不倫している二人に社会的制裁を与えたい!ダメージが大きいのは何?
夫や妻が不倫をしていることが発覚したら、どう思うでしょうか。夫(妻)や不倫相手がなにごともなかったように日常の生活を送るのは許せない、社会的制裁を与えたいと思うのは自然なことです。しかし、ひとくちに社会的制裁と言っても、いろいろな方法がありますから、どのような方法が効果的かはケースバイケースです。
また、いかに不倫をしたと言っても、制裁のやり方次第ではこちらが不利益を受けてしまうおそれもあります。そこで今回は、配偶者が不倫をした場合に社会的制裁を与える手段について詳しく解説します。
社会的制裁とは
社会的制裁には、いろいろなものが考えられます。ダメージが大きいものとして考えられるのが、刑罰です。また、会社や友人にばらすなどして周囲の評価を下げるという方法も考えられます。さらに、金銭の支払いなどで経済的な負担を負わせる方法もあり得ます。
このようないくつもの方法のなかで、不倫をしている配偶者や不倫相手に対してどのような手段をとるべきかを考えていきましょう。
不倫相手に対する制裁
(1)不倫に刑罰はある?
ごく普通に生活している人にとって、刑罰を科され、前科がついてしまうというのは、大きなダメージになります。それでは、不倫をしたことに関して刑罰を科すことはできるのでしょうか。
①姦通罪とは
不倫に関する犯罪に、「姦通罪」というものがあります。一般に、姦通罪とは、配偶者のある者が、配偶者以外の者と性行為をすることによって成立する犯罪をいいます。
姦通を犯罪とするかどうかは宗教とも関連しますので、国によって違いがあります。現在でも、アメリカの一部の州には姦通罪の規定がありますし、イスラム圏では厳しい刑罰が科されることがあります。
②日本における姦通罪
日本でも、かつては刑法に姦通罪の規定がありました。ただし、その内容は、夫のある女性が姦通をした場合に、その女性と相手の男性を処罰するというものでした。
戦後、男女平等をかかげる日本国憲法が制定されたことにより、姦通罪の規定は憲法に違反するとされ、廃止されました。その結果、姦通だけで処罰されることはなくなったのです。したがって、不倫相手への制裁として刑罰を科すことはできません。
(2)第三者に知らせていい?
次に、第三者に不倫の事実を知らせていいかを解説します。
①SNSで拡散していい?
不倫に対する社会的制裁として、不倫の事実をSNS等で拡散するということが考えられます。しかし、SNS等による拡散は、「名誉毀損」にあたる可能性が高いと言えます。
名誉毀損は、不特定または多数の人に、具体的な事実を示して人の社会的評価を下げる行為をいいます。
名誉毀損は、具体的な事実が真実であった場合でも成立することに注意が必要です。また、民事上の損害賠償責任が発生するだけでなく、刑事上の名誉毀損罪が成立する可能性もあります。
例外的に名誉毀損が違法でないとするためには、
- 公共の利害に関する事実であり、
- 目的がもっぱら公益を図ることにあったと認められ、
- 真実であることの証明があった
という要件をすべてみたさなければなりません。
しかしながら、政治家などの公人でもない限り、不倫が上2つの要件をみたすことはまずありません。したがって、不倫に関しては名誉棄損の違法性がなくなることはまずないと考えるべきです。このようにみると、SNS等による拡散は、効果はあるものの名誉毀損として損害賠償や刑罰を受けるリスクがあるので、しない方がいいでしょう。
②勤務先に知らせていい?
たとえば勤務先の社長にだけ話すといった場合、不特定または多数の人に具体的な事実を示したとは言えないので、直ちに名誉毀損にあたるとまではいえません。ただし、これでは知らせたところでどの程度の効果があるのか未知数と言わざるを得ません。
かといって、同僚に広く知らせるようなことをすれば、名誉毀損が成立する可能性があります。また、しつこく勤務先に電話をした場合、勤務先に対する業務妨害になるおそれもあります。このようにみると、勤務先に知らせるのも得策とは言えません。
③不倫相手の家族に知らせていい?
家族に知らせるだけなら名誉毀損にはならない可能性は高いでしょう。しかし、家族に知らせるだけでは社会的制裁としての効果は乏しいと言わざるを得ません。
このように、特定の第三者に知らせるだけでは制裁としてそれほど効果がなく、効果があるように広く第三者に知られるようにすると名誉毀損にあたる可能性があるので、第三者に知らせるという方法もお勧めできません。
配偶者に対する制裁
(1)刑罰について
「不倫相手に対する制裁」で解説したとおり、日本には姦通罪はありませんので、不倫をしただけで刑罰を科すことはできません。例外的に刑罰の可能性があるのは、不倫相手が18歳未満の場合の都道府県の青少年保護育成条例違反ぐらいでしょう。
(2)第三者に知らせていい?
ここでも「不倫相手に対する制裁」で述べたことが基本的にあてはまります。また、配偶者が同僚と不倫をしていたような場合、勤務先に知らせると解雇などの処分を受ける可能性があります。
ただちに離婚するのではなく夫婦関係修復の余地がある場合や、離婚するが子どもがいて養育費を請求する場合などは、配偶者が解雇されると自分にも不利益になるおそれがあるので、注意が必要です。
不倫の合法的な制裁は慰謝料請求!
(1)配偶者、不倫相手双方に請求できる
このようにみると、配偶者や不倫相手へ社会的制裁を加えるには、刑罰や第三者に知らせるといった方法は適切ではないということになります。そこで、合法的に社会的制裁を加える手段としては、慰謝料を請求することが最も効果があるといえます。
不倫は、配偶者と不倫相手が共同でした「不法行為」にあたります。不法行為とは、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を害する行為をいいます。不法行為をした者に対して、被害者は損害賠償を請求することができます。2人以上の加害者が共同でした共同不法行為については、加害者は連帯して損害賠償義務を負うとされています。
したがって、不倫をした配偶者と不倫相手の両方に対して慰謝料を請求することができ、配偶者と不倫相手は連帯責任を負うことになります。
(2)合法的に会社に知らせることができる場合もある
勤務先に知らせるリスクを解説しましたが、慰謝料請求することによって、合法的に勤務先に知らせることができる場合があります。
①就業先送達
不倫相手に慰謝料を請求しても、素直に支払いに応じるとは限りません。支払いがない場合には、慰謝料を請求する裁判を起こすという選択肢があります。
裁判を起こすと、裁判所が被告に対し、「特別送達」という方式(郵便局員が郵便物を手渡しで交付し、配達したことを証明する方式)で訴状を送ります。
通常は被告の住所に送達しますが、被告の住所がわからないときや、被告の住所で送達をするのに支障があるときは、就業先に送達することができるとされています。
したがって、不倫相手の住所はわからないが勤務先がわかっている場合、不倫相手の住所はわかっているが不倫相手が受け取りを拒否している場合などは、勤務先に送達することができます。訴状等は裁判所の封筒に入れられて送られてきます。封筒には裁判所名、住所、電話番号などが印刷されているので、裁判所からの文書であることは一目でわかります。
そのため、上司から事情を聴かれ、不倫の事実が発覚する可能性があるのです。就業先送達は法律の定めにのっとった合法な手段です。また、原告が内容を知らせたわけではないので、名誉毀損にもまずあたらないでしょう。
②給与の差押え
裁判をして慰謝料の支払いを命じる判決を勝ち取っても不倫相手が支払いをしない場合、給与を差し押さえ、差し押さえた分を直接自分に支払うよう会社に要求することができます。当然、会社に対しても差押えの関係の書類が届きますし、事務処理が増えるので会社は差押えを嫌がります。
ですから、①と同じく、上司から事情を聴かれることになり、その結果、不倫の事実が発覚することもあるでしょう。これも、差し押さえという合法的な手段の結果によるものですから、何の問題もありません。
まとめ
配偶者と不倫相手に対する制裁として最も効果があるのは慰謝料請求です。ただし、慰謝料を請求するには、事前に不倫に関する証拠を集めておく必要がありますし、配偶者や不倫相手が支払いに応じない場合には裁判を起こす必要があります。
慰謝料請求を考えている場合には、早い段階で弁護士に相談し、どのように進めていけばいいのかアドバイスをしてもらうといいでしょう。