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一夜限りの浮気で不倫の慰謝料を請求される可能性は?法的根拠も解説

「一夜限りの過ちで既婚者と肉体関係を持ってしてしまった。」

このような場合に不倫相手の夫や妻から慰謝料を請求されることはあるのか不安を抱えている方は少なくないのではないしょうか。あるいは、一夜限りの不倫で慰謝料を請求されたが相手の要求どおりに支払わなければならないのか疑問を感じているという方もいらっしゃると思います。

不倫は他人の心を傷つける違法な行為です。しかし、不倫をしてしまったからといって、相手の要求どおりに慰謝料を支払わなければいけないわけではありません。特に一夜限りの関係だった場合には、慰謝料を大幅に減額できる余地があります。

この記事では、一夜限りの不倫で慰謝料を請求されることはあるのか、請求されたときにどのような対応をとるべきなのか解説いたします。

浮気すると慰謝料を請求されるのはなぜ?

(1)不倫とは

「芸能人が不倫をして多額の慰謝料を請求された」というニュースをご覧になったことがある方は多いと思います。また、映画やテレビドラマ既婚者と一夜限りの肉体関係を持ってしまい、それが発覚したというような場面を目にすることもあります。

芸能ニュースやテレビドラマでよく聞かれる「不倫」という言葉は実は法律用語ではなく、法律上は「不貞」という言葉を使います。
民法第770条には、「配偶者に不貞な行為があったときには離婚の訴えを提起することができる」と規定されています。離婚は婚姻と同様に男女の合意によって成立するのが原則ですが、配偶者が不倫をした場合には、相手が離婚は拒絶しても裁判手続によって一方的に離婚を成立させることができるという意味です。

このように不倫は違法な行為であるとされています。そして不倫をすると不倫相手の配偶者に精神的な損害を与えたとして損害賠償を請求されることがあります(民法第709条)。これが不倫慰謝料請求の根拠です。

(2)不倫慰謝料請求の根拠

日本の法律では、一組の男女が夫婦になるという「一夫一妻制」が前提となっています。この仕組みのもとでは、夫婦は互いに「他の異性と性的関係をもたないようにする義務」を負います。これを「貞操義務」といいます。

不倫をされた当事者は、相手(夫または妻)が貞操義務に違反したことによって精神的苦痛を受けたとして、その損害を金銭により賠償するように求めることができます。たとえば、夫が妻以外の女性と性的な関係を持ったとします。この場合、妻は夫の不倫行為によって精神的苦痛を被ったとして、夫や不倫相手に対して損害賠償を請求することができるということになります。

ここで重要なポイントは、妻が損害賠償を請求できる相手は夫だけではなく、不倫相手も含まれるという点です。これは夫と不倫相手が共同で違法な行為を働いたといえるからです。これを法律的な用語で「共同不法行為」といいます。

(3)不倫慰謝料は誰に請求できる?

ではこの場合、不倫をされた妻は夫と不倫相手のどちらにどれだけの損害賠償を請求することができるのでしょうか。

たとえば、夫の不倫行為によって妻が200万円相当の精神的損害を被ったとします。この場合、妻は夫に200万円を賠償するか、不倫相手に200万円を請求するか選ぶことができます。

ただし、夫と不倫相手の双方からそれぞれ200万円を受け取ること(二重取り)は当然認められません。夫に対して50万円、不倫相手に対して150万円というように分割して請求することも可能ですが、総額で200万円を越えて請求することはできません。

不倫慰謝料請求の相場は50万円から300万円程度と幅があります。不倫関係が長期にわたって継続していた場合、肉体関係が複数回あった場合、不倫により婚姻関係が破綻し離婚に至った場合などには慰謝料の額が高額になりがちです。

一夜限りでも浮気をすれば不倫慰謝料を請求される可能性はある

では、「不倫をしてしまったのは確かだが、一夜限りだった」という場合、不倫慰謝料請求は認められるのでしょうか。

結論からご説明すると、たとえ一夜限りの関係であったとしても慰謝料請求は認められるのが原則です。一夜限りであっても自分の意思で配偶者以外の異性と肉体関係を持ったことには変わりはないからです。「気の迷いだった」「酔った勢いだった」という言い訳は通じないことになります。

とはいえ、不倫の回数は慰謝料の額には大きく影響します。長期間にわたって不倫関係が続いていた場合と比べれば一回限りの不倫の場合の方が悪質さの程度は低いと評価され、慰謝料の額も安くなる傾向があるのです。

なお、不倫をしたからといって逮捕されたり裁判で罰金が命じられたりすることはありません。不倫は民法上違法な行為ですが、刑法で禁止されている行為ではないからです。慰謝料は相手方の精神的な損害を補填するために支払うもので、国に納める罰金とは異なります。

不倫をしても慰謝料を請求されない場合がある

(1)婚姻関係が破綻している

不倫をした当事者は損害賠償義務を負うとご説明しましたが、例外的に不倫をしても慰謝料を請求されない場合があります。

一つは、戸籍上は夫婦であるが実質的には婚姻関係が破綻していたといえる場合です。たとえば夫婦が長年にわたって別居しており、家計を共にしたり連絡を取り合ったりしていない状態であるときがこれに当たります。このような場合、実質的には離婚したのと同視できると評価されるため、不倫をしても精神的な損害が発生していないものとして慰謝料請求が認められません。

もっとも、婚姻関係の破綻は簡単に認められるものではありません。婚姻関係が破綻しているといえるためには、婚姻関係を修復することが不可能な状態でなければならないとされています。たとえば、別居の期間が1~2年程度であるときには婚姻関係の破綻は認められません。それ以上別居していたとしても、定期的に連絡を取り合っていたり、家計を共にしているなどの事情があると婚姻関係の破綻は認められづらくなります。

このように、婚姻関係が破綻していると認められるためのハードルは意外と高いと理解しておきましょう。

(2)故意・過失がない

不倫行為に及んだことについて故意や過失がない場合も損害賠償請求は認められません。たとえば不倫相手が既婚者であることを隠しており、それを知りえる機会がなかった場合がこれに当たります。

ただし、故意や過失がなかったという主張を通すことも簡単ではありません。相手から「夫婦関係はとっくに破綻しているから」と説明されて肉体関係に至るのはよくあることですが、婚姻関係が破綻していると認められるためのハードルは高いということはご説明したとおりです。相手の言葉を信じて不倫関係に至った場合に損害賠償請求を拒絶できるかはケースバイケースだと言えます。

故意や過失が否定されるもう一つのケースとして、脅されたり、暴力をもって肉体関係に至ったケースが考えられます。この場合には刑法に規定されている強姦罪などの犯罪に該当することは言うまでもありません。

不倫慰謝料を支払わないとどうなる?

(1)本人や弁護士から請求されている場合

では、不倫慰謝料を請求されたにもかかわらずこれを無視し続けているとどうなるのでしょうか。

不倫慰謝料が請求されるパターンとして、まずは本人から口頭や書面、メールなどで請求されるケースがあります。もっとも、相手から「○○万円支払え」と言われたからといってそれが法律上の義務となるわけではありませんので、これを無視したからといって直ちに不利益が生じるわけではありません。感情に任せて言っただけであり、実際には慰謝料を請求する気などないという場合もあるかもしれません。

本人ではなく、代理人の弁護士から通知が来ることもあります。弁護士からの通知は電話で来るか、内容証明郵便で書面が届くことがほとんどです。内容証明郵便とは通常の手紙と異なり郵便物の文書の内容、差出人、宛名人を証明する郵便で、法律的な根拠に基づいて請求を行う場合などに利用されます。

弁護士に請求されたからといって直ちに慰謝料の支払い義務が生じるわけではありません。しかし、弁護士から請求されたということは相手が本気で慰謝料を請求しようとしていることを意味しますし、法律的な根拠に基づく主張ですので、その後に訴訟に発展する可能性も高いと考えられ、請求を無視するリスクは高くなります。

(2)訴訟を提起された場合

請求を無視し続けていると裁判所に訴訟を提起されることがあります。裁判所に出廷するよう命じられたのにこれを無視すると、裁判所は相手方の主張を全面的に認めた形で判決が出されます。そして、判決文をもらった相手方は「強制執行」という手続を取ることができます。強制執行とは、家や車といった財産や、給与などの債権を差し押さえて支払いに充てる手続です。強制執行は国が法律に基づいて強制的に行われる手続ですので、無視したり拒否したりすることはできません。

このように、不倫慰謝料請求を無視し続けていると最終的には相手方が主張するとおりの金銭が強制的に回収されてしまうことになりますので、できるだけ早い段階で対処することが大切です

一夜限りの浮気で不倫慰謝料を請求されたら

(1)要求通りの金額を支払う必要はない

では、本人や代理人弁護士から不倫慰謝料を請求されたときや裁判所から訴状が届いたときにはどのように対応すればよいのでしょうか。

まず、相手から請求された不倫慰謝料の金額は交渉により減額できることが大半です。というのも、不倫慰謝料を請求するときには、交渉のテクニックとして相場よりも高い金額を提示することがほとんどだからです。

反論の方法としては、回数や期間から見て不倫行為がそこまで悪質とは言えないこと、不倫行為が婚姻関係の破綻に繋がっておらず結果が重大とはいえないこと、過去の同種の事例の相場と比べると相手方の請求する慰謝料が高額であることなどを主張することが考えられます。

また、不倫行為について故意や過失がないことを主張できる場合もあります。たとえば当事者が既婚者であることを隠しており、結婚指輪もしていなかったため、結婚していることを知りようがなかった場合です。故意や過失がなかったと認められれば不倫慰謝料を支払う必要はありません。

減額交渉を行った結果、不倫慰謝料の金額に合意に至った場合にはその内容を書面に残します。これを和解といいます。

和解は裁判前に成立することもありますし、裁判になってから成立することもあります(後者を「裁判上の和解」といいます。)。したがってどのような段階であってもまずは和解による解決を目指すことになります。和解での解決が困難な場合、最終的には裁判官が判決を出して慰謝料請求を認めるかどうか、認めるとしたらいくらなのかを決定します。

(2)交渉は弁護士に依頼する

不倫慰謝料を請求されたご本人が直接相手方本人や弁護士と連絡をとり、減額に向けた交渉を行うことも可能です。しかし、自分で交渉を行うのはかなりの負担になると考えていただいた方がよいでしょう。
まず、不倫慰謝料請求は法律に基づいて行われるものですので、反論を行う際には法律や過去の判例に基づいた主張を組み立てる必要があり、法律の知識が必要とされます。当事者同士で話し合いをするとどうしても感情的になりやすく、交渉がうまくいかないこともあります。
また、相手方は不倫行為がいかに悪質であったか、それによってどれだけ傷ついたかということを主張・立証してきますので、交渉の過程で不快な思いさせられることも覚悟しなければいけませんし、

このように負担の大きい交渉を代理で行うことができるのが弁護士です。弁護士は業務として交渉を代理することができる唯一の士業です。弁護士は法律と交渉のプロフェッショナルですので、相手方が請求してきた金額が相場に照らして妥当かどうか、相手方に対してどのような反論が可能かを検証し、それを法律に則った主張をすることができます。不倫慰謝料を請求されたときには早めに弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

不倫慰謝料を請求されたからといって相手の要求通りの支払い義務が生じるわけではありません。しかし、請求を無視し続けていると裁判を起こされて強制的に執行されてしまうおそれがあります。不倫慰謝料を請求されたときには法律の専門家である弁護士に早めに相談し、減額に向けた交渉を行うことをお勧めいたします。

不倫慰謝料請求に強い弁護士

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