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不倫発覚で暴力を振るわれた場合の離婚や慰謝料請求

不倫が配偶者に発覚してしまい、その際に暴力を振るわれてしまったとお悩みではありませんか?
不倫が発覚してから暴力が続いているというケースもあるでしょう。

不倫をしてしまったことで自分に非があるということは分かっていても、暴力を受ければ離婚や慰謝料について考える方も多いはずです。
今回は、不倫発覚で暴力を振るわれた際の離婚や慰謝料について解説します。

発覚で暴力を振るわれた場合の暴力の種類

不倫をしたことで配偶者に暴力を振るわれてしまった場合、暴力の理由は不倫であったとしても暴力自体は許せられるものではありません。

配偶者や恋人など親密な関係にある人から受ける暴力は「DV(ドメスティックバイオレンス)」と呼ばれています。
DVには次のような種類があります。

  • 身体的暴力
    殴る、叩く、蹴る、突き飛ばす、首を絞めるなど
  • 精神的暴力
    暴言を吐く、ののしる、無視する、脅迫するなど
  • 経済的暴力
    生活費を渡さない、お金を取り上げる、借金を負わせるなど
  • 性的暴力
    性的行為を強要する、避妊に協力しないなど
  • 社会的隔離
    人間関係や行動を制限し、相手を独占しようとする
  • 子供を使った暴力
    子供の前で誹謗中傷する、子供に配偶者の悪口を吹き込む、子供に危害を加えると脅す

身体的な暴力だけではなくさまざまな種類の暴力があり、暴力を振るわれれば後遺症やストレスとして残るようなケースもあります。

また、子供がいる場合には、子供が直接暴力を受けていなくても、目の前で暴力を見ることによって成長に影響を与える可能性もあると考えられます。

不倫発覚で暴力を振るわれた場合の離婚

不倫発覚によって配偶者に暴力を振るわれた場合、離婚を考える方も多いでしょう。
不倫発覚で暴力を振るわれた場合に離婚することは出来るのでしょうか?

(1)離婚の種類について

離婚には「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3種類があります。
離婚する場合には、協議離婚から離婚を試みることが多いです。

協議離婚は本人同士の話し合いによって離婚するものであり、互いの同意があれば離婚が成立します。
離婚条件についても本人同士で話し合って決めることが可能ですが、離婚後にトラブルにならないようにするためにも離婚公正証書として書面化しておくべきです。

協議離婚で離婚の同意が得られない場合には、調停離婚や裁判離婚を行うことになります。
暴力が原因で離婚をしたいという場合には、離婚の話し合いが難しいことから調停離婚や裁判離婚で離婚を進めるケースも珍しくありません。

調停離婚は家庭裁判所にて行われるもので、調停員を交えて話し合いを行う方法です。
調停離婚でも合意が得られない場合に、裁判離婚になります。

(2)不倫も暴力も法定離婚事由になる

協議離婚や調停離婚までは離婚理由は問われませんが、裁判になると離婚理由が問われることになります。
裁判で離婚をする場合には、民法770条に定められた法定離婚事由が必要です。

そして、不倫も暴力もどちらも法定離婚事由として認められます。
そのため、配偶者から不倫したことで離婚を求められる可能性もありますし、配偶者から暴力を受けたことを理由に離婚を求めることもできます。

不倫発覚で暴力を振るわれた場合の慰謝料請求

配偶者に暴力を振るわれれば、離婚だけではなく慰謝料請求についても考えるものです。
しかし、不倫をしていることが原因の暴力なので慰謝料請求できるのか分からないと悩んでいる方もいると思います。

不倫発覚で暴力を振るわれた場合の慰謝料はどのようになるのでしょうか?

(1)配偶者から慰謝料請求される

配偶者以外の異性と肉体関係を持つことを法律上では不貞と呼び、不貞は不法行為です。
不法行為には慰謝料請求をすることができ、民法709条にも不法行為は故意や過失があれば慰謝料請求できるという内容が定められています。
そのため、不倫をしたことにより配偶者から慰謝料請求をされる可能性があると考えられます。

(2)暴力を振るわれたことへ慰謝料請求できる

配偶者から暴力を受けた場合、肉体的苦痛や精神的苦痛を受けたとして配偶者に慰謝料請求することができます。
暴力は他人の身体を侵害するものとして不法行為に該当します。
慰謝料の金額は暴力の回数や悪質性、期間などで左右されます。

(3)慰謝料は合意相殺できる

不倫発覚で暴力を振るわれた場合、不倫をした側にも暴力を振るった側にも非があることになります。
つまり、双方に慰謝料の請求権が生じるのです。

この場合、相手の合意を得ずに慰謝料を一方的に相殺することは出来ませんが、互いの合意が得られれば相殺することができます。
このことを「合意相殺」と言い、民法509条にも悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務は相殺することが許されています。

そのため、互いに慰謝料請求権を持っている状況であり、互いに慰謝料を相殺する意思があれば合意相殺することができます。

不倫慰謝料を支払わなくてもいいケース

不倫発覚で暴力を振るわれた場合、不倫したことに対して慰謝料を請求される可能性があります。
しかし、不倫慰謝料を支払わなくてもいいケースもあります。
配偶者に慰謝料請求をされた場合には、まず慰謝料を支払わなくてもいいケースに該当しないか確認しましょう。

(1)肉体関係がない

法律上の不倫は、「配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと」を指します。
そのため、相手と肉体関係がない場合であれば不倫だと認められず、慰謝料を支払わなくてもいい可能性が高いです。

異性とメールのやり取りや、何度がデートをした、キスなどのスキンシップをしたというだけでは法律上の不貞行為には該当しないでしょう。

ただし、肉体関係がなくても相手と深い関係にあると判断されれば不貞行為だと認められるケースもあります。

(2)不倫をした時には夫婦関係が破綻していた

不倫をした時にはすでに夫婦関係が破綻していたような場合にも慰謝料は発生しません。
夫婦は結婚生活の平和が法律上で守られていますが、すでに夫婦関係が破綻している場合には法律上守られるべき利益がなくなっていると考えられます。

夫婦関係が破綻していると認められる状態とは、長期間別居しているような場合や、互いに夫婦関係の修復の意思がない場合、DVやモラハラを受けているような場合が該当します。

不倫発覚で暴力を振るわれたものの、その以前から暴力があった場合には夫婦関係が破綻していたと考えられます。

(3)消滅時効が完成している

不倫の慰謝料請求には民法724条に定められた時効があります。
配偶者が不倫および不倫相手を知った時から3年間、もしくは不倫が始まってから20年間が時効です。

それ以降に慰謝料請求された場合には時効が成立しているため、慰謝料を請求する権利は消滅しています。

不倫相手の配偶者からも慰謝料請求される可能性がある

不倫慰謝料は配偶者だけではなく、不倫相手が結婚している場合には不倫相手の配偶者からも慰謝料請求をされる可能性があります。

ただし、慰謝料を支払わなくてもいいケースや、求償権という権利を行使できるようなケースもあります。

(1)故意・過失がなければ支払う必要はない

不倫をした側に故意・過失がない場合、法律上の慰謝料請求権は発生しないため、慰謝料を支払う必要はありません。
「故意」とは不倫をわざとしていたことを指し、不倫相手が既婚者であることを知っていた場合です。

また、「過失」とは注意していれば相手が既婚者であることに気付くことができたものの、不注意があったことを指します。

つまり、不倫相手が既婚者であることを知らずに肉体関係を持ち、その後も既婚者であることを知り得ないような状況であれば故意や過失がないと判断されます。

(2)権利を侵害していなければ支払う必要はない

不倫相手の配偶者から不倫慰謝料を請求されても、その配偶者の権利を侵害していない場合には慰謝料を支払う必要はありません。
これは、不倫相手がすでに不倫を始めた時には夫婦関係が破綻していた場合や、離婚していた場合などが該当します。

夫婦関係が破綻していた場合や離婚していた場合には、法律上で守られるべき夫婦の権利が消滅していることになります。

そのため、慰謝料を請求する権利は不倫相手の配偶者に発生することはなく、慰謝料請求されたとしても支払わなくてもいいと考えられます。

(3)求償権を行使できる場合がある

不倫とは不倫をした当事者二人の共同不法行為であり、連帯して責任を負わなければならないと法律上では考えられています。
そして、慰謝料請求をされた側には「求償権」という権利が存在し、自身の責任を超過する慰謝料を支払った場合には不倫相手に超過部分の支払いを求めることができます。

例えば、不倫慰謝料が300万円だった場合、連帯債務として不倫した2人にはそれぞれ150万円の債務が生じます。
しかし、一人で300万円を支払っていた場合、不倫相手の債務負担を支払っていることになります。

その場合には不倫相手に支払い過ぎていた債務として150万円の返還請求をすることができます。
この権利が求償権であり、求償権を行使することで慰謝料の金額を最終的に抑えられる可能性があります。

不倫発覚で暴力を振るわれた時にすべきこと

不倫発覚で暴力を振るわれた場合、離婚や慰謝料請求以外にはどのようなことをすべきなのでしょうか。
ご自身の身を守るためにも、迅速かつ適切に対処するようにしましょう。

(1)暴力が振るわれた証拠を残しておく

暴力が振るわれた場合、まずは暴力を受けたという証拠を今後のために残しておきましょう。
証拠があれば、離婚や慰謝料請求の際に暴力があったことを立証できます。

証拠としては、暴力が行われた録音や録画、暴力を受けた際に生じた傷やあざ、暴力を原因とするケガや障害の診断書、暴力について詳しく記した日記やメモなどが挙げられます。

ただし、証拠を残すことや証拠を探す際には相手にバレないようにしましょう。
相手にバレてしまうと逆上してしまい、更に暴力を受ける恐れがあります。

(2)身の危険を感じる場合には避難する

暴力を振るわれ、身の危険を感じる場合はすぐに避難するようにしましょう。
何よりも身の安全を確保することが大切です。

友人や両親などの家に避難することも有効ですが、居場所を知られないようにするにはシェルターなどを利用することできます。
公的なシェルターは各都道府県に設置されており、民間のシェルターなどもあるので、一時的な避難が可能です。

(3)警察に被害届を提出することを考える

暴力は犯罪ですので、身の危険を感じる場合には警察に被害届を提出することを考えましょう。
身体的暴力は暴行罪や傷害罪に該当し、精神的暴力は脅迫罪に該当する可能性があります。

さらに強く処罰を求めたい場合には告訴することもでき、告訴されれば警察による通常捜査が開始されます。

警察に被害届を出すことは処罰を求めることだけではなく、今後離婚や裁判所への保護命令の申し立てを行う際の証拠にもなります。

(4)裁判所に保護命令を出してもらうことを考える

警察に相談することや、一時的に避難したりするなどして対策をしても配偶者からの暴力に悩まされているという場合には裁判所に保護命令を申立てることを検討しましょう。

保護命令と申立てることで法的に身を守ることができるようになります。
保護命令にはいくつかの種類があります。
「接近禁止命令」は6カ月間住居や職場など被害者の身辺へのつきまといを禁止する命令で、「退去命令」は2カ月間住居から退去して接近を禁止する命令です。

また、「電話禁止命令」や「被害者の子供への接近禁止命令」などもあります。
保護命令は暴力被害を受けた本人しか申立てを行うことは出来ず、警察や配偶者暴力相談支援センターなどに相談している場合に行うことができます。

(5)慰謝料請求や離婚について考える

暴力を振るわれた理由が不倫であり、自身に非がある場合であったとしても暴力は許されるものではありません。
ご自身の身の安全を確保できたら、慰謝料請求や離婚について考えましょう。
暴力は法的な離婚事由に該当し、慰謝料請求することも可能です。

(6)弁護士に相談する

不倫発覚で暴力を振るわれた場合に離婚や慰謝料請求を行う場合には、弁護士に相談しましょう。
暴力を受けた場合、離婚や慰謝料請求を申し出ることで更なる暴力を受ける可能性もあります。

弁護士に依頼すれば交渉なども任せることができるので直接連絡を取ることや顔を合わせることも避けられます。
安全かつスムーズに手続きを進めるためにも専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。

まとめ

今回は不倫発覚で暴力を振るわれた場合の慰謝料や対応について解説しました。
不倫をしたことで配偶者や不倫相手の配偶者から慰謝料請求される可能性はありますが、暴力を振るわれた場合には配偶者に対して離婚や慰謝料を請求することができます。
暴力を受けた場合には弁護士に相談すると同時に、ご自身やお子様の身の安全を確保することを優先してください。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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