不倫慰謝料請求の手順・流れ|やり方と確実に獲得するための準備物
不倫相手に責任を取ってもらうためにも慰謝料を請求したいけれど、何から始めたらいいか分からないという方もいるのではないでしょうか。
ご自身の夫や妻と不倫した相手に慰謝料を請求して確実に払ってもらうためには、きちんと準備をして請求することが大切です。不倫された場合に慰謝料を請求するのは権利の行使ではありますが、後先を考えずに無茶に慰謝料請求をすると違法行為になり、刑事事件になる可能性もあるので注意が必要です。
今回は、不倫相手に慰謝料を請求する流れと、確実に慰謝料を獲得するために必要なものについてご説明していきます。
不倫相手に慰謝料請求できるケース
不倫慰謝料の請求は、夫婦は互いに「貞操義務」を負うのにそれに違反した夫、または妻に対して行うのが基本になります。不倫相手は、その義務違反による権利の侵害を、夫や妻と一緒に共同して行った責任があるとして、慰謝料請求をできることになるのです。
ただし、全ての不倫のケースで不倫相手に慰謝料請求できるとは限りません。不倫相手に慰謝料請求をして払ってもらうためには、不倫相手に次の2つの条件があることが必要です。
- 故意(相手が既婚者と知りながら敢えて不倫をしていたこと)
- 過失(相手が既婚者だと普通なら気付くのに気付かずに不倫していたこと)
そのため、夫や妻が、自分は独身者だとか、既に離婚しているなどとうそをついて、相手もそれを信じるのに十分な理由があるようなケースでは、実体としては不倫になるとしても、不倫相手に対して慰謝料請求できないというのがルールです。
不倫相手に慰謝料請求する手続きの流れ
(1)不貞行為の証拠集め
不倫相手に慰謝料を請求するには、不貞行為の証拠が必要です。
裁判外交渉で加害者側が慰謝料の支払いに応じない場合、裁判で不貞行為の事実を証明しなければならないからです。
裁判に発展するケースを想定して、まずは不貞行為の証拠を集めましょう。
そもそも不貞行為とは、配偶者を持つ人が配偶者以外の異性と性交類似行為をしたり、性行為をしたりすることです。
性的に密接な関係を持つことは、不貞行為に該当します。
不貞行為の証拠については、後ほど詳しく解説します。
(2)内容証明郵便
不倫相手に慰謝料を請求するのに、いきなり裁判を起こすというのは現実的ではありません。まずは、話し合いで慰謝料の支払いを求めるのが、精神的にも、時間的にも負担が最も少なくて済みます。
ただ、直接話をするのは嫌だとか、不倫相手が話し合いに応じないという方もいるでしょう。
そのような場合には、内容証明郵便を送って請求することをおすすめします。内容証明郵便は、いつ、誰が、どのような内容の手紙を、誰に対して出したのかということを、郵便局が証明をする郵便のことを言います。内容証明郵便が届くと、驚いてそれだけで慰謝料の支払いに応じる人も少なくありません。
また、不倫相手が慰謝料の支払いに応じなかった場合に、今後法的措置に進んでいくための証拠ともなりやすいという特徴があります。ただし、証拠として残るだけに、脅迫めいた文章を書かない等の注意も必要です。より効果的に支払いを求めるには、内容証明郵便の作成から弁護士に頼むことも有効です。
(3)調停
内容証明郵便を送ったり当事者間の話し合いの場で慰謝料の請求をしても、不倫相手が応じなかったり、請求した金額について合意できなかった場合には、不倫相手に対して調停を申し立てることを検討しましょう。調停とは、第三者である調停員を間に入れて話し合いで解決することを目指していく手続をいいます。
調停の手続きは、まず裁判所に申し立てを行うと、裁判所が調停期日を指定して、当事者双方を呼びだし、調停の場がもたれるという流れで進んでいきます。調停は、裁判に比べて手続きにかかる費用が安く済み、解決までの期間が短くて済むというメリットがあります。
調停は、当事者だけで行うこともできますが、弁護士を同席させることで、より有利に話し合いを進める効果も期待できるので、調停を利用する場合は検討してみてください。
(4)裁判
調停でも不倫相手と慰謝料について合意に達しない場合は、裁判に移って裁判官に判断してもらうことになります。
裁判を行う際は、訴える人が住んでいる場所を管轄する裁判所や、不倫があった場所の裁判所に申し立てを行います。これは、不倫は法律上の「不法行為」に基づく損害賠償請求なので、被害者である訴える側の住所地で裁判をすることができるためです。
裁判をするには、配偶者と不倫相手の間に不貞行為があった事実を示す証拠が必要になるので、裁判をする前に証拠集めをしっかりしておくことが重要になります。加えて、この不貞行為によって、配偶者である自分の権利が侵害されたことを書いた訴状という書類を提出します。
このようなお互いの主張を書面で提出し合い、最終的に裁判官が判決を下して、慰謝料の額などを決めて支払いを命じることになります。
裁判になると、不倫相手の対応によっても変わりますが、通常は数ヶ月以上の期間が解決までにかかります。期日の度に呼び出されると、仕事に支障が生じて大変な場合もありますが、弁護士を立てれば代わりに行ってもらうこともできます。
裁判で慰謝料請求をしたい場合には、まず弁護士に相談してみることで、仕事と両立しながら裁判を検討することができるでしょう。
不倫慰謝料を請求するために準備しておくべきもの
(1)不倫の証拠になるものとは
上記のように、不倫相手に慰謝料を請求するには、不貞行為があったという証拠が必要です。
しかし、証拠になると思っていても、実際はさほど有力な証拠にならなかったり、突きつけても反論されるようなものもあります。
たとえば、配偶者と不倫相手のツーショット写真や、仲の良さをうかがわせるメールは、それだけでは慰謝料を請求する証拠としては不十分です。
実際には、ラブホテルに出入りしている正にその場面の写真など、不貞行為を決定づける証拠が必要になります。
実際に、不倫慰謝料の請求をする際に有利に働く証拠としては次のようなものがあります。
①写真、動画など
ラブホテルに配偶者と不倫相手が入る瞬間や、出てきたところの写真は、探偵に浮気調査を頼んだ場合に良く上がってくる資料ですが、慰謝料請求の証拠として有効です。また、パソコンやスマホに、配偶者と浮気相手の性交渉の動画や写真が保存されていれば、それも有効な証拠になります。
②メール、LINEなど
メールやLINEなどの、配偶者と不倫相手のやり取りも、内容によっては慰謝料請求する証拠となります。具体的には、性的関係があったことを示す内容があることが証拠として決めてになります。
③録音音声
不倫相手が配偶者と不貞行為があったと認めた内容を録音した音声は、有効な証拠となります。電話で連絡をする際などは、録音しておくとよいでしょう。
④その他の証拠
その他、ホテルの領収書や、ラブホテルの会員証、不倫を示すようなSNSの投稿、着信履歴なども、不倫の証拠となる場合もあるので、注意して集めておくとよいでしょう。それ単独では証拠とならなくても、他の証拠や自白と相まって、慰謝料請求する際に有効に利用できることも少なくありません。
証拠集めをする際に注意すべきこと
不倫の証拠集めをする際には、配偶者や不倫相手に気づかれないことが大切です。まず、スマホや携帯をチェックし、次にSNSや手帳、レシートの有無などを確認しましょう。
これらの証拠を見つけたら、ご自身のスマホで撮影するなど証拠として保存しておくことが大切です。不倫調査を専門にする探偵もいるので、プロに任せるのも有効な方法です。
そしてもう一つ注意しなければいけないのが、違法行為をしないということです。不倫相手に自白をさせるために脅迫したり、相手の家に忍び込んだりと言ったことは、絶対にしてはいけません。
不倫慰謝料を請求できないどころか、ご自身が刑事事件の加害者になる可能性があります。不倫の証拠集めに不安がある場合には、弁護士を間に入れて、相談したり指示を受けながら進めると安心でしょう。
示談書の準備
不倫で慰謝料を請求するには、証拠だけでなく、その後の慰謝料の支払いに備えて示談書も準備しておきましょう。
示談書には、金額だけでなく、条件もきちんと記載しておくことが重要です。たとえば、配偶者と二度と連絡しない、不倫したことを他言しない、示談書以外には債権債務が存在しない(精算条項)などを盛り込み、法的に有効な書式で作成することが、今後の蒸し返しを防ぐには何よりも重要です。
示談は一度するとやり直しがきかないので、作成する際には一度弁護士のアドバイスを受けておくことをおすすめします。
不倫慰謝料請求の手順を弁護士に代行してもらうメリット
加害者に不倫慰謝料を請求する際、手順の一切を弁護士に代行してもらうことができます。
交渉はご自身だけでも行えますが、つい感情的になってしまいうまく進まないかもしれません。
加害者からより確実に不倫慰謝料を支払ってもらうためにも、弁護士に依頼してみましょう。
本項目では、不倫慰謝料請求の手順を弁護士に代行してもらうメリットについて、詳しく解説します。
(1)的確なアドバイスがもらえる
不倫問題を弁護士に依頼すれば、より的確な慰謝料請求に関するアドバイスがもらえます。
法律や過去の判例をしっかり把握しているからです。
ご自身の悩みや保有している不貞行為の証拠など、さまざまな要素を考慮して不倫慰謝料を請求する方法について考えてもらえます。
不倫慰謝料を加害者に請求できるかどうか不安な方は、弁護士に相談してみましょう。
(2)不倫相手と顔を合わせずに済む
不倫慰謝料請求の手順を弁護士に代行してもらえば、不倫相手と顔を合わせずに済みます。
本来であれば、ご自身で不倫相手と話し合わなければなりません。
感情的になってしまい、不倫相手に暴力を振るったり暴言を吐いたりして、状況が悪化する可能性があります。
ですので、つい感情的になってしまう方は、弁護士に依頼して状況を悪化させず、より確実に不倫慰謝料を請求しましょう。
(3)相手の弁護士に対抗できる
不倫問題について加害者と話し合う際、相手が弁護士を立ててくる可能性があります。
たとえ加害者であっても、弁護士を立てる権利があるからです。
加害者側が弁護士を立てる場合、不倫慰謝料の請求額を減額するように交渉してきます。
相手の弁護士が不貞行為の証拠が不十分だと指摘して、慰謝料請求を拒否するケースもあります。
ですので、加害者側の都合のいいように交渉が進まないように、ご自身も弁護士を立てておきましょう。
まとめ
不倫相手に不倫慰謝料を請求する手続きや、事前に準備しておくべき注意点を解説しました。
慰謝料を請求した際に、不倫相手が素直に認めてすぐに支払うとは限りません。有効な証拠を集めて、確実に慰謝料を請求するためには、事前の準備と適法な手続きを取ることが重要です。
せっかく請求しても法的に意味がなかったり、逆に警察沙汰になっては本も子もないので、ご心配な場合には、弁護士を間に入れて慰謝料請求を検討してはいかがでしょうか。