不貞行為(不倫)の証拠になるのはどのようなモノ?種類や集め方
皆さんの中には、夫や妻の不倫を疑っている方、これから離婚や慰謝料の請求を踏まえて、どういう証拠が必要になるか気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。不倫の証拠というと、デート中の写真やキスの写真などを思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、せっかく写真をとっても、不倫の証拠にならなかったり、証拠の集め方によっては逆に裁判で不利になってしまう可能性もあるのです。そこで今回は、不倫の証拠として有効な5つのものと、証拠の集め方の注意点についてご説明します。
不貞行為とは何か?知っておくべき不倫や浮気と不貞行為の違いとは
皆さんは、不倫や浮気と不貞行為の違いについてご存知でしょうか。人によって、「キスから不倫」「1対1で食事に行ったら浮気」「LINEのやり取りも許せない」など、お考えは様々だと思います。不倫や浮気は一般的な考え方なので、定義はありません。これに対して、「不貞行為」は法律上の概念で、「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつことをいいます。」性的関係とは、一般的に性交や性交類似行為(オーラルセックス、ペッティングなど)をいいます。性交渉が1回だけだった場合、相手がプロだった場合でも、不貞行為は成立します。
反対に、デート、食事、キス、胸をもんだりする行為、高価なプレゼントを贈る事、メールやLINEのやり取り、プラトニックな関係は、不貞行為には当たりません。そして重要なのが、不貞行為に当たってはじめて、慰謝料請求が出来たり、裁判で認められる離婚の理由になるという事です。不貞行為に当たらないキスやデートだけでは、配偶者や浮気相手に対して慰謝料を請求することはできないので注意してください。
不貞行為で証拠になるものとは?
不貞行為があったかどうか、夫婦間で問い詰めるだけならば、証拠は何でも構いません。キスの写真、デート中の写真、高価なプレゼントと思しき領収書など、それらを示すことで相手に不貞行為(不倫)していたことを認めさせるためだけならば、証拠はなんでもいいというのが結論です。
しかし、不倫している配偶者がそれを認めないというのは常套手段ですし、せっかく証拠を集めるならば、もめて裁判になった場合に裁判で証拠として認められるものを集めましょう。それは、「不貞行為があったことを示すもの」です。次の項目では、具体的な証拠の種類を5つご紹介します。
不貞行為の証拠になる5つのもの
ここまでは、具体的に不貞行為の証拠になる5つのものをご紹介します。
(1)写真・動画
写真や動画は、最も効果的な不貞行為の証拠です。ただし、夫や妻と不倫相手が一緒にいる写真なら何でもいいというわけではなく、不貞行為があったことを示すためには、性行為の写真や動画、ラブホテルに出入りしている写真や動画であることが効果的です。シティホテルやビジネスホテルに出入りする写真では、性交渉ではなく単なる食事や打ち合わせのためと捉えられることもあるので証拠としては認められにくいです。
(2)メールやSNSのやりとり
メールやSNS(LINEやFacebookのメッセンジャー)のやりとりで、性交渉があった事を認めるものや、性的関係があったことを想像させるものは、裁判で有利な証拠として認められます。反対に、食事に行っただけのお礼のメールや、プラトニックな恋慕の情を示すようなやり取りだけでは証拠になりません。
(3)領収書
領収書のなかでも、ラブホテルのものなど性交渉があったと推測できるものは証拠として認められます。ただし、ビジネスホテルやシティホテルの領収書ではビジネス利用のものと捉えられることもあるので不十分です。
(4)音声
夫や妻と不倫相手が性交渉を持ったことが推測されるような音声の記録データは、裁判でも不貞行為の証拠として認められやすいものといえます。
(5)探偵等の報告書
皆さんの中には、ネットなどで「不倫調査を探偵に依頼」と言うような広告を目にした方もいるのではないでしょうか。不倫調査を扱っている探偵や探偵業者に不貞行為の調査を頼むと、調査対象を尾行するなどして、不倫相手の家やラブホテルに出入りする写真やデータなどに加え、不倫相手の素性も調べるなどして報告書にまとめてくれるところが大半です。探偵は、いずれ裁判になった場合でも有効に使えるように、不貞行為のあった年月日なども示したものを作ってくれるので、裁判でもこの調査書は有効に使うことが出来ます。
不貞行為の証拠になりにくいものとは
上記とは反対に、せっかく集めても証拠になりにくいものもあります。それは、性交渉があったことを推測するのが難しい証拠や、簡単に加工・ねつ造できる証拠という事が出来ます。具体的には、次のようなものが、裁判では証拠として認められにくいと言えるので参考にしてください。
(1)メールやSNSでの通常のメッセージ交換
性交渉があったことがかかれていたり、性的関係を推認させる内容のメールやSNSは、不貞関係の証拠として裁判でも有効に判断されますが、日常的なやり取り、プラトニックラブのような内容のやり取りは、不貞関係の証拠としては認められません。
なお、LINEのトーク履歴も証拠になりますが、現在はLINEトークの履歴の保存期間は約2週間と言われているので、裁判で利用する際には注意が必要です。当事者のスマホからやり取りが消去された場合には証拠になりませんし、データを復旧させるにしても、不倫をしている当事者のスマホが必要になるので協力を仰ぐのは難しいと言わざるを得ません。LINEのトーク履歴を証拠としたい場合は、やり取りの画面を撮影しておくなどの工夫が必要となるでしょう。
(2)デジタル加工された写真
不貞関係の証拠として、写真や動画は有効な証拠の一つではありますが、同時に加工されやすいという弱点があります。それだけに、加工された写真や動画データは証拠として認められにくくなります。加工していない事を示すために、撮影の日時をデータとして残しておくなど、いざという場合に有効に使えるように証拠化しておきましょう。
また、上記でもお話したように、不貞関係の証拠となるのは、ラブホテルに出入りしている写真や動画、性交渉の写真や動画などです。キス現場や一緒に食事している写真などでは、それだけで証拠としては認められません。ただし、他の有力な証拠と一緒に提出することで、不貞関係の期間や悪質性を示す証拠として考慮してもらえる場合もあるので、もし手元にある場合は消去せずに残しておき、離婚や慰謝料請求などをする際に弁護士などの専門家にご相談下さい。
(3)ラブホテル以外の領収書
ラブホテルの領収書は、それがあるだけで性的関係があったことを推認させるので、不貞関係の証拠として裁判でも有効に判断してもらえます。しかし、一般的なシティホテルやビジネスホテルでは、いくら領収書があっても仕事で利用した際の物とも反論されうるので、不貞行為の証拠としては認められにくいと言わざるを得ません。
同様に、不倫相手へのプレゼントと思われるブランド品などの領収書や、デートで利用したものと思われるレストランの領収書も、それだけでは不貞行為を示す証拠とし手は不十分です。ただし、上記と同様に、単体では不貞行為の証拠として認められにくいこれらの領収書も、他の証拠と一緒になる事で有利に判断される可能性があるので、処分せずに保存しておくとよいでしょう。
不貞行為の証拠集めでやってはいけない3つのこと
不貞行為は、犯罪ではありませんが「貞操義務」に反する不法行為です。貞操義務とは、結婚した夫婦は配偶者以外の人と性交渉をしない、性的関係を持たないという、お互いに負っている義務のことを言います。しかし、不貞行為をした証拠を集める時に、気をつけなければ不倫をされたご自身が、違法行為に問われる可能性があるという事です。特に、次にあげる3つの行為は、逆に相手から訴えられて損害賠償を請求されたり、ケースによっては犯罪行為として逮捕される恐れもあるので十分にご注意ください。
(1)プライバシーを侵害するのぞき見
不貞行為の証拠として有効なものでも、それが相手のプライバシーを侵害して集めた場合は、裁判で証拠として認められないことがあります。
具体的には、配偶者と不倫相手が愛しているなどのやり取りをしていたメールを覗き見て不貞行為の証拠として提出した裁判で、このようなメールのやり取りは結婚関係を破綻させうるので慰謝料の対象にはなるけれど、私的なメールを覗き見て慰謝料請求をすることはプライバシーを暴くものとしたケースがありました。プライバシーは権利の一つとして保護されているので、これを侵害したと判断されると損害賠償を請求されるおそれがあるので、配偶者のメールでものぞき見をしないようにしましょう。
(2)データの全コピー
配偶者のメールやSNSのやり取りを、丸々コピーした場合は、その中に性的関係があったやり取りがあり、不貞行為の証拠になるとしても裁判では認められません。
というのも、メールなどのやり取りはプライベートなもので、本来当事者しか見る事が出来ません。そのため、仮に不貞行為という不法行為があったとしても、やり取りを全コピーするような行為は不適切だと判断されます。実際の裁判でも、配偶者と不倫相手のメッセージのやり取りを含む全データをコピーして不貞行為の証拠として提出したけれど、個人のメールは信書と同じなので、相手の承諾なく不正な手段で内容を得た事は犯罪に当たると厳しく判断されたケースもありました。
(3)暴行、暴力行為
配偶者や不倫相手に暴力を加えたり、脅すなどして無理やり奪い取ったスマートフォンに、仮に不倫の証拠があった場合でも、裁判では証拠として認められません。裁判でも、不倫している夫に妻が暴行を加えて夫の携帯電話を奪い、中のメールの内容を不貞行為の証拠として慰謝料を請求したケースで、人権を無視して、暴力などの反社会的行為によって得られた証拠はその能力を否定すべきだとして、証拠として認められなかったものがあります。
さらに、暴力をふるう行為は暴行罪、相手が怪我をすると傷害罪など、犯罪行為に当たる可能性もあるので、いくら不貞行為をしている相手がわるいとはいっても、絶対にしてはいけません。
まとめ
今回は、配偶者の不貞行為が疑われる場合の証拠の内容や集め方、注意点などについてお話しさせていただきました。信頼していた妻や夫の不倫というだけでもショックが大きい中、証拠集めでご自身が違法行為をして慰謝料を請求されるような事態は絶対に避けたいものです。ご自身ではどうしたらいいか悩まれる方も少なくないのではないでしょうか。
配偶者の不貞行為があった場合、今後の家族の在り方や慰謝料請求などについて検討するうえでも、専門家に相談することは大きなメリットがあります。まずは弁護士にお気軽に相談されてみてはいかがでしょうか?