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  2. 離婚協議書の書き方

離婚を有利に進める為の離婚協議書の書き方と用意すべき情報について

離婚をする際には、慰謝料や財産分与など、さまざまな条件について取決めをします。これらの離婚条件について合意ができたとしても、合意の内容を文書で残しておかないと、後で「言った、言わない」の水掛け論になってしまうおそれがあります。そこで今回は、離婚にあたって作成する離婚協議書の書き方や作成上の注意点などを解説します。

離婚協議書とは

離婚協議書」とは、協議離婚をする際に慰謝料や財産分与、子どもの親権者や養育費、面会交流などの離婚条件についての合意内容をまとめた文書をいいます。協議離婚は、役所に離婚届を提出することで成立します。しかし、離婚届には、未成年の子どもがいる場合の親権者の指定欄、面会交流や養育費の分担の取決めをしたか、していないかのチェック欄を除いて、離婚条件の記載は求められていません。

そのため、離婚条件について口約束ですませてしまう方もいます。しかし、口約束では約束をしたこと自体の証拠が乏しいため、将来的に相手方が約束を守らなかった場合の対応が難しくなってしまいます。そのため、離婚条件を正確に記載した離婚協議書を作成しておくことが重要になるのです。

どのような場合に離婚協議書を作成すべきか

家庭裁判所の手続を利用して離婚する場合、家庭裁判所が作成する文書に離婚条件も記載されます。そのため、当事者が別途離婚協議書を作成する必要はありません。

これに対して協議離婚の場合、家庭裁判所は関与しませんし、離婚届にも親権者の指定と面会交流・養育費の取決めをしたかどうか(具体的な面会交流の方法や養育費の額ではない)を書くだけです。したがって、親権者以外の離婚条件について合意した場合、後日、合意した内容について争いが生じないようにするため、自分たちで文書を作成しておく必要があります。このように考えると、協議離婚の場合は、原則として離婚協議書を作成すべきといえます。

離婚協議書の作成方法

離婚協議書の作成が重要であることはご理解いただけたと思いますので、具体的な作成方法を解説します。

(1)離婚協議書に何を書くべきか

離婚協議書には、次のような事項を記載します。

①離婚に合意したこと

一般的に、最初にまず当事者双方が離婚に合意したことを記載します。

②夫婦のどちらがいつまでに離婚届を提出するか

婚姻届は夫婦そろって役所に行って提出する方が多いですが、離婚届の場合は双方が署名押印し、それを一方が預かって役所に提出に行くことが多いでしょう。しかし、仕事が忙しいなどの理由でなかなか離婚届の提出に行ってくれず、なかなか離婚が成立しない可能性もないとはいえません。そのため、誰がいつまでに役所に離婚届を提出するかを明記しておくといいでしょう。

③慰謝料

慰謝料をいくら、いつまでに、どのように(一括か分割か)など、具体的に記載する必要があります。

④財産分与

財産分与の対象となる財産を具体的に特定する必要があります。

⑤年金分割

年金分割の割合(最大50%)を記載する必要があります。

年金分割については、別記事を参照してください。

未成年の子どもがいる場合には、次の事項を記載する必要があります。

⑥親権者の指定

未成年の子どもがいる場合、離婚届で親権者を指定しなければならないので、あからじめ親権者を決めておき、離婚協議書に記載する必要があります。

⑦養育費の支払い

養育費をいくら、いつまで(一般的には成人するまでですが、大学進学を想定して22歳の3月までとすることもあります)支払うかを具体的に記載する必要があります。

⑧子どもとの面会交流

子どもとの面会の頻度、面会時間等を具体的に記載します。

これらの必要事項を記載した後、最後に「清算条項」を記載します。

⑨清算条項

清算条項とは、離婚協議書で定めたこと以外に、互いに何らの権利も義務もないことを確認する条項です。

(2)離婚協議書作成に必要な資料とは

先ほど挙げた①~⑨の合意内容に応じて、合意の基礎となる資料を準備する必要があります。

たとえば、④財産分与についての取決めをした場合、分与の対象が不動産であれば登記簿謄本、自動車であれば車検証、預貯金であれば預貯金通帳、学資保険や生命保険であれば保険証券などを準備し、どの財産が分与の対象となるかを正確に特定する必要があります。また、⑤年金分割の合意をした場合には、年金手帳や「年金分割のための情報提供通知書」で年金番号や納付実績を特定する必要があります。

(3)離婚協議書作成に当たっての注意点

①離婚協議書作成後は原則として新たな請求はできない

清算条項を記載すると、基本的に離婚協議書に記載のない事項を新たに請求することはできなくなります。ですから、離婚協議書に署名押印する前に、必要な取り決めに漏れがないか慎重に確認する必要があります。

②親権者や養育費の額は変更される可能性がある

ただし、親権者や養育費については、例外的に離婚協議書で決めたことを変更できる場合があります。親権者は子どもの健全な成長にとってどちらが望ましいかという観点から決められるべきものです。そのため、離婚の際にいったん親権者を指定したとしても、離婚後の事情の変更によって親権者としてふさわしくなくなった場合には、親権者を変更することができるとされています。

ただし、親の協議だけで親権者を変えられるとすると、子どもの立場が非常に不安定になってしまいます。そこで、協議離婚で話し合いによって親権者を決めた場合も含めて、親権者の変更は当事者間の協議だけではできず、必ず家庭裁判所の手続が必要とされています。

③離婚協議書だけでは強制執行できない

離婚協議書は、離婚条件について合意したことの有力な証拠になります。しかし、相手方が離婚協議書で合意した内容を守らなかったとしても、ただちに給与の差押えなどの強制執行ができるわけではありません。強制執行に先立ち、裁判などの法的手続で権利関係を確定させる必要があるのです。

したがって、相手方が約束を守らなかった場合でも、差押さえなどをするにはかなりの時間がかかってしまうことになります。そのような事態を避けるには、離婚協議書を「公正証書」にしておくということが考えられます。公正証書については、「離婚協議書を公正証書にするには」で解説します。

離婚協議書を公正証書にするには

(1)公正証書とは

公正証書とは、公証人がその権限に基づいて作成する公的な文書をいいます。公正証書には、原本を紛失するおそれがない(原本は公証役場で保管する)、証明力が高い(公証人という公務員に準ずる者が本人確認をしたうえで作成するので、偽造などと言われるおそれがない)といったメリットがあります。

また、金銭の支払いの合意については、公正証書の中に「債務を履行しない場合はただちに強制執行に服する」旨の文言(強制執行認諾文言)があれば、相手方が約束を守らなかった場合に裁判等をせず公正証書に基づいて差押さえなどの強制執行が可能になります。

(2)公正証書作成の手続

まず、公正証書のもとになる離婚協議書の案を作成します。協議書の案ができれば、最寄りの公証役場に連絡し、協議書案や「離婚協議書作成に必要な資料は」で例示した資料を郵便やFAXで送付して、公証人にチェックしてもらいます。公証人のチェックを経て問題がなければ、公証役場で公正証書を作成する日時を決めます。

夫婦双方本人が公証役場を訪問するのが原則です。公証人は、本人確認をした後、公証証書の内容を説明し、双方に異存がなければ双方と公証人が署名押印します。これで公正証書は完成です。公正証書の原本は公証役場で保管しますので、謄本(写し)をもらって帰ります。

公正証書の詳細については、別記事を参照してください。

離婚協議書の相談先

これまで離婚協議書の重要性を解説してきましたが、経験がないのでどのように書けばいいかわからないという方も少なくないと思います。離婚協議書の作成で迷ったときはどこに相談すればいいでしょうか?

(1)法律の専門家に相談すべき

離婚の相談先としては、大きく分けてカウンセラーと弁護士等の法律の専門家の2つが考えられます。離婚した方がいいか復縁した方がいいか悩んでいるという場面では、カウンセラーのアドバイスが有益であることもあります。しかし、離婚協議書の作成を考えている場面においては、離婚するという方向性は決まっており、離婚条件についてもおおむね合意に至っているでしょうから、カウンセラーへの相談は適切ではありません。

離婚協議書は、合意の内容を明らかにすることで後日の紛争を防ぐとともに、万が一紛争が生じた場合の証拠とするために作成するものです。したがって、その目的を達成するには法律の専門家に相談すべきといえます。

(2)弁護士に相談するのが望ましい

法律の専門家といっても、いくつか種類があります。離婚条件について合意ができており、文書を作成してもらうだけでいいということであれば、行政書士に依頼するという選択肢もあります。ただし、行政書士はあくまで書類作成の専門家です。

「行政書士法第1条の2」

行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
参考:http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=326AC1000000004#5

適切な離婚協議書を作成するには、離婚後にどのような紛争が生じやすいのか、それを防ぐにはどうすればいいかなどといった、離婚後の紛争に関する専門的な知識経験が不可欠です。しかし、書類作成の専門家である行政書士に、このような知識経験があるとは限りません。このようにみると、離婚協議書の作成は、法律上の紛争についての専門家である弁護士に相談するのが望ましいといえます。

とはいえ、弁護士に相談となると費用が心配だと言う方もいらっしゃるでしょう。行政書士に離婚協議書に関する相談や依頼をされる方の多くは、弁護士より費用が安いという理由で行政書士を選択したものと思われます。しかし、近年では初回相談料無料で法律相談を受ける弁護士事務所も増えてきました。また、自治体が主催する市民向けの法律相談を利用すれば、無料で弁護士に相談することができます。

さらに、収入や資産が一定の基準を満たす場合には、法テラス(日本司法支援センター)において無料で弁護士による法律相談を受けることもできます。このように、無料で弁護士に相談できる手段がいくつもありますので、可能な限り弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

今回は、離婚協議書について解説しました。協議離婚を考えている方は、ぜひ今回の記事を参考にして離婚協議書を作成し、後日争いが生じないようにしてください。

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