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  2. 親権を獲得するための方法

親権を獲得するための方法と獲得できなかった場合の面会交流について

夫(または妻)が不倫をしていたことがわかった場合、離婚を考える方は少なくありません。しかし、未成年の子どもがいる場合、「離婚をしても子どもとは離れたくない」、「親権が取れるか不安だ」という思いから、離婚に踏み切れない方もいらっしゃるでしょう。

そこで今回は、親権者を決める際の判断要素、親権を獲得するための方法、親権を獲得できなかった場合の対処法などについて詳しく解説します。

親権者はどうやって決めるのか?

(1)法律の規定はどうなっているか

まず、離婚の際の親権者の決め方について法律はどのように定めているのかを確認しましょう。実は、この点についての規定はそれほど多くありません。

民法819条
父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。
引用:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1#3023

夫婦の話し合いで離婚をする「協議離婚」の場合は、親権者も話し合いで決める、裁判所が離婚を認める「裁判離婚」の場合は親権者も裁判所が決めるというだけです。夫婦間の話し合いや裁判所の指定にあたってどのような事情を考慮するかについては、法律で細かく決められているわけではないのです。

(2)家庭裁判所の統計

ただし、一般には母親が親権者になるというイメージを持たれている方も多いでしょう。

裁判所は、取り扱った事件の内容等について統計をとっています。これを「司法統計」といいます。平成29年度の司法統計によれば、家庭裁判所における話し合いで離婚の合意をした「離婚調停」または調停に代わる審判で未成年の子どもの親権者を定めた事件のうち、父を親権者と定めたのが1,959件であったのに対し、母を親権者と定めは19,160件でした。

母親が親権者になることが多いというイメージは、間違いではないことがわかります。

親権を獲得するにはどうすればいい?

(1)裁判所が親権者を決める際に考慮される事情を理解する

未成年の子どもがいる夫婦が協議離婚をする場合、「離婚届」に親権者を記載しなければなりません。したがって、離婚すること自体は合意ができても親権者について協議がまとまらない場合には協議離婚はできません。離婚調停を利用して裁判所で話し合いをし、それでもまとまらない場合には離婚訴訟で裁判所が親権者を決めることになります。

このような親権者の決め方からすると、裁判所が親権者を決める際にどのような事情を考慮しているかを理解することが重要になります。裁判所が考慮している事情が分かれば裁判をした場合の結論が予測できるので、裁判前の話し合いにも影響します

それでは、裁判所は、親権者を決める際にどのような事情を考慮しているのでしょうか。「親権者はどうやって決めるのか?」で解説したとおり、法律では細かく定められていませんが、過去の裁判例の集積から、次のような事情を考慮していると考えられます。

①親側の事情

  • 子どもに対する愛情

子どもに対してどれだけ愛情を持っているかが重要なのは当然です。ただ、愛情は客観的に測れるものではないので、実際には次に挙げるこれまでの監護状況などを判断要素としているようです。

  • これまでの監護状況

これまで主に、どちらが子育てをしてきたかという事情は大きな判断要素になります。急に環境が変わるのは子どもにとって大きな負担になる可能性があるので、これまで主に監護をしていた者が引き続き親権者になりやすい傾向があります。

  • 離婚後の監護状況の見込み

離婚後の子どもの監護状況はどうなるかということも考慮されます。

たとえば、父がフルタイムで働き、母が専業主婦やパートをしていた場合、父が親権者になるときは仕事の間、子どもの監護をどうするか、母が親権者になるときは新たに仕事に就くとすればその間、子どもの監護をどうするかが問題になります。協力してくれる親族の有無等も考慮されます。

  • 経済状況・健康状態等

子どもの健全な発達のためには、収入が安定していることや監護者が心身ともに健康であることが望ましいといえます。

②子ども側の事情

  • 子どもの年齢

①の監護状況とも関連しますが、子どもの年齢が低いほど、母親が親権者となる場合が多いと言われています。

  • きょうだいの有無

きょうだいがいる場合、きょうだいを引き離さず、なるべく一緒に生活させるのが望ましいとされています。

  • 子どもの意向

どちらと一緒に生活したいのかについて、子どもの意向も無視できません。とくに、15歳以上の子どもに対しては、家庭裁判所はその意見を聴かなければならないとされています(家事事件手続法152条第2項)。
引用:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=423AC0000000052#851

  • 環境への適応

子どもが現在の環境にどれだけなじんでいるか、離婚後に環境が変わった場合にうまく適応できそうかということも判断の要素となります。

(2)証拠を集める

裁判所が、(1)で解説した事情を認定するには、証拠が必要になります。子どもの年齢やきょうだいの有無などは戸籍から簡単にわかりますが、監護状況などは客観的な証拠が乏しいことが少なくありません。日ごろから日記、母子手帳などで子どもの監護状況や子どもの様子などについて記録を残しておく必要があります

(3)弁護士に依頼する

親権者になるためにどのような事情を主張すればいいか、その主張を裏付けるにはどのような証拠が考えられ、どのようにすれば入手できるかといったことは、専門的な知識がなければなかなか判断ができません。そういった意味で、親権を獲得したい場合には、専門家である弁護士に依頼をすることが望ましいといえます。

不倫した配偶者から親権を確実に獲得するには?

離婚原因」が不倫の場合でも、「親権を獲得するにはどうすればいい?」で解説したことは基本的にそのままあてはまります。それに加えて、不倫についての証拠を集めることも重要です。

不倫は基本的に夫婦間の問題ですので、不倫をしたからといって直ちに親権者として不適格ということにはなりません。しかし、たとえば、不倫相手の家に入り浸ってろくに家に帰ってこなかった配偶者が親権者となることを希望し、これからは子育てに力を入れると言っても、裁判所はそう簡単に信用しないでしょう。

このように、不倫の内容、程度によっては、親権者としての適格性に疑問を抱かせることができる場合があります。また、不倫をした配偶者や不倫相手に対しては、原則として慰謝料を請求することができます。

「親権さえとれれば慰謝料にはこだわらない」という方がいらっしゃいますが、そのような場合には、まずは親権と慰謝料を要求し、最終的に慰謝料で妥協して親権は獲得するという交渉方法が考えられます。このような事情から、不倫に関する証拠を集めることが、親権の獲得についても有効だと言えるのです。

自分が不倫をした場合にも親権を獲得できる?

「不倫した配偶者から親権を確実に獲得するには?」でもふれたとおり、不倫は基本的に夫婦間の問題です。肉体関係をともなう不倫は離婚原因となり、慰謝料を請求することもできますが、そのことと親権者としてふさわしいかどうかは直接関係ありません。

父と母のどちらが親権者としてふさわしいかは、あくまで子どもの幸福という観点から決められるべきものだからです。たとえば、母が子どもを幼稚園に送り出した後、短時間、不倫相手と会っていたが、家事や育児はきちんとこなしていたような場合、子どもにとっては「いいお母さん」であるということもあるでしょう。

そのような場合に、不倫をしたことだけを理由に子どもを母親から引き離すことが子どもにとって望ましいとは限りません。このように、自分が不倫をした場合にも、それだけで親権を獲得できないわけではなく、これまで解説した事情をふまえて、不倫をした側が親権を獲得できる場合もあるのです。

親権を獲得できなかった場合はどうすればいい?

(1)面会交流を実現させる

親権を獲得できなかったとしても、子どもとの親子関係がなくなるわけではありません。子どもとのつながりを保つためには、子どもとの面会交流を実現させる必要があります。

民法も平成23年の改正で、父母が協議離婚をする場合の協議事項の一つに、「父又は母と子との面会及びその他の交流」を明記しました(766条1項)。
引用:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=129AC0000000089_20180401_429AC0000000044&openerCode=1#2777

それにあわせて、離婚届の用紙にも、面会交流の取決めの有無等に関するチェック欄が設けられるようになりました。これは、離れて暮らす父または母からも愛されていると実感できることが子どもの健全な発育にとって望ましいと考えられたからです

ですから、協議離婚をする際には、必ず面会交流についての取決めをする必要があります。もし面会交流について合意ができない場合には、家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てることができます。調停でも合意ができない場合には、裁判所に審判という命令を出してもらうことができます。

(2)将来的には親権者変更の可能性も

一度決めた親権者は絶対に変更できないというわけではありません。家庭裁判所の調停・審判によって親権者を変更することができます。

ただし、親権者がころころ変わるようでは子どもの生活環境が安定せず、子どもの健全な発育に悪影響を及ぼすおそれがあります。そのため、親権者の変更が認められるには、親権者による虐待、育児放棄など、親権者の変更が必要な具体的な事情が必要になります。

離れて暮らす親が親権者の変更が必要な事情があるかを把握するには、(1)の面会交流を実現させ、子どもの様子に変化があればすぐに気づけるようにしておく必要があります。その意味でも面会交流は重要なのです。

まとめ

親権について解説しましたが、ご理解いただけたでしょうか。配偶者の不倫に悩んでいるが子どもがいるので離婚をするか迷っていると言う方は、ぜひ参考にしてください。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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