不倫相手に内容証明郵便を送る目的と記載事項・注意点や効果的な方法
不倫相手に対して行動を起こすなら、内容証明郵便を送付するのが有効です。面と向かって怒りをぶつけたりいやがらせをしたりしたいとは思いますが、逆に訴えられる可能性があります。不倫問題を解決するための有効手段とはいえません。
本記事を読んでいる方は「不倫相手に何らかのアクションを起こしたい」と考えている方が多いのではないでしょうか。今回はそんな方に向けて、不倫相手に内容証明郵便を送る目的や記載事項、注意点などについて解説していきます。
効果的な送り方や送ったあとの対応についても解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
内容証明郵便とは
みなさんの中に、内容証明郵便を送ったことがあるという方はいらっしゃいますか? 内容証明郵便とは、郵便局が「誰が、誰に、いつ、どのような内容の文書(手紙)を送ったか」ということを証明してくれる郵便のことです。
内容証明郵便を出すには、普通郵便にプラスして千数百円の費用がかかります。それでも、不倫相手に内容証明郵便を送ることには、次のようなメリットがあります。
- 裁判時に「こういう内容の手紙を送った」と証拠として利用できる
- 不倫相手に妻(夫)としての本気度を示せるので相手が要求に応じやすい
- 相手にプレッシャーを与えられるので不倫トラブルの早期解決が期待できる
- 慰謝料請求の時効が近づいている場合には時効を一旦中断できる
中でも、「時効の中断」のメリットは重要です。というのも、不倫相手に慰謝料を請求する権利は、不倫を知った日から3年で時効にかかって消滅します。もし、気付いたら時効直前だったようなケースでは、まず内容証明郵便を送りましょう。内容証明を送ってから6か月以内に裁判を起こさなければいけませんが、時効が来ると慰謝料を請求できなくなるので、時効を一旦中断できることのメリットは大きいと言えます。
不倫相手に内容証明郵便を送る目的
不倫相手に対して内容証明郵便を送ると、ご自身の要求を伝えられます。慰謝料請求だけが目的だと思われる方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。内容証明郵便を送る目的は、慰謝料請求を含めて主に2つあります。
ここでは、内容証明郵便を送る目的について解説していきます。書類に記載する内容については後ほど詳しく解説するので、まずは目的を確認しましょう。
(1)交際中止を要求
内容証明郵便を送れば、不倫相手に交際中止を要求できます。配偶者と離婚しない場合は、不倫相手と別れさせて夫婦関係の改善を目指しましょう。
書類に記載する内容は以下のとおりです。
- 不倫の事実
- 不貞行為が法律に違反すること
- 配偶者との交際中止を請求すること
3つの内容を記載しておけば、不倫相手に「妻(夫)が交際中止を要求した」と証明できます。交際相手に配偶者がいる、別れてほしいと要求されたことを不倫相手が「知らなかった」とはいえなくなります。
(2)不貞行為の慰謝料を請求
内容証明郵便は慰謝料請求目的で送るすることが多いです。書類には慰謝料請求する旨に加えて、不倫の事実や不貞行為が法律に違反することを記載します。
そうすれば、不法行為が原因で精神的に傷ついたとして、精神的苦痛に対する損害賠償である慰謝料を請求できます。また、先ほど解説したとおり慰謝料請求の時効を6ヶ月中断できるので、不倫相手の素性が発覚したら内容証明郵便を送っておきましょう。
内容証明郵便の記載事項
内容証明郵便に記載する内容について解説します。内容証明郵便を送ると、不倫相手にプレッシャーがかかり要求に応じる可能性があります。裁判を起こさなくても、示談交渉時に不倫問題を解決できるかもしれません。
これから解説する内容を書類に記載して、ご自身の要求を不倫相手にしっかり伝えておきましょう。
(1)不貞行為の事実
まずは、配偶者と不倫相手が不貞行為を働いた事実について記載します。記載する内容は以下のとおりです。
- いつから (令和◯年○月○日頃から)
- どこで (不倫相手の家など)
- 誰と (配偶者の名前)
- 不貞行為を働いたこと
不貞行為を働いたことについて、わかる範囲で構わないので必ず記載しましょう。万が一、不倫相手が内容証明郵便を無視して裁判に発展した場合、法律上交際中止や慰謝料を請求するには不貞行為を働いた事実が必要だからです。
配偶者に慰謝料請求する場合も、同じように不貞行為の事実を記載して送付します。
(2)不貞行為の違法性
次は不貞行為が法律に違反することについて記載します。不貞行為は民法709条の不法行為に該当する行為です。ですので、書類には「不貞行為は、民法709条の不法行為に該当します」と記載しましょう。
あわせて「不貞行為によって婚姻関係が破綻して、精神的苦痛を与えられました」と記載しておきましょう。そうすれば先ほど解説したとおり、不法行為が原因で精神的に傷ついたとして慰謝料を請求できます。
(3)要求内容
不倫相手に要求する内容について記載しましょう。配偶者と離婚するつもりがなく、夫婦関係の改善を目指したいなら「不貞行為の相手方である (配偶者の名前) との交際中止を請求する」と記載してください。
慰謝料を請求する場合は「不法行為に基づく損害賠償として慰謝料金 (要求する金額) 円を請求する」と記載しましょう。要求できる金額はケースによってさまざまですが、離婚しない場合は50万~200万円、離婚する場合は100万~300万円が相場です。。
金額は漢数字か数字のどちらかで記載してください。読み間違いを防ぐため、漢数字で「金○○円」と記載するのが一般的です。金額を記載したら、支払方法や支払期限も記載します。銀行振込を希望する場合は、振込先の口座情報についても記載しましょう。
(4)要求に応じてもらえない場合の法的措置
内容証明郵便には、不倫相手が要求に応じなかった場合についても記載します。
慰謝料請求をする際は「期間内に全額の支払がない場合は、直ちに法的措置をとる」といった内容を記載しておきましょう。配偶者との交際中止を要求する際も、応じない場合は法的措置をとる旨を記載しておいてください。
そうすれば、不倫相手がご自身の要求に応じやすくなるかもしれません。
内容証明郵便の記載・送付時の注意点
内容証明郵便の記載、送付時の注意点について解説します。記載内容や送付方法に誤りがあると、逆に訴えられたり効果がなかったりするかもしれません。これから解説する内容を確認して、不倫相手に書類を送付しましょう。
(1)事実以外を記載しない
書類には事実以外を記載しないようにしてください。記載するべきではない内容は以下のとおりです。
- 事実に反すること
- 誹謗中傷すること
- 脅迫すること
事実に反していたり不倫相手を誹謗中傷するような内容を記載したりすると、逆に名誉毀損で訴えられるリスクがあります。また、不倫相手を脅迫するような内容を記載した場合、脅迫罪などで訴えられる可能性があります。
「支払わなければ不倫を職場にバラす」「ネットですべてを公表する」など、不倫相手を脅すような内容は記載しないでください。事実以外を記載すると、ご自身の要求を不倫相手に飲ませられません。ですので、書類を作成する際は事実のみ記載してください。
(2)保管用を含めて3通用意
内容証明は郵便局の保管用を含めて3通用意しましょう。ご自身、不倫相手、郵便局の保管用に、1通ずつ作成してください。
書類が2枚以上になった場合は、つなぎ目に契印(割印)します。ホチキスなどでとじたつなぎ目に、印鑑を押しましょう。契印する際の印鑑には、シャチハタを使用しないでください。
内容証明を作成する際は、A4の用紙を用意します。文章はテンプレートをダウンロードして、パソコンで作成するかボールペンなどの消せないペンを用いて作成しましょう。書類のタイトルには「通知書」と記載してください。
(3)文字数や行数に制限がある
書き方 | 行数(用紙一枚あたり) | 文字数(一行あたり) |
---|---|---|
縦書き | 26行以内 | 20文字以内 |
横書き | 26行以内 | 20文字以内 |
横書き | 20行以内 | 26文字以内 |
横書き | 40行以内 | 13文字以内 |
内容証明は記載できる行数や文字数に制限があります。縦書きの場合は、用紙一枚に26行以内、一行に20文字以内です。横書きの場合は3パターンあるため、バランスで選んでください。
なお、句読点は一文字に含まれ、空白スペースは含まれません。
(4)配達証明付きで発送
完成した書類は配達証明付きで発送してください。配達証明とは、郵便物について日本郵政が証明してくれる制度のことです。郵便局の窓口で「配達証明付内容証明郵便で」と伝えましょう。
郵便局に持参する物は以下のとおりです。
- 内容証明3通
- 内容証明を入れる封筒3部
- 印鑑(シャチハタ不可)
- 内容証明の費用
内容証明は封筒に入れずに持参してください。内容証明一通分の費用は以下のとおりです。
サービス内容 | 金額目安 |
---|---|
内容証明郵便 | 430円 |
郵便(定型25gまで) | 82円 |
一般書留 | 430円 |
配達証明 | 310円 |
内容証明を送付する際は、内容証明郵便に対応している郵便局を探しましょう。
日本郵政のホームページで、利用したい郵便局が内容証明郵便に対応しているか確認できます。
内容証明郵便の送付先
内容証明郵便の送付先について解説していきます。
状況に応じて送付先が異なるので、送付前に確認しておきましょう。
(1)自宅の住所がわかる場合は自宅
不倫相手の自宅の住所がわかる場合は、自宅に送付してください。次の項目で解説しますが、不倫相手の職場に送付すると訴えられるリスクがあります。もし、自宅の住所がわからない場合は、弁護士事務所や探偵事務所に調査を依頼しましょう。
(2)会社に送る場合の注意点
先ほど解説したとおり、不倫相手の職場に送付すると逆に訴えられるかもしれません。不特定多数の相手に不倫の事実を提示して、名誉を毀損したことになるからです。自宅の住所がわからず職場に送らざるを得ない場合は、前もって弁護士に相談しておきましょう。状況に応じた対策方法をアドバイスしてもらえます。
内容証明を送った後の対応
内容証明を送ったあとの対応についても解説しておきます。不倫相手によって内容証明に対する反応はさまざまです。素直に要求を承諾する方がいれば、無視する方もいるかもしれません。
また、回答書を送付してきた場合の対応についても解説するので、各パターンの対応方法を確認しておきましょう。
(1)要求が承諾された場合は示談書を作成
不倫相手が要求を承諾した場合は、「示談書」を作成します。示談書は和解だけでなく、不倫相手が要求を承諾したことを証明するためにも必要です。あとから「やっぱり要求を承諾しない」といわせないためにも、示談書を作成しておきましょう。
示談書に記載する内容は以下のとおりです。
- 不倫の事実
- 不倫を認めたこと
- 要求を承諾したこと
- 慰謝料の金額、支払方法、支払日
- これ以上慰謝料を要求しないこと
- 交際中止を約束すること
- 約束を破った場合の違約金について
- 回答期限
不倫の事実や要求内容、破った場合のペナルティなどについて記載し、ご自身と不倫相手が署名捺印してお互いに保管します。具体的な作成方法については、以下の記事を参考にしてください。
(2)無視された場合の対応
不倫相手が内容証明郵便を無視した場合は、法的措置を検討しましょう。
民事事件の場合、いきなり裁判を起こすことはせず、まずは裁判所に調停の申し立てをすることになります。調停とは、調停委員という第三者を間に入れて行う話し合いのことです。ここで話し合いがまとまって「調停調書」が作成されると、判決と同じ強い効力を持つことになります。調停でも話し合いがまとまらなければ、審判か裁判で争うことになります。
審判は、裁判所が離婚について判断する手続きで、裁判より簡単な手続きです。非公開なので秘密で離婚できるというメリットはありますが、一方が結果に反対すると結局裁判になるので、あまり利用されていません。
裁判は、裁判所が夫婦の合意がなくても強制的に離婚について決定するものです。さまざまな事情を考慮して、場合によっては離婚を認めないという判断が下されることもあります。ですので、配偶者が不倫相手と不貞行為を働いた証拠をしっかり集めておきましょう。
(3)回答書が送られてきた場合の対応
不倫相手が回答書を送ってきたら、記載内容を確認しましょう。記載されている内容は、基本的に以下のとおりです。
- 不倫の事実があったか
- 不倫についての謝罪
- 慰謝料の金額について
- 示談書に関する内容
不倫の事実があったにもかかわらず相手が否定してきた場合は、法的措置を検討しましょう。経済的な事情で、分割払いや慰謝料の減額交渉をしてくる可能性もあります。裁判を起こさない限り慰謝料の支払いを強制できないため、分割払いや減額交渉に応じざるを得ないこともあります。
また、相手が示談交渉時に弁護士を立ててくるかもしれません。示談交渉時にうまく対応できるか不安な方は、弁護士事務所に相談、依頼してみましょう。
内容証明の効果を高めるポイントは?
内容証明郵便を普段から受け取る機会は多くはないでしょう。それだけに、不倫相手に内容証明を送ることはインパクトを与え、不倫された妻(夫)の本気度を示すうえで有効ですが、なかにはそれでも無視したり、誠実に対応をしない不倫相手もいます。
そこで、内容証明郵便の効果をより高めるためには、弁護士名で送る方法が効果的です。妻(夫)側が弁護士を付けたとなれば、一層相手に本気度が伝わり、本当に裁判で訴えられるかもしれないと考える人も多く、裁判に至る前に慰謝料の支払いや不倫関係の解消に応じる可能性が高まります。
また、内容証明郵便は弁護士に代わりに書いてもらえるため、内容にも間違いがありません。自分で書くと書式を間違えたり、法的に効力のない文章や脅迫に該当しかねない文章になることもあるので、それを避けるためにも、弁護士名で内容証明郵便を送る、弁護士に内容証明の作成を依頼することには大きな効果があると言えるでしょう。
なお、稀にネットなどで見た弁護士名を勝手に使って文章を作成する人がいますが、それは逆に犯罪や損害賠償を請求される可能性がある行為ですので決してやってはいけません。弁護士名で内容証明を出すためには、まずは法律相談などで弁護士に相談し、依頼するかどうかを決めましょう。
まとめ
不倫相手に対して慰謝料や不倫関係の清算を依頼するには、裁判を起こすしかないと思っていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。そこまでいかなくても、内容証明郵便を送ることで事態の解決につながるケースは少なくありません。
とはいえ、内容証明郵便の送り方には、ご説明したようなさまざまなルールがあり、文章の内容も法的根拠を示して書かなければいけないなど、ご自身でするには難しい場合もあります。不倫相手への連絡でお悩みの方は、まずは弁護士にお気軽にご相談されてみてはいかがでしょうか。