ダブル不倫でお互い浮気|双方が不貞行為した場合の慰謝料請求
この記事を読んでくださっている方の中には、「夫が不倫したから腹いせで不倫した」とか「妻子ある身だが既婚女性と軽い気持ちで不倫した」など、ダブル不倫している人もいらっしゃるのではないでしょうか。ダブル不倫だから、お互いさまで慰謝料請求されないとか、離婚されないとお考えの方もいますが、そういうことはありません。
また、ダブル不倫の相手の言葉を信じて離婚したら、相手は元鞘に収まって一人きりになったという方の話も耳にします。
そこで今回は、ダブル不倫で気をつけるべき慰謝料請求やダブル不倫の特徴について解説したいと思います。
ダブル不倫とは何か? ダブル不倫が成立する5つの条件
ダブル不倫とは、配偶者がいる者同士で不倫をすることをいいます。
そもそも、不倫が何かについては、キスから不倫という人もいれば、2人で食事したら不倫と考える人もいるでしょう。
不倫は一般的な概念なので、どう考えてもいいのですが、法律的には、不倫は不貞行為があったことを言います。
不貞行為とは、配偶者以外の異性と性交渉をしたことを言います。慰謝料請求や離婚請求は、もめた場合には、この法律上の不倫でないと裁判を起こすことはできません。
そこで、ダブル不倫が成立する次の5つの条件を確認してみてください。
(1)自分も不倫相手も結婚していること
法律上の不倫である不貞行為が成立する前提として、法律的な夫婦による不倫でなければなりません。
婚姻届けを出していないけれど夫婦同然の「内縁関係」の場合は、準婚関係として慰謝料を請求できますが、単なる同棲相手の場合は原則として認められません。
(2)故意または過失で不貞行為をしたこと
ダブル不倫をしている配偶者の不倫相手に慰謝料を請求する場合は、不貞関係に至った際に、不倫相手が既婚者であることに故意(わざと)または過失(不注意)が必要です。
配偶者が、独身だと嘘をついて既婚者である不倫相手と関係を持っていた場合、故意過失がないため不倫相手に慰謝料は請求できません。
不倫をした配偶者には、この場合でも慰謝料を請求できます。
(3)異性との性交渉があること
上記のように、法律上の不倫は「不貞行為」のみを指します。不貞行為は「配偶者のある者が、自由な意思に基づいて配偶者以外の異性と性的関係をもつこと」です。
つまり、デートやキスだけでは、相手も既婚者でもダブル不倫で慰謝料を請求できませんし、不倫相手が同性愛の相手の場合も、現在の日本では不貞行為には当たりません。
(4)自由意思による関係
形式的には性交渉があった場合でも、レイプなど自由意思に基づかず関係を持たされた場合は、不貞行為に当たりません。
むしろ強制性交等罪に当たり、刑務所に入る可能性もある重大な犯罪です。
(5)婚姻関係が破綻していないこと
ダブル不倫で慰謝料を請求するには、夫婦関係が破綻していないことが必要です。これは、不倫によって夫婦の安定した生活が害されたことが慰謝料で償うべき損害に当たるからです。
そこで、既に夫婦関係が破綻している場合には、もはや守るべき利益がないので、慰謝料の請求ができない場合があります。
ダブル不倫で慰謝料請求できる相手とは
(1)不倫慰謝料を請求できる2人の相手
不倫(不貞行為)は、「夫婦は配偶者以外の相手とは性交渉をしない」という夫婦間の「貞操義務」という義務に違反する行為です。
不倫された側は、この義務に違反されて被った精神的苦痛を「慰謝料」というお金で償うよう、不倫した配偶者とその不倫相手に請求することができます。
たとえば、夫が女性と不倫していた場合、妻は夫とその女性の2人に対して、不倫慰謝料を請求できることになるのです。
ただし、注意してほしいのが、夫の不倫相手が既婚者だった場合、つまり夫がダブル不倫をした場合、不倫相手の夫も慰謝料を請求する権利があるということです。
不倫された妻には直接の関係はありませんが、不倫した夫は、不倫相手の夫から慰謝料請求をされる可能性があるため、離婚しない場合は家族の財布から慰謝料を支払わなければいけません。
(2)ダブル不倫の場合は慰謝料請求が帳消しになるか
では、夫婦がダブル不倫をしていた場合、慰謝料請求はできるでしょうか。
たとえば、夫が会社の部下と不倫し、妻がパート先の店長と不倫していたようなケースです。
双方に非があるため、相手に対して慰謝料を請求できないと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、そういうことはありません。
お互いに不倫がばれた場合に、話し合って慰謝料の請求をしないということも可能ですし、請求した後で相殺(プラスマイナス)するというケースもあります。
この場合、お互いの不倫慰謝料がいくらくらいになるか、不倫相手との関係、不倫期間などによって変わってくる点も多いので、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
ダブル不倫の慰謝料の相場
ダブル不倫の慰謝料金額は、通常の不倫慰謝料と同様に決まりがあるわけではありません。
不倫のケースによりかなりの差はありますが、おおむね100万~500万円がダブル不倫の慰謝料の相場ということができます。
実際の慰謝料金額は、上記の目安に個別の事情が勘案されて決定されることになります。例えば慰謝料を増額させる事情としては次のようなものがあります。
- 相手の収入が多いこと
- 不倫した当事者の社会的立場が高いこと
- 精神的苦痛の程度が大きいこと
- 不倫期間が長いこと
- 結婚期間が長いこと
- 不倫の主導的立場にあるなど責任が重いこと
- 特に幼い子供がいること
- 不倫が悪質であること
- 不倫前の夫婦関係が良好であったこと
ダブル不倫の場合は、上記の増額事由にすべて該当する可能性もあります。裁判では、1000万円近い慰謝料請求がされることも少なくありません。
ご自身のケースで不倫慰謝料の金額が妥当なのか、逆に高額の慰謝料を請求されて困っているといった事情がある場合は、まずは弁護士に相談して確認しましょう。
ダブル不倫で慰謝料請求されたがお金がない場合に減額される可能性
自分にも家庭がありながら既婚者と不倫したダブル不倫では、自分の配偶者と不倫相手の配偶者からも慰謝料を請求される可能性があります。
(1)自分の配偶者からの慰謝料請求を減額するには
自分の配偶者から慰謝料を請求された場合、離婚を前提にされていることが通常です。
この場合、自分の配偶者も不倫をしていた場合は、不倫前から夫婦関係が破綻していたとして、慰謝料の請求ができないことや減額を主張していくことが可能です。
また、結婚期間が短い場合や、自身の不倫関係が一度きりだったなどの事情を主張して、慰謝料の減額を請求していくことも考えられます。
(2)不倫相手の配偶者からの慰謝料請求を減額するには
他方、不倫相手の配偶者から慰謝料を請求された場合、相手の夫婦の状況を確認してください。
相手夫婦も不倫前から別居していたような場合は、そもそも慰謝料自体を請求されません。
また、相手の夫婦が離婚しない場合は、交渉によって慰謝料金額を減額することも可能です。
ダブル不倫の場合は、不倫相手が自分の配偶者に不倫の事実を知られたくないために、連絡がつかなくなるなど協力を得にくいことが少なくありません。
できるだけ穏便な関係を維持しつつ、情報の提供をしてくれるように努力してみましょう。
ダブル不倫で自分から慰謝料を請求したいなら
夫も妻も不倫をしていた場合、自分も慰謝料を請求される立場ですが、相手が先に不倫をしていたことが原因であるなど、先に慰謝料を請求したい方もいるかと思います。
そのような場合は、まずは配偶者の不貞行為の事実を示す証拠を集めることが必要です。
上記でお話したように、慰謝料を請求できる不倫は、法律上の不倫である不貞行為に限られるので、集めるべき証拠は「性交渉があったことを示す証拠」です。
具体的には、次のような証拠が有効です。
- 配偶者と不倫相手がラブホテルや相手の家に出入りしている写真や動画
- 配偶者と不倫相手との性交渉の写真や動画
- 不倫相手との肉体関係があると分かるメールやLINEのメッセージ
これら以外の、シティホテルに出入りする際の写真や、不倫相手へのプレゼントを買ったレシートなどは、単体では不貞行為の証拠になりませんが、他の証拠と一緒に不倫関係の悪質さの証拠になるので、併せて集めておきましょう。
ダブル不倫を弁護士に相談するメリット・デメリット
(1)ダブル不倫の難しさ
ダブル不倫は、不倫の当事者それぞれに家庭があるため、ダブル不倫がばれたときは相手と連絡が取れず協力が得られにくかったり、自分の配偶者と相手の配偶者の両方から慰謝料請求をされたりなど複雑な状況になりがちです。
また、不倫相手の夫婦は離婚しないけれど、ダブル不倫をしていた自分たち夫婦は離婚することになった場合には、自分の配偶者と不倫相手の配偶者には慰謝料を払うものの、状況によっては、自分の配偶者の不倫相手からは慰謝料がもらえないケースもあるので、不公平さを感じることもあります。
(2)ダブル不倫を弁護士に相談するメリット・デメリットとは
上記のようにダブル不倫が発覚すると、慰謝料を複雑に請求し合う状況になり、離婚するかしないかでとるべき対応も変わってきます。
①弁護士相談のメリット
弁護士に相談するメリットとしては、自身の夫婦の慰謝料請求関係を整理し、不倫相手の配偶者からの慰謝料請求に対しても、減額の可否などの相談ができることがあります。
また、弁護士に依頼すると、慰謝料の請求、減額の交渉を始め、すべての交渉をご自身の代理人として代わりにやってもらえます。
さらに、ご自身の夫婦が離婚する場合は、離婚の交渉や財産分与、もめた場合の調停や裁判所への出廷なども任せることができます。
②弁護士相談のデメリット
一方、デメリットとしては、弁護士に頼むと弁護士費用が掛かることがあります。依頼した場合の弁護士費用は、弁護士や事務所によって変わりますが、次の費用を目安にしてください。
- 相談料
法律相談費用のことで、30分5,000円+税、1時間10,000円+税が目安です。最近は、初回相談は無料というところも多いので、ネットなどで検索してみてください。 - 着手金
着手金は、弁護士に弁護活動を依頼した時点でかかるお金のことで、成功・不成功に関わらず支払わなければいけません。
金額は弁護士によって変わりますが、不倫問題の場合は20万~30万円の事務所が一般的です。 - 日当
日当は、弁護活動にかかった手数料のことで、着手金とは別に発生します。たとえば、不倫相手や、交渉場所に出かけた場合の出張日当や、裁判に出た場合の公判日当などです。
日当は、一律金額、所要時間で算出、タイムチャージ制など、算定方法も弁護士によってさまざまです。 - 成功報酬
成功報酬は、弁護活動で成果を得られた場合の報酬で、最後に支払います。
不倫問題では、慰謝料を減額できた場合に減額金額の何パーセント、相手から回収できた慰謝料額の何パーセント、などと決めているところも多く、おおむね20万~100万円が目安となります。 - 実費
実費は、弁護活動にかかった経費のことで、郵送料や交通費などが含まれます。
ダブル不倫は複雑なので、早期に問題を解決するには、弁護士に相談することをおすすめしますが、費用や方針については依頼する前によく確認しておきましょう。
まとめ
今回は、ダブル不倫の特徴や、慰謝料請求についてお話させていただきました。ダブル不倫のリスクの高さや、解決の難しさがお分かりいただけたかと思います。
ダブル不倫の慰謝料請求には、ご自身の夫婦関係だけはなく、不倫相手も既婚者だった場合にはその夫婦関係も慰謝料額に影響するなど、権利関係がとても複雑になります。
慰謝料請求をする場合にしても、された場合にしても、適正な慰謝料額はいくらなのか、早期に解決するにはどうしたらいいのかといったお悩みには、専門家である弁護士が助けになります。
まずはお気軽に相談されてみてはいかがでしょうか。