夫婦の貞操義務とは?貞操義務違反するとどうなるのか?
結婚すると、夫婦は互いに貞操義務という「配偶者以外の者と性的な関係を持ってはならない」という義務が生じます。
しかし、「貞操義務とはどこまでの範囲なのか分からない」「貞操義務に違反するとどうなるのか」という夫婦の貞操義務に関して疑問や悩みを抱えている方もいるでしょう。
そこで、今回は夫婦の貞操義務や貞操義務違反について解説していきます。
夫婦の貞操義務とは
結婚すると夫婦は互いに貞操義務が生じます。
貞操義務とは、配偶者以外の者と性的な関係を持ってはならないという義務です。
夫婦の義務については民法752条に同居義務・協力義務・扶助義務が定められていますが、貞操義務に関しては明記されていません。
しかし、配偶者の不貞行為が民法上の離婚事由になっていることからも夫婦が互いに貞操義務があるという解釈ができます。
貞操義務に違反する行為
貞操義務に違反する行為とは、法律上の「不貞行為」です。
つまり、不倫や浮気と呼ばれる行為になります。
不倫や浮気の線引きには個人差があると思いますが、法律上の貞操義務違反はどのような行為が該当するのでしょうか?
(1)配偶者以外の異性との性交渉
貞操義務に違反に該当する行為とは、「配偶者以外の異性との性的な関係」です。
性的な関係とは肉体関係を持つことを指します。
肉体関係は一度きりの場合でも貞操義務違反に該当し、売春も不貞行為に該当します。
本人の気持ちなどは関係なく、肉体関係があれば貞操義務違反であると判断されます。
(2)肉体関係がなくても認められるケースもある
基本的に肉体関係がある場合のみが貞操義務違反であると判断されます。
しかし、肉体関係がない場合でも、貞操義務違反であることが認められるケースもあります。
何度もデートなどを繰り返し行い、夫婦関係が破綻させられたというような場合であれば、肉体関係がなくても貞操義務違反であると認められる可能性があります。
貞操義務違反に該当しないケース
貞操義務違反に該当する行為は肉体関係を指しますが、それ以外の行為でも貞操義務違反になるのではないかと考える方もいるでしょう。
貞操義務違反だと考えられがちですが、貞操義務には違反しないケースを紹介します。
(1)異性とメールのやり取り
異性とメールのやり取りをしていることを浮気だと考える方もいますが、法律上では貞操義務違反にはなりません。
メールを何度もやり取りをしていて恋人のように親密な内容であったとしても、メールのやり取りをしているだけならば貞操義務に違反していることにはならないのです。
もしメール内容に肉体関係があることを示す内容が書かれていた場合であれば、ホテルの領収書や写真などの写真と組み合わせれば貞操義務違反であると認められる可能性があります。
(2)異性とのキスなどスキンシップ
異性とキスや手を繋ぐなどのスキンシップがあったという場合でも貞操義務違反にはなりません。
貞操義務違反はあくまでも肉体関係があった場合のことを指すため、キスなどのスキンシップだけならば違反にはならないのです。
もしキスや手を繋いでいる写真があったとしても、貞操義務違反とは認められない可能性が高いです。
(3)キャバクラや風俗店の利用
キャバクラや風俗店などを利用した場合も貞操義務違反にはなりません。
しかし、キャバクラや風俗店を利用し、そのお店で働く異性と肉体関係があった場合には貞操義務違反になります。
ただし、風俗店での性行為は売春防止法により禁止されています。
そのため、もし風俗店を利用して肉体関係を持った場合には違法行為として罪に問われる可能性があります。
(4)すでに夫婦関係が破綻していた場合
配偶者以外の異性と肉体関係を持ったとしても、すでに夫婦関係が破綻している場合には貞操義務違反にはなりません。
夫婦には「婚姻共同生活の平和の維持」という権利が法律上で保護されており、不貞行為は婚姻共同生活の平和を侵害するものとして不法行為に該当すると判断されます。
しかし、すでに夫婦関係が破綻している状態であれば、保護すべき婚姻共同生活の平和の維持という権利も失われていると考えられるため、貞操義務違反とは認められない可能性が高いです。
別居や離婚の話をしている段階ではなくても、夫婦仲が悪くなっている時に貞操義務違反があれば、夫婦円満の時よりも慰謝料金額が低くなることが予想されます。
貞操義務違反した場合にはどうなるのか?
貞操義務違反の行為をしてしまった場合には、法律上で不法行為であると判断される可能性があります。
もし貞操義務違反するとどんなことが起こる可能性があるのでしょうか?
(1)離婚原因になる
当事者同士の話し合いで離婚する場合には離婚する理由は問題になりません。
しかし、協議で離婚が決まらずに調停や裁判するとなると離婚理由に焦点が当たります。
民法770条で離婚事由は定められており、その1つに不貞行為があります。
貞操義務違反は不貞行為に該当するため、裁判所の命令で離婚することができることになります。
(2)慰謝料を請求できる
貞操義務違反があった場合、浮気された側の配偶者は貞操義務違反を理由に慰謝料請求することができます。
慰謝料とは不法行為によって受けた精神的苦痛への損害賠償であり、貞操義務違反の場合には不倫されたことで夫婦の共同生活の平和の維持の権利が侵害されたとして慰謝料請求できるのです。
請求できる相手は不倫相手と不倫した配偶者です。
慰謝料金額は法律で定められていませんが、相場としては50万円~200万円ほどです。
貞操義務違反で離婚や慰謝料請求する場合の注意点
貞操義務違反があった場合、離婚や慰謝料請求することができます。
もし離婚や慰謝料請求するのであれば、いくつか注意したい点があります。
離婚や慰謝料請求を求める前に、まずは次のことを確認しましょう。
(1)貞操義務違反である証拠が必要
貞操義務違反で離婚や慰謝料請求するのであれば、貞操義務違反があったという証拠が必要になります。
証拠のない状態で請求すれば、相手に事実無根であると言われてしまえば追及することが出来ません。
肉体関係があるということが分かる証拠を集めるようにしましょう。
もし肉体関係があるという明確な証拠がない場合でも、いくつかの証拠を組み合わせることで証拠として認められる場合があります。
(2)慰謝料請求には時効がある
貞操義務違反の慰謝料請求には時効があります。
配偶者の不貞行為および不倫相手の情報を知った時から3年間が時効です。
もし不貞行為があることが分かったとしても相手の情報を特定できなければ時効は進行しません。
時効があることを念頭に置き、時効が成立する前に慰謝料請求しましょう。
また、不法行為から20年間は除斥行為が設けられているため、不貞行為から数年後に貞操義務違反の事実を知ったとしても20年以内であれば慰謝料請求が可能です。
過去の貞操義務違反であったとしても時効が成立する前であれば慰謝料請求できるので、まずは時効を確認しましょう。
配偶者が貞操義務違反している場合にすべきこと
もし配偶者が貞操義務違反していると知り、離婚や慰謝料請求するのであれば事前に準備しておきたいことがいくつかあります。
相手に貞操義務違反について問いただす前に、次のことを行うようにしましょう。
(1)証拠を集める
前述したように、貞操義務違反を理由に離婚や慰謝料請求する場合には、貞操義務違反があったという証拠が必要です。
証拠を集める前に配偶者や浮気相手を問い詰めてしまうと、証拠を消されてしまう可能性があります。
そのため、配偶者や浮気相手に気付かれる前に証拠を集めておくことが理想です。
貞操義務違反の証拠として認められるものとしては、ホテルや旅行などの領収書やホテルに出入りしている写真、肉体関係があることが分かるメッセージのやりとりなどが挙げられます。
不倫相手からの着信履歴やカーナビの記録、デートで使ったクレジットカードの明細などは単体では貞操義務違反であると立証することは難しいですが、証拠は組み合わせることで証拠として認められる可能性が高くなります。
そのため、出来る限り多く証拠は集めるようにしましょう。
(2)離婚する場合は新しい生活の準備をする
貞操義務違反を理由に離婚したいと考えた場合、相手に離婚を切り出す前に離婚後の新しい生活の準備を進めておきましょう。
離婚して家を出るのであれば新しい家が必要になりますし、家を借りる場合には初期費用としてまとまったお金が必要です。
離婚すれば財産分与や慰謝料などでお金が入ることになるとしても、離婚前からある程度貯金を作っておくようにしましょう。
また、新しい生活をスタートさせるために仕事などを予め見つけておくことも大切です。
そうすれば、離婚しても金銭面で困ることなく新しい生活をスタートしやすいでしょう。
子供がいる場合には、地域ごとに自治体による母子家庭や父子家庭のサポート制度が受けられるので、前もって調べておくと離婚後の申請もスムーズです。
(3)弁護士に相談する
配偶者が貞操義務違反している場合には、早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば法的なアドバイスをもらえるだけではなく、今後の流れや準備すべきことなどの説明も受けられます。
また、離婚や慰謝料請求するのであれば、そのまま手続きを弁護士に任せることができます。
早い段階で相談することで問題もスムーズに解決しやすくなりますし、適切な対処を行いやすくなります。
貞操義務違反で離婚や慰謝料請求する際に弁護士に依頼すべき理由
貞操義務違反で離婚や慰謝料請求する場合、自力で相手と交渉することや手続きすることも可能です。
しかし、自力で交渉や手続きをするよりも弁護士に依頼することをおすすめします。
弁護士に依頼すると費用が発生しますが、貞操義務違反を弁護士に依頼すべき理由に次のことが挙げられます。
(1)自力で貞操義務違反を証明することは難しい
貞操義務違反で離婚や慰謝料請求をするのであれば、貞操義務違反を証明する証拠が必要です。
しかし、自力で貞操義務違反の証拠を集めて証明することは難しいものです。
法律の知識も必要になり、どのような物が証拠として認められるのか選ばなければなりません。
また、証拠や相手の情報がないからといって尾行などをすれば貞操義務違反の証拠を集めていることがバレてしまい、証拠を隠滅される恐れがあります。
場合によっては不法侵入やプライバシーの侵害で訴えられてしまうこともあるので、どのように証拠集めすべきかも踏まえて弁護士に相談すべきと言えるでしょう。
(2)精神的負担が軽減される
貞操義務違反で離婚するのであれば、まずは配偶者との話し合いが必要になります。
そこで離婚の同意が得られれば離婚手続きに進むことができますが、離婚では財産分与や親権など決めなければならないことも多いので精神的な負担が多いものです。
相手が離婚を拒否していれば調停や裁判になるので、より精神的に辛いものになるでしょう。
また、慰謝料請求では証拠集めや相手との交渉などが必要となるため、精神的なストレスも大きいものになります。
しかし、弁護士に依頼すれば手続きや交渉など全てを任せることができるため、相手と直接顔を合わせて話す必要もなく、精神的な負担が大幅に軽減されます。
当事者同士で話し合うことは感情的になりやすいため、弁護士に任せることが得策であると言えるでしょう。
(3)有利な条件で進められる
貞操義務違反により大きな精神的ダメージを受けたため、離婚や慰謝料では出来る限り有利な条件で話を進めたいと考えることは当然です。
弁護士に依頼することで過去の判例や状況などを考慮して交渉することができるため、有利な条件で話を進めやすくなります。
弁護士は法律の知識があるだけではなく交渉のプロでもあるので、早い段階で依頼して交渉や手続きを任せるようにしましょう。
まとめ
今回は貞操義務違反について解説しました。
貞操義務違反があった場合には離婚や慰謝料請求が可能ですが、貞操義務違反があったという証拠を集める必要があります。
少しでも有利な条件で進めるためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
貞操義務違反の確証がない段階でも相談することができるので、まずは無料相談から相談してみましょう。