不貞行為はどこから?不貞行為になる行為と慰謝料相場、証拠の集め方
「夫や妻が不倫をした場合、慰謝料や離婚を請求できる」
「不貞行為と聞くが意味が分からない」
「不貞行為とは具体的にどのような行為?その定義は?」
「不倫や浮気がイコール不貞行為という意味?」
このページを見ているあなたはこのような悩みをお持ちでしょう。
民法上、「不貞行為」は離婚原因のひとつと定められており、不法行為にあたるものとして慰謝料を請求することが可能です。しかし、具体的にどのような行為が「不貞行為」にあたるかは、条文上は明確とはいえません。
また、慰謝料についても、どのぐらいの額がもらえるのか、どのような証拠があれば請求が認められるかが気になるという方もいらっしゃるでしょう。
そこで、「不貞行為」にあたるのはどのような行為か、不貞行為の慰謝料に相場はあるのか、慰謝料を請求するための証拠はどのようなものかなどを詳しく解説します。
不貞行為とは
(1)不貞行為の定義・意味
夫婦の一方は、配偶者に「不貞な行為」があったとき、離婚を請求することができます(民法770条1項1号)。
しかし、前述した通りどのような行為が「不貞行為」にあたるかについては、民法に特に定めはありません。
この点について、過去の裁判例は、配偶者のある者が、自由意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこととしています。
(2)キスやデートで不貞行為になる?
(1)で紹介した判例の定義によれば、配偶者以外の異性とデートをしたり、キスをしたりした程度では、不貞行為にあたりません。
(3)不貞行為は犯罪?
不貞行為があれば離婚を請求できるとされていることから、夫婦はお互いに、配偶者以外の異性と性的関係を持たない義務を負うことがわかります。これを貞操義務といいます。
お互いに貞操義務を負うということは、配偶者に対して、自分以外の異性と性的関係を持たないよう要求する権利があるといいかえることができます。
不貞行為は、この権利を侵害するものですから、民法上の不法行為にあたります。そのため、不貞行為で慰謝料を請求することができるのです。
それでは、刑事上の責任はどうでしょうか。旧刑法には「姦通罪」という犯罪がありました。夫のある女性が、夫以外の異性と性的関係を持った場合、女性と不貞行為の相手方は、2年以下の懲役に処すると定められていたのです。
しかし、戦後の刑法の改正によって、姦通罪は廃止されました。したがって、現在は、不貞行為は犯罪にはあたりません。
(4)1回だけでも不貞行為になる?
判例の不貞行為の定義からすると、不貞行為の回数は問われません。したがって、1回限りでも不貞行為にあたり、慰謝料を請求することも可能です。
ただし、慰謝料の額はそれほど多くならないと考えられます。その理由については、後ほど詳しく解説します。
なお、裁判所は、不貞行為がある場合であっても、一切の事情を考慮して婚姻の継続を相当と認めるときは、離婚の請求を棄却することができます(民法770条2項)。
したがって、不貞行為が1回だけの場合は、離婚の請求までは認められないこともあると考えられます。
不貞行為を理由に離婚・慰謝料請求できる・できない事例
続いては、具体的にどのようなケースが離婚・慰謝料請求できるのか、できないのかを解説します。
先ほど解説したとおり、夫(妻)が配偶者以外の異性と仲良くしているだけでは、不貞行為を働いたことになりません。不貞行為を働いていなければ、加害者にご自身の要求を飲ませるのは困難です。
ですので、夫(妻)の行動が不貞行為に該当するのかを確認しておきましょう。
(1)離婚・慰謝料請求できる
①配偶者以外の異性と自由意思に基づいて 肉体関係を持つ
夫(妻)がご自身以外の異性と自由意思に基づいて肉体関係を持つ行動は、不貞行為に該当します。そのため、不倫の被害者であるあなたは、加害者である夫(妻)や不倫相手に要求を飲ませられます。
②肉体関係を持ったと推認できる行為
夫(妻)がご自身以外の異性と自由意思に基づいて肉体関係を持ったと推認できる行動も、不貞行為に該当する可能性があります。
たとえば、夫(妻)が不倫相手とラブホテルに入ってなかなか出てこないケースです。肉体関係を持つために利用する建物で2人きりになるため、不貞行為を働いている可能性が高いといえます。
(2)離婚・慰謝料請求できない
①不貞行為を働いたが時効を迎えている
不貞行為を働いた夫(妻)に対して、離婚はいつでも請求できます。しかし、不倫慰謝料の請求権には時効があるため、いつでも請求できるわけではありません。
不倫慰謝料を請求する権利の時効は、以下のとおりです。
- 不倫相手の素性を知ってから3年
- 不倫相手の素性が不明な場合は除斥期間(権利が消滅するまでの期間)20年
不倫相手の素性を知っているかどうかで、時効の期間が変わります。不倫相手の情報を入手したら、なるべく早めに不倫問題の解決に向けて行動を起こしましょう。
②手を繋いだりキスをしたりする
不貞行為の定義・意味 で紹介した判例の定義によれば、配偶者以外の異性とデートをしたり、キスをしたりした程度では、不貞行為にあたりません。夫(妻)が不貞行為を働いているわけではないからです。
ですので、夫(妻)が不倫しているかもしれない場合は、不貞行為を働いたと判断、推認できる証拠を集めましょう。
③風俗店を1度だけ利用する
風俗店の利用は、不貞行為に該当する可能性があります。商売とはいえ、夫(妻)が配偶者以外の異性と肉体関係を持つことになるからです。
しかし、風俗店を1度利用しただけでは、裁判で裁判官から離婚・慰謝料請求を認められる可能性が低いです。ですので、夫(妻)が風俗店を利用していると判断できる証拠を、複数集めておきましょう。
④不仲で別居中に不貞行為を働く
夫婦関係の悪化が原因で別居している最中に夫(妻)が不貞行為を働いた場合は、離婚や慰謝料を請求できません。不倫が原因で、夫婦関係が破綻したわけではないからです。
ただ、夫婦が不仲で長期間別居している状況自体は、離婚事由になり得ます。ですので、別居中の夫(妻)と離婚したい方は、離婚請求できるかどうかを弁護士に相談してみましょう。
⑤配偶者が強姦されたケース
夫(妻)が強姦されたり脅されたりしてご自身以外の異性と肉体関係を持った場合、離婚や慰謝料を請求できません。自由意志に基づいて不貞行為を働いていないからです。
本記事では、離婚・慰謝料請求できない事例の一部を紹介しています。ですので、さらに詳しく知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
不貞行為による慰謝料の相場と増額させる要素
(1)慰謝料の相場
慰謝料の額の決め方について、法律には特別な規定はありません。
したがって、相手方と合意ができれば、いくらでもいいということになります。
ただし、過去の裁判例では、50万~300万円の範囲で慰謝料が決められることが多いようです。
相手方と話し合いをする場合、この範囲を目安にするといいでしょう。
(2)慰謝料を増額させるには
過去の裁判例を分析すると、裁判所は慰謝料の額を決めるにあたって、次のような事情を考慮しているものと考えられます。
①不貞行為そのものに関する事情
- 不貞行為の期間が長いか短いか
- 不貞行為の回数が多いか少ないか
- 不貞行為をして配偶者をかえりみない
- 不貞行為の相手方との間に子どもがいる
など
不貞行為の期間が長いほど、回数が多いほど、慰謝料が高額になりやすいといえます。
また、不貞行為が原因で配偶者に生活費を渡さなくなるなど、家庭をかえりみないようになった場合や、不貞行為の相手方との間に子どもがいる場合も、慰謝料が高額になりやすいといえます。
②不貞行為によって生じた結果に関する事情
- 不貞行為が原因でうつ病になった
- 不貞行為が原因で別居した
- 不貞行為が原因で離婚した
など
不貞行為によって精神的苦痛を受けただけでなく、うつ病などの精神疾患をわずらったり、別居や離婚に至ったりした場合には、慰謝料が高額になりやすいといえます。
③その他の事情
- 婚姻期間が長い
- 年齢が高い
- 不貞行為をした配偶者の収入・資産が多い
- 未成年の子どもがいる
など
不貞行為に限らず、これらの事情がある場合、慰謝料が高額になりやすいといえます。
不貞行為による離婚・慰謝料の請求に必要な証拠と集め方
(1)どのような証拠が考えられるか
不貞行為をしたことを理由として慰謝料請求ができるといっても、配偶者が不貞行為をしたことを素直に認めるとは限りません。
仮に認めたとしても、「1回だけだ」などと言って、できる限り慰謝料を少なくしようとすることもあるでしょう。ですから、慰謝料請求をするには、証拠が必要になります。
これまで解説したとおり、性的関係がなければ不貞行為とはいえません。
したがって、ここでいう証拠とは、性的関係があったことを推認させるものなければなりません。
具体的には、次のようなものが考えられます。
①写真、映像
たとえば、異性と一緒にラブホテルに出入りしている写真や映像などです。
このような写真や映像は、異性と性的関係をもったことを強く推認させる証拠になります。
ホテル内での裸の写真や映像があれば、性的関係があったことをより強く推認させるといえますが、そのような証拠が残っている場合は少ないでしょう。
②領収書など
また、ラブホテルの領収書や、ラブホテルに行ったことがわかるGPSの記録なども、異性と性的関係を持ったことを推認させる証拠になります。
③音声データ
不貞行為について配偶者に問い質した際、不貞行為を認めることもあります。後日、「そんなことは言っていない」と言われないように、話し合いをする際は録音しておくといいでしょう。
配偶者が自ら不貞行為を認めた音声データなどは、もちろん不貞行為の証拠になります。
④電話、メール、LINEなど
これに対して、電話、メール、LINEなどのSNSはどうでしょうか。これらのものから不貞行為が発覚することは珍しくありません。
しかし、くりかえし述べたとおり、性的関係がなければ不貞行為とはいえません。
単に相手に好意を寄せているとか、食事に行ったといった事情がうかがわれるだけでは、不貞行為を推認させるものとはいえません。
したがって、電話、メール、LINEなどのSNSは、一般的には不貞行為の証拠とまではいえないでしょう。
ただし、不貞行為があったことを推認させるような内容であれば、不貞行為の証拠となる場合もあります。
⑤探偵事務所や興信所が作成した報告書
ご自身で不貞行為の証拠を集めるのが困難な方は、探偵事務所や興信所に不倫調査を依頼してみましょう。
安全かつ的確に、証拠能力のある不貞行為の証拠を集めてくれるからです。
そして、探偵事務所や興信所が作成した不倫調査の報告書は、そのまま裁判時に不貞行為の証拠として提出できます。
より確実に不倫問題を解決したい方は、探偵事務所や興信所を頼ってみてください。
(2)どうすれば証拠を入手できるか
まず、自分で証拠を集めるという選択肢があります。配偶者の財布や鞄などの私物を確認する、携帯電話の通話履歴やメール、LINEなどを確認するといったことが考えられます。
確認ができた場合には、写真に撮るなどして証拠を保存する必要があります。
費用をかけず、今すぐにでも始められるのが自分でやる場合のメリットです。
しかし、証拠集めに関しては素人でしょうから、有効な証拠を集めることができるとは限らないというデメリットもあります。
とくに、ラブホテルに出入りする写真などの証拠を入手するには、継続的な調査が必要になるので、個人では難しいと言わざるを得ません。
費用はかかりますが、探偵や興信所等に依頼して、決定的な証拠を押さえることを検討してもいいでしょう。
配偶者の不貞行為を弁護士などに相談するメリット
不貞行為を理由に慰謝料請求をしたいと考えている場合、弁護士等の始業に相談することをおすすめします。
弁護士に相談や依頼をすることには、さまざまなメリットがあります。
代表的なものを紹介しましょう。
(1)証拠の集め方や慰謝料の目安についてアドバイスしてもらえる
自分一人では、どのようなものが不貞行為の証拠になるのか、自分のケースではどれぐらいの慰謝料がもらえるのかわからないという方が多いでしょう。
弁護士に相談すれば、事案に応じてどのような証拠があるか、どうすればその証拠を集められるか、慰謝料の目安はどのくらいかといったことについてアドバイスしてもらうことができます。
(2)自分では入手できない証拠を入手することができる
たとえば、携帯電話の通話履歴やメール、LINEのやりとりから、配偶者が特定の人物と不貞行為をしている可能性に気付いたとします。
共通の知人である場合は別として、個人ではその相手がどこの誰なのか、特定することは難しいでしょう。
これに対して、弁護士に依頼をすれば、弁護士会を通じて携帯電話会社に照会をかけ、携帯電話の名義人を特定できる場合があります。
このように、個人では入手できない証拠や情報を入手できることも、弁護士に依頼することのメリットのひとつです。
(3)自分で請求するより相手が支払いに応じやすい
弁護士に依頼をした場合、一般的に弁護士は内容証明郵便を送付して慰謝料を請求します。
ごく普通に生活してきた方は、弁護士名で内容証明郵便が送られてくることなどは経験がないでしょうから、それだけで大きなプレッシャーになります。
また、個人が請求する場合には、配偶者が交渉に応じず泣き寝入りさせようとすることが考えられますが、弁護士に依頼をすることで、こちらが本気で慰謝料を請求していることを配偶者に伝えることができます。
そのため、個人で請求する場合と比べて、配偶者が交渉や交渉の結果としての慰謝料の支払いに応じやすくなるのです。
まとめ
本ページでは不貞行為について解説しました。
本文で解説したとおり、不貞行為で慰謝料請求をする場合には、弁護士に依頼することが有益です。
不貞行為についてお悩みの方は、慰謝料請求に詳しい弁護士を探してはいかがでしょうか。