熟年不倫について離婚や慰謝料など知っておくべき熟年不倫のリスク
「長年連れそった夫だが、不倫されていてショックを受けている」「定年退職後に妻が不倫していることを知り離婚を考えている」など、熟年不倫でお悩みの方は少なくありません。しかし、熟年であるだけに、夫や妻の不倫に対してどのように対応したらいいか、慰謝料請求や離婚ができるのかお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
熟年不倫でお悩みの方が離婚や慰謝料の請求を検討する際には、その後の生活も十分考慮に入れて行動に移さなければ、離婚後に生活が破綻したり健康を害するリスクがあります。
そこで今回は、熟年離婚の現状や熟年不倫で慰謝料請求や離婚を検討する際の対処方法の注意点についてお話したいと思います。
熟年不倫は増加している
熟年不倫とは、主に中年以降の男女が不倫をすることを言いますが、昨今、この熟年不倫が増加しています。原因は、インターネットの普及です。これにより、数年前に比べて、出会いの場や連絡手段が格段に広がっています。
出会い系サイトに加え、最近はパパ活といって、若い女性がお小遣い稼ぎに熟年男性とデートをしたり、より良い稼ぎを求めて性交渉をするケースもあります。また、不倫相手との連絡も電話やメールだけでなく、様々なアプリで行えるので、周りに気付かず熟年不倫がしやすいという環境もそろっていると言えるのです。
同時に、熟年不倫だけが原因ではありませんが、日本の熟年離婚率は増加しています。離婚件数自体は、平成14年をピークに減少していますが、20年以上を共に過ごした夫婦の離婚率は上昇傾向にあり、10年前のデータで約5組に1組が熟年離婚という状況に達しています(厚生労働省「同居期間別にみた離婚の構成割合の年次推移」)。
熟年不倫の主な原因5つ
(1)生活の変化
会社のポジションが変わった、子供が独立したなど、生活の変化がきっかけで熟年不倫に走る人は少なくありません。昇進して経済的に余裕ができて不倫するケースや逆に仕事に失敗しても尊敬してくれる部下と不倫するケースなど、きっかけはさまざまです。
また、サラリーマンの定年退職による生活の変化は、熟年離婚の理由のひとつです。特に男性は外で働き女性は家を守る」という概念が一般的だった団塊の世代が定年退職をした2000年以降は、熟年離婚が増加した時期と重なり、熟年離婚の一因と言われています。
(2)性格の不一致
性格の不一致は、熟年でなくても不倫の原因になりうるものですが、生活に余裕が生まれた熟年だからこそ、遊びや趣味を一緒に楽しめる異性と不倫するケースがあります。夫婦の一方の性格がきついなどの事情があると、何でも話を聞いてくれる若い異性と不倫に走りやすいという傾向もあります。
(3)親の介護問題
介護によるストレスは、言葉にできないほど大きなものがあります。特に両親・義両親の介護を夫婦の一方が担い、もう片方は不在がちといったケースでは、介護の大変さを理解してもらえない孤独や疲労から、他に助けを求めるように不倫に走る人もいます。
また、夫婦仲が冷え切っている場合は、配偶者の介護を将来しなくていいように少しでも若い異性と関係を結んでおこうとするケースもあるようです。
(4)DV、モラハラなど
これまで耐えてきたけれど、夫や妻のDVやモラハラに、熟年になって耐えられず不倫する人もいます。DVやモラハラは、それ自体が慰謝料請求や離婚の原因にもなるので、配偶者からのDV、モラハラでお悩みの方は、ご自身が不倫して慰謝料請求をされるリスクを負う前に、弁護士などの専門家に相談されることをおすすめします。
(5)欲求不満や刺激への渇望
熟年になり、生活にも余裕が生まれたことで、性的な欲求や刺激を求める気持ちが高まり、配偶者では満たされない場合に熟年不倫に走るケースがあります。
どうしても長年連れ添った夫婦は、刺激的な関係から穏やかな関係に移行し、性的関係もマンネリ化しがちですが、夫婦の一方が環境やホルモンの変化で刺激を求める場合は、熟年不倫に陥りやすいです。特に夫婦の性欲に差がある場合などは注意が必要でしょう。
熟年不倫でもらえるお金の種類と相場とは?
慰謝料などのお金がもらえる不倫は、法律的な不倫である「不貞行為」のことを指します。不貞行為は「配偶者以外の異性と、自由意志に基づいて性的関係を持ったこと」、つまり夫や妻以外の人とセックスをすることです。
不倫について、キスからアウト、デートもダメなど、個人で考えるのは自由ですし、キスやデートした配偶者に慰謝料を請求して、相手が勝手に払ってくれるなら問題ありません。しかし、相手が応じず裁判で争う場合は、法律上の不倫に当たらないため、裁判で慰謝料や離婚を請求することはできません。ここでは、熟年不倫した場合にもらえるお金と熟年不倫が原因で離婚した場合にもらえるお金についても解説します。
(1)財産分与
財産分与とは、結婚中に夫婦が協力して築いた財産を、離婚に際して原則折半で、公平に分配することです。財産分与の対象となる財産には、預貯金、不動産、車、株などの有価証券、退職金、保険解約返戻金、公的年金以外の年金、へそくりなどが含まれます。借金については必ず折半されるわけではありませんが、一定の考慮がされる場合があります。
(2)年金分割
年金分割とは、結婚中に夫が支払った厚生年金を受け取る権利を妻と分け合うことです。対象となるのは、サラリーマンや公務員の厚生年金で、厚生年金を支払った期間の結婚期間が対象になります。
(3)慰謝料
「慰謝料」とは、法律上は、「相手の不法行為で被った精神的損害を賠償する金銭」のことをいいます。不法行為とは、犯罪行為とは異なりますが、法律のルールに反する行為のことです。不倫慰謝料の場合は、夫や妻が不倫という不法行為をして傷ついた気持ちを償うためのお金ということになります。
不倫慰謝料は各人で自由に決められるので、法律上の決まりはありません。目安としては、不倫が原因で別居や離婚をした場合は100~300万円、しない場合は50万円~200万円といえます。ただし、これに、次のような事情が考慮して金額が決められます。
①不倫期間
不貞行為は1回だけでも成立し慰謝料を請求できますが、不倫期間が長い場合は慰謝料が高額になりやすいです。熟年で不倫関係が長く続いている場合は、慰謝料が高くなりがちです。
②不倫の事情
不倫がばれても開き直って不倫関係を続けたり、不倫相手が積極的に家庭を壊そうとした場合、不倫関係の解消を約束した後で不倫していたような悪質性が高い場合は、慰謝料が高くなります。
③不倫の当事者の地位や収入額の高さ
不倫をしている当事者の社会的地位が高い場合や収入が多い場合は、慰謝料が高くなります。熟年不倫の場合は、昇進するなど社会的地位が高いことも多いので、慰謝料が高くなるケースは多いでしょう。
④幼い子供の存在
夫婦に幼い子供がいる場合は、慰謝料が高くなる場合があります。熟年不倫の場合は少ないかもしれませんが、最近は晩婚、高齢出産も増えているので、子供がいる夫婦は慰謝料にも注意しましょう。
熟年離婚のメリット・デメリットとは?
ここまで、熟年不倫の原因やお金についてお話してきましたが、熟年不倫などが原因で熟年離婚する場合のメリットやデメリットについて解説します。
(1)熟年離婚するメリット
①結婚生活からの解放
熟年離婚のメリットとして、悩みの多い結婚生活からの解放、悠々自適な生活が送れることがあげられます。熟年離婚をする夫婦では、子供が既に独立しているケースも多いため、配偶者への不満や悩みから解放され、残りの人生を自由に自分らしく生きることにメリットを見いだす人は多いです。
②義両親や親族関係からの解放
熟年離婚することで、配偶者の親族からも解放される点もメリットとして挙げられます。特に折り合いの悪かった義両親の介護から解放されることは、いわゆる「嫁」「婿」として苦労してきた人には大きなメリットになります。
③新たな出会いの可能性
最近は、熟年者向けの婚活市場も拡大しています。長年苦労してきた結婚生活に終止符を打ち、新たな出会いに期待する熟年者は増加しています。
(2)熟年離婚のデメリット
①経済的な影響
最近、老後の必要資金は2000万円と発表され大きなニュースになりましたが、総務省の統計からは、60歳以上の単身世帯での毎月の消費支出は約16万円になる計算です(総務省:家計調査報告家計収支編 年平均結果の概要)。
一方で、熟年夫婦の中でも、専業主婦(主夫)やパート収入しかなかった人が熟年離婚した場合、離婚後の生活に困ることは少なくありません。正社員やフルタイムの仕事は、長年のブランクがあったり高齢の場合は、就職が難しいのが実情です。離婚する際には、財産分与をきちんとしておくこと、離婚後に得られる公的サポートを確認しておくことなどの準備が大切です。
②精神面への影響
熟年離婚で解放感を得る一方、孤独感を感じ、離婚を後悔する人も少なくありません。これまで感じたことのない孤独感に加え、年齢的にも孤独死への不安が募るなど、精神面に悪影響が生じるケースもあります。
③健康面への影響
長い結婚生活の間、妻に家事を任せきりだった夫に多いケースですが、家事全般ができないために、離婚後に健康を害するケースがあります。食事が作れずコンビニ食ばかりになったり、もともと高かった血圧が上がる、糖尿病リスクが高まるなど、深刻な状況に陥るリスクも否定できません。
④周囲の目
昨今、熟年離婚が増えているとはいえ、特に地域のコミュニティが密な地域では、熟年離婚によって住みづらさを感じるケースがあります。また、子供が独立していると言っても、子供の結婚相手の家族に対して引け目を感じてしまう人もいるようです。
⑤老後に与える影響
熟年離婚した場合に懸念事項の一つになるのが、老後の問題です。1人になり、病気になって動けなくなった場合に誰に頼めるのか、頼めないならどのようなサービスを利用できるかなど、十分に考えておくことが必要です。
ちなみに、老人ホームは特別養護老人ホームで月5~15万円、有料老人ホームだと月10~50万円など、施設によっては毎月高額な費用が掛かりますし、申し込んですぐに入れるわけでもありません。熟年離婚する場合は、今後のライフプランを考えておくこと、子供や友人・知人に連絡できるようにしておくことなど検討を重ねておきましょう。
熟年不倫を防止する方法
これまでお話してきたように、熟年離婚にはメリットもありますが、いくつものデメリットがあります。熟年離婚を検討している場合は、まずは財産の調査を行い、財産分与でどの程度の財産が得られるのか、また年金がどの程度受け取れるのかを試算しておきましょう。その上で、ご自身が熟年離婚をするメリットがあるかどうか検討してください。
そして、熟年離婚は結婚期間が長く苦楽を共にしてきた関係だけに、片方の配偶者にとっては寝耳に水のことも多く、冷静な話し合いができない場合があります。熟年離婚を防止して夫婦生活を続けるためにも、どうしても熟年離婚する場合にも、間に第三者を入れて話し合うことは有効です。知人や身内だと話がこじれやすいので、「夫婦問題カウンセラー」などの専門家に、夫婦で相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、熟年不倫と熟年不倫が原因の一つとなりうる熟年離婚について解説しました。配偶者の熟年不倫で熟年離婚を考えていたけれど、熟年離婚のリスクを考えると悩みが生じたという方もいるかもしれません。その場合でも慰謝料請求はすることが可能です。
熟年不倫で離婚した場合の今後の生活、もらえる慰謝料や離婚手続きなどについては、法律に精通した弁護士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。熟年不倫や熟年離婚でお悩みの方は、まずは弁護士にお気軽にご相談ください。