浮気(不倫)相手を破滅させる手段と安全な「仕返し」の方法について紹介
配偶者の浮気(不倫)が発覚したとき、「裏切られた!」という気持ちとともに「相手に仕返しがしたい」と思う人は少なくないでしょう。しかし、配偶者の身に危害を加えるのは、法律に触れる恐れがあります。そこで、合法的な仕返しの方法である慰謝料請求について、解説します。
配偶者の浮気相手への「仕返し」行為にはNGがある
浮気や不倫は民法上、「不貞行為」とよばれる不法行為ですが、刑法上の「犯罪」ではありません。対して、下記で述べるような「仕返し」は「傷害罪」「脅迫罪」「名誉棄損罪」に当たる可能性があり、これらは刑法上の「犯罪」に相当します。仕返しをしたために、浮気よりも重大な刑法上の犯罪に抵触しないよう、気をつけなければなりません。
(1)相手に危害を加える
配偶者の浮気相手の家に乗り込んだり、外で待ち伏せしたりして殴るのは言語道断です。嫌がらせをするのもNGです。相手に危害を加えると、「傷害罪」に問われる可能性があります。また、暴力以外に言葉で脅すことも「脅迫罪」などに問われる恐れがあるので、注意が必要です。感情にまかせて配偶者の浮気相手に危害を加えるのは、ぜったいやめましょう。
(2)浮気相手の職場に知らせて退職させる
配偶者の浮気相手が勤める会社に、浮気のことを電話や手紙、あるいは会社に直接出向いて告発し、退職に追い込みたい——その気持ちはわかります。しかし、これは「名誉棄損罪」に問われます。逆に、浮気相手から名誉棄損による慰謝料を請求される事態になりかねません。
(3)浮気相手の配偶者や家族に告げる
浮気相手が未婚でまだ若い場合、両親に浮気の事実を訴えて慰謝料の請求を迫ったり、逆に浮気相手が既婚者である場合に配偶者に浮気の事実を告げたりすることも、NGです。「名誉棄損」または「プライバシーの侵害」で逆に訴えられる可能性があります。それどころか、逆に浮気相手の配偶者から、あなたの配偶者が慰謝料を請求されるかもしれません。
(4)SNSや掲示板で浮気相手の実名を出す
SNSやブログ、インターネット掲示板に、配偶者の浮気相手を実名で出して浮気について投稿することは、名誉棄損やプライバシーの侵害に当たります。また、浮気相手の家の近所に浮気をしたことについて書いたビラなどを配るのも、同様の罪に問われます。
慰謝料請求は合法的な「仕返し」
感情にまかせて相手に危害を加えたり、周囲を巻き込んだりすることは犯罪につながります。法に触れず、浮気相手に仕返しをする方法として、慰謝料の請求があります。浮気は民法で「不法行為」とよばれ、損害賠償=慰謝料を請求することができます。慰謝料の相場は安くても数十万、高ければ300万円といわれています。浮気相手にとっては安い額ではありません。ダメージを与えることができるでしょう。
(1)慰謝料の請求先には3パターンある
浮気の慰謝料は誰にすればよいのでしょうか。浮気・不倫といった不貞行為は当事者二人に責任があります。つまり、あなたの配偶者と浮気相手に慰謝料を請求できます。慰謝料を請求するパターンには、次の3つがあります。
- 浮気相手のみに慰謝料を請求する
- 配偶者のみに慰謝料を請求する
- 配偶者と浮気相手の両方に慰謝料を請求する
慰謝料を請求する側が結婚生活を続ける場合は1.、離婚する場合は2.3.のパターンになることが多いです。なお、3.の場合、決定した慰謝料全額を配偶者と浮気相手の両方に請求することはできません。二人に分割して請求することになります。
(2)浮気相手に慰謝料を請求する方法
「これからも結婚生活を続ける意思はあるが、配偶者の浮気相手には仕返しがしたい」と考えている人は、浮気相手のみに慰謝料を請求するパターンを選択すると思います。以下で説明するように、浮気相手に慰謝料を請求する方法として、書面や話し合いによる交渉と裁判があります。一般的に、最初は書面や話し合いでやりとりし、それで解決しなければ裁判という手順を踏みます。
慰謝料の金額について、一般的に結婚生活を続ける場合は離婚する場合に比べて安くなる傾向にあります。ほかにも、浮気の期間やあなたと配偶者の間の子どもの有無などさまざま要素によって、慰謝料の金額は決まります。数十万~300万円程度といわれる慰謝料の金額ですが、個別のケースによって決まることが多く、慰謝料を請求する側もどれぐらいの額を請求すればよいか難しいのが現実です。
(3)浮気相手に慰謝料を請求できないケースもある
「浮気相手に仕返しがしたいから慰謝料を請求したい!」と思っても、実は請求できないケースがあります。大きく分けて2つのパターンがあります。
①配偶者が既婚者であることを知らなかった場合
マッチングアプリや出会い系サイトなどで出会う場合、お互いのことをよく知らないまま肉体関係を持ってしまうことがあります。また、同じ職場で働く二人の場合でも、配偶者が「結婚していない」とウソをついていることもあるでしょう。このような場合、浮気相手には既婚者と不貞行為を働こうという意思がないため、浮気をされた側は慰謝料を請求することはできません。
②配偶者が浮気をした時点で、すでにあなたとの夫婦生活が破綻していた場合
慰謝料は、配偶者の浮気によって、訴える側が円満な夫婦生活を侵害されたことに対する「損害賠償」です。浮気発覚時、あなたと配偶者がすでに別居していたり、同居していても夫婦仲が険悪だったりしている場合、慰謝料請求は認められません。
浮気相手への慰謝料請求の流れ
まずは書面や話し合いで交渉し、うまくいかなければ裁判に進みます。前提として、浮気相手の氏名や住所などを知っておく必要があります。配偶者から浮気相手の情報を仕入れておきましょう。また、後で説明するように、裁判による慰謝料請求では浮気の証拠が必要になります。自分で集められない場合は、興信所などの利用も検討しましょう。
(1)交渉して慰謝料を請求する
①内容証明郵便で慰謝料請求書を送る
配偶者を通じて、浮気相手と連絡が取れ、慰謝料の支払いに応じてくれれば問題ありませんが、現実的には難しい話です。そこで、「内容証明郵便」で慰謝料請求書を浮気相手に送ります。
内容証明郵便とは、郵便物の書面の内容や誰から誰に出した郵便かということを郵便局が保管してくれるものです。内容証明を受け取った側は、びっくりするとともに浮気の重大性に気付くことでしょう。「そんなものは受け取っていない」と言い逃れすることができず、話し合いに応じてくれなかった浮気相手を、交渉の場につかせることができる可能性が高くなります。
以下の要領で内容証明を作成し、内容証明郵便を受け付けている郵便局(集配を行っている大きな郵便局など)から差し出します。
②内容証明に盛り込む内容
「慰謝料請求書」「通知書」などのタイトルをつけ、以下のような内容を盛り込みます。
- 浮気の事実(誰と誰が、いつごろ浮気をしていたか)と、浮気が民法の不法行為であること
- 慰謝料を請求することと請求額、振込先、振込期日
- 差出人と受取人の住所・氏名
内容証明には文字数の上限や決まりがあります。詳しくは日本郵便ホームページの「内容証明 ご利用の条件等」
を確認してください。
(2)浮気相手と示談に向けて話し合う
内容証明郵便を受け取った側が、すぐに慰謝料を振り込むことはほとんどなく、慌てて謝罪の連絡を取ってくるかと思われます。話し合いの場を設定します。減額交渉も含めた慰謝料の支払いについて確認するほか、浮気相手に二度と配偶者と接触しないことを約束させます。
合意ができたら、「誓約書」や「示談書」を作成し、書面で交渉内容を残しておきます。個々のケースによって、内容の細かい部分は異なりますが一般的に以下のような項目について書きます。
- 浮気の事実
- 浮気相手が配偶者に二度と連絡しないこと
- 慰謝料の金額や支払い方法、支払期日
- 違反した場合のペナルティ
慰謝料を浮気相手だけに請求する際、「求償権」に注意しましょう。「求償権」とは、浮気相手が慰謝料の半分をあなたの配偶者に請求する権利です。本来、慰謝料を払う責任は浮気をした当事者二人にあるので、浮気相手はこのような権利が行使できるのです。
こうしたことを避けるため、示談の条件として、求償権を放棄することを示談書に盛り込むことが多いです。求償権を放棄するかわりに、慰謝料の金額を減額するといった交渉も行われます。
(3)裁判をして慰謝料を請求する
話し合いで示談に持って行くことができなかった、あるいは、内容証明郵便で慰謝料請求を行っても受け取り拒否・話し合いに応じないといった事態になった場合、裁判を起こして慰謝料を請求します。
裁判を起こす前に、裁判所で調停委員に間に入ってもらい、話し合いをする「調停」での解決を目指すこともあります。調停で話し合う際は、裁判と同様、浮気の証拠を提示する必要があります。これまでの話し合いの経緯や浮気の証拠をもとに、調停委員から慰謝料の額が提示されます。調停で合意した内容は「調停調書」にまとめられます。調整証書には法的拘束力があるので、慰謝料の支払いなど合意した内容を浮気相手が実行しなければ、強制執行をすることも可能です。
調停でも合意ができなかった場合、あるいは調停を行わない場合は裁判を起こすことになります。訴える側は裁判所に訴状を提出します。浮気相手が浮気を認めない場合、訴状に加えて浮気の証拠も提出します。
裁判が始まると、被告(訴えられた側=浮気相手)による反論が行われ、原告(訴えた側=あなた)はそれに対して再反論します。これは、それぞれ文書によって行われ、当事者が裁判所に姿を現すことはありません。双方の主張や証拠が揃うと多くの場合、裁判所から和解(話し合いによる解決)が提案されます。裁判所から示された和解案に双方が合意できれば、和解で終了します。和解すると、和解調書が作成されます。調停調書と同様、和解調書にも法的拘束力があります。
和解が成立しなければ、原告・被告が裁判所に呼ばれ、裁判官が話を聞く「当事者尋問」が行われます。その後も裁判所から和解を勧められますが、どうしても合意できない場合は、慰謝料の支払いについて裁判所から判決が下されます。
まとめ
配偶者に浮気をされて、浮気相手に仕返しをしたいという気持ちは十分理解できます。しかし、相手に直接危害を加えたり、勤務先に浮気を告発したりすると、相手にダメージを与えるどころかあなた自身の破滅につながります。
慰謝料請求は、浮気相手に合法的にダメージを与え、浮気の再発を防げる方法です。「独力で請求書を送って話し合いをしたり、裁判を起こしたりするのは難しい」と思っている方には、浮気・不倫問題の経験が豊富な弁護士へのご相談をおすすめします。