社会的立場によって開きはありますが、これだけの慰謝料額を支払うのは、特に不倫相手にとっては大きなダメージになることが多いです。そのため、慰謝料の請求によって別れに至るケースは多いです。

(2)示談書で別れを約束させる

不倫相手に慰謝料を請求するときは、別れることの約束などを盛り込んで示談を行い、不倫問題を解決することが重要です。

示談とは、当事者の合意のことを言いますが、あらかじめ決めた内容を不倫相手に承諾させても問題ありません。
合意した内容は「示談書」や「合意書」と言った書面にして、署名押印させ、証拠化することもポイントです。

示談書には主に以下の内容を盛り込みます。

  • 不倫の事実を認めること
  • 慰謝料金額と慰謝料の支払方法
  • 配偶者と別れることの約束
  • 配偶者との接触禁止、不倫の口外禁止などの禁止行為
  • 上記の示談の内容に違反した場合のペナルティ

このように、示談によって別れさせることで、違法性や倫理違反のリスクなく、不倫相手を破局させることもできるのです。

こうした交渉は、弁護士の方が相手に本気度が伝わる上、適切な内容で進めてもらえることが多いです。まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

別れさせ屋の違法性を弁護士に相談するメリット・デメリット

夫や妻と不倫相手の関係を終わらせるのに、別れさせ屋に頼むことを考えている方が、別れさせ屋の違法性を弁護士に相談するメリットとデメリットをご紹介します。

弁護士に相談するメリットとしては、次のようなものがあります。

  • 別れさせ屋に頼むよりも違法性のリスクが少ない方法のアドバイスを受けられる
  • 不倫相手に慰謝料を請求する際のアドバイスを受けられる
  • 配偶者と不倫相手を別れさせる示談のアドバイスを受けられる
  • 別れさせ屋を依頼する際のリスクの説明を受けておくことができる

また、実際に依頼した場合は、以下のようなこともしてもらえます。

  • 不倫相手や配偶者とご自身に代わって交渉してもらうことができる
  • 示談書を代わりに作成して示談交渉も依頼できる
  • 慰謝料の請求などがもめた場合は、調停や裁判の手続きを任せられる
  • 調停や裁判になった場合に代わりに出廷してもらえるので生活への影響を抑えられる

一方、デメリットとしては、次のようなものが考えられます。

  • 法律相談料がかかる場合がある(相場:1時間1万円)
  • 依頼すると弁護士費用がかかる
  • 別れさせ屋に頼むと、ご自身の関与は知られずに済む場合があるが、依頼するとご自身が不倫を知っていることが相手に知られる

まとめ

今回は別れさせ屋が違法になる基準についてのご説明や、別れさせ屋以外に不倫相手と配偶者との関係を破局させられる方法について解説しました。
特に、夫婦関係が問題になる場合は、別れさせ工作が公序良俗で無効になるかの判断は厳しくなります。

また、別れさせ屋が悪質な場合は、別れさせ工作の成功・不成功以外にも、ゆすりたかりや法外な費用の請求などのリスクを被る場合があります。

ご説明のように、別れさせ屋への依頼以外にも、不倫相手と配偶者を別れさせられる方法はあります。別れさせ屋への依頼は最後の手段と考えて、まずは専門家である弁護士にお気軽に相談してみることをおすすめします。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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