不倫で慰謝料請求されたら|払えない場合は無視せず弁護士に相談を
「不倫で慰謝料請求されてもやむを得ないが、金額が高すぎるのではないか」
「不倫相手の配偶者から慰謝料を請求されたが無視して大丈夫か」
不倫をしてしまった方の中には、不倫相手の配偶者や、ご自身の妻や夫から不倫慰謝料を請求され、どのように対応すればいいのか分からない方もいらっしゃると思います。
また、不倫をした以上、慰謝料を請求されることは覚悟していたけれど、予想外に高額な金額に困惑している方も多いかもしれません。
しかし、対応に困り、高額な慰謝料に驚いたからと言って、請求を放置しておくのは一番悪い対応です。夫婦の状況や不倫に至った経緯によっては、不倫慰謝料を払わなくていい場合や、減額できるケースもあるのです。
そこで今回は、不倫をして不倫慰謝料を請求された場合に支払い拒否や減額を請求できる場合や、取るべき対応方法、弁護士に依頼すべきかどうかについてご説明したいと思います。
不倫したら必ず慰謝料請求される?精神的苦痛で請求される5条件
不倫したら、請求された慰謝料は必ず全額払わなければいけないと思っている方はいらっしゃいませんか。
実は、不倫の状況によっては、慰謝料を減額できたり、場合によっては全額払わなくてよくなったりする場合もあるのです。
(1)不倫慰謝料を支払わなくていい3つの場合
不倫したからと言って、必ず請求された慰謝料を払わなければいけないわけではありません。
そもそも、日本では、重婚の禁止(民法第732条)、夫婦の同居・協力・扶助の義務(同法第752条)が規定され、不貞行為が裁判上の離婚の理由とされています(同法第770条1項1号)。
このことから、夫婦には、配偶者以外の異性と性交渉をしないという「貞操義務」があると考えられています。
結婚している夫婦が不倫をすると、貞操義務に違反する不法行為をしたことになります。
平和な夫婦関係を破壊され精神的苦痛を負わされた配偶者は、不倫した夫・妻と不倫相手に対して精神的苦痛を補うための不倫慰謝料を請求できることになります。
しかし、不倫したら必ず慰謝料請求が認められるわけではありません。
例えば、自由恋愛・不倫公認の夫婦や、既に離婚前提で別居しているような場合は、不倫しても夫婦間に守るべき利益がなく精神的苦痛もないだろうと考えられやすく、慰謝料の請求をしても、支払わなくてもいい場合があります。
また、配偶者に不倫を疑われても、慰謝料請求では請求する側がその根拠となる客観的な証拠を集める必要があります。
具体的には、以下の3つの場合は、慰謝料を請求されても支払わなくて済む可能性が高いといえます。
- 不倫の事実そのものがない場合
- 相手が不倫の事実を証明できない場合
- 夫婦関係が破綻した後に不倫していた場合
(2)不倫慰謝料を請求される5つの条件
不倫慰謝料を請求するためには、次の5つの条件を満たす必要があります。
①夫婦が婚姻関係にあること
上記でご説明した「貞操義務」は、結婚している夫婦が負うものです。
そのため、婚姻届けを出して法律的に結婚をしている夫婦であることが条件です。
内縁の夫婦関係の場合は、例外的に夫婦に準じる「準婚」として貞操義務があるとされ、不倫慰謝料が請求できます。
一方、単なる交際相手や同棲相手の場合は、慰謝料請求はできません。
②夫婦関係が破綻していないこと
不倫で貞操義務が侵害され、平和な夫婦生活が破壊されたことにより精神的苦痛を被ったというためには、前提として平和な夫婦生活が存在しなければいけません。
そのため、夫婦関係が破綻している夫婦では、配偶者が不倫しても夫婦間で守るべき利益が存在しないため、精神的苦痛も発生していないとして、慰謝料が請求できません。
ただし、配偶者等が慰謝料を請求してきたら、夫婦関係が破綻していたことを不倫していた側が、具体的な事実を示して立証する必要があります。
③不倫相手と性交渉があったこと
不倫というのは一般的な概念なので、キスやデートから不倫と考えるのは自由です。
また、異性とのキスの現場を配偶者に目撃され、慰謝料を請求されて払うのも自由です。
しかし、法律的に慰謝料を請求できるのは、不貞行為があった場合に限られます。
不貞行為とは、性交渉があったことを指します。
口淫やペッティングでも認めるケースもありますが、裁判になった場合は、もっぱら性交渉があったかどうかが問題になります。
④不倫相手が既婚者だと知っていたこと、知ることができたこと
既婚者と不倫していた場合、慰謝料を請求されるのは、不倫相手が既婚者だと知っていたか(故意)、または簡単に知ることができたのに気付かなかった場合(過失)です。
もし、不倫相手が自分は独身だと嘘をつき、それを信じてもやむを得ない理由があった場合は、故意も過失もないため、慰謝料を払う義務はありません。
ただしこの場合も、不倫相手の配偶者が慰謝料を請求して来たら、ご自身の側で、既婚者だと知らなかったことを具体的な事実をあげて立証しなければいけません。
⑤自由意思で性交渉をしたこと
不倫慰謝料が請求されるのは、双方の自由な意思で性交渉をした場合です。
不幸にも不倫相手に強姦されたり、お酒を飲まされて強引に関係を持たされたり、会社の力関係を利用して無理やり関係されたような場合は、相手方は慰謝料を請求できません。
むしろ、性犯罪として警察に被害届を出すなど、被害者として対応することをお勧めします。
不倫の慰謝料を請求してくる相手と慰謝料請求金額の相場
不倫の慰謝料は、誰でも請求できるわけではありません。
例えば、「ウチの息子をたぶらかした不倫相手が許せない」などと、不倫相手の親が請求することができません。
不倫のパターンによって慰謝料請求できる主体が異なるので、以下をご参考ください。
(1)不倫慰謝料を請求してくる相手とは
①不倫のパターン別の不倫慰謝料請求
不倫の慰謝料を請求してくるのは、不倫によって貞操義務が侵害され、平和な夫婦関係が破壊されて精神的苦痛を被ったと主張する人です。
具体的には、次のように分類できます。
- あなたが独身で、既婚者と不倫した場合 不倫相手の配偶者
- あなたが既婚者で、独身者と不倫した場合 ご自身の配偶者
- あなたが既婚者で、既婚者と不倫した場合(W不倫) 不倫相手の配偶者と、ご自身の配偶者の両方
②不倫相手に未成年の子供がいる場合の慰謝料請求
未成年の子供がいる場合、原則として子供は独自に慰謝料を請求できないのが原則です(最高裁昭和54年3月30日判決)。
ただし、この裁判例では、原則として、未成年の子供から不倫相手への慰謝料請求は認められないけれど、不倫相手が害意をもって親が子供を監護することを邪魔した場合等は、例外的に慰謝料請求が認められるとしています。
つまり、不倫相手に未成年の子供がいる場合に、親として子供に愛情を注ぐ行為を積極的に邪魔したような場合は、配偶者だけでなく子供からも慰謝料を請求される可能性があるのです。
(2)不倫慰謝料の相場とは
不倫慰謝料の相場は、不倫によって家庭がどうなったかによって異なります。
法律で決められた金額はないのですが、概ね次のような金額が目安と言えます。
- 既婚者と不倫したけれど相手夫婦が別居や離婚をしなかった場合 ・・・50万~200万円
- 既婚者と不倫した結果、相手夫婦が別居や離婚をした場合 ・・・100万~300万円
ただし、これはあくまで目安なので、不倫期間や不倫当事者の年齢や社会的地位、不倫相手夫婦に未成年の子供がいるかどうか等の個別の事情によって変わります。
ここでご注意いただきたいのが、不倫慰謝料の負担額です。不倫は1人ではできないので、不倫相手とご自身の2人が責任を負います。
このような類型を「不真正連帯債務」と言います。
不真正連帯債務では、例えば既婚男性と不倫した場合、男性の妻が200万円の慰謝料を請求する場合、夫と不倫相手に100万円ずつ請求してもいいし、不倫相手にだけ200万円全額請求してもいいことになっています。
特に離婚をしない場合は、夫婦同士で慰謝料を請求すると家計を圧迫することもあるので、不倫相手にだけ請求するというケースは少なくありません。
全額支払った不倫相手は、半額を夫に請求することはできるのですが、妻からの慰謝料請求は決められた期限内に一括で払うのが通常なので、金銭的負担が大きくなる恐れがあります。
不倫で慰謝料請求されても無視してはいけない3つの理由
不倫慰謝料を請求され、金額に驚いたり納得できなかったりしたからと言って無視をしてはいけません。
無視をすると、次のようなリスクを負う恐れがあります。
(1)裁判を起こされる可能性がある
慰謝料請求を無視していると、裁判を起こされる可能性があります。
損害賠償請求は、まずは当事者間で請求されることから始まります。
最初は電話や手紙、メールなどの方法で損害賠償を払ってくれという請求を受けます。
不倫の場合、不倫相手を通じて請求されることもあります。
当事者同士の請求で応じない場合、内容証明郵便が送られてくるのが通常です。
内容証明郵便は、誰が、いつ、誰に、どんな内容の手紙を送ったかを郵便局が証明してくれる郵便のことを言い、後日裁判になった場合に、請求された事実が証拠として残ります。
それでも無視していると、相手方は裁判所に訴えを提起します。すると、裁判所から損害賠償請求の訴えを受けた事実が知らされることになります。
裁判になると、手間も負担も増えるので、できるだけ早く対応するようにしましょう。
(2)相手の主張を認めることになる
裁判になっても相手の慰謝料請求を無視していると、相手の主張を認めたことになるので、必ずレスポンスをすることが大切です。
具体的には、裁判所から送られてくる訴訟の通知には答弁書という書類が同封されています。
答弁書は、相手方の主張に対して、自分の主張や反論を書いて提出する書面です。
裁判所から通知が来たのに無視して答弁書を出さず、呼び出しの期日にも裁判所に出向かず無視を続けると、訴えた側(原告)の言い分をすべて認めたことになり、原告の勝訴で裁判が終わることになります。
慰謝料請求は、その全額が認められたことになるため、裁判を起こした不倫相手の配偶者は、強制執行の申し立てをして、預貯金や給料などの差押えをしてくる可能性も否定できません。
(3)希望しても夫婦関係が修復できない可能性がある
夫婦が離婚するのは大変なパワーが必要なため、不倫しても元のさやに納まる夫婦もいます。
不倫で慰謝料を請求して来たのがご自身の配偶者の場合、最初のうちなら話し合いの余地がありますが、それすら放置しているともはや夫婦関係の修復は困難になります。
不倫という裏切りに加えて、精神的苦痛の訴えを無視したとなると、配偶者が負うダメージは一層大きくなるからです。
夫婦だから許してくれるだろうと考えるのは甘いと承知し、慰謝料を請求されたらまずは話し合いの場を持つことが大切です。
夫婦だけでは感情的になってしまう場合は、弁護士など専門家の第三者を間に入れて話し合いを行うことも有効です。
不倫慰謝料を払えない場合に減額できるケース
上記で、不倫慰謝料を請求されても払わなくていい場合をご説明しました。
不倫慰謝料を払わなければいけない場合でも、全額を払わず、減額を交渉できる場合もあります。
具体的には、次のようなケースでは、減額を交渉できる可能性があります。
(1)請求額が相場と比べて高額すぎる
不倫慰謝料は、離婚に至った場合でも、通常は300万円以下で済む場合が大半です。
相場に比べて高すぎる慰謝料を請求された場合は、減額できる可能性があります。
但し、当事者の社会的地位や収入、不倫の程度によって異なるので、高いと思った場合でもまずは弁護士に相談してみて下さい。
(2)不倫相手の夫婦が離婚せず家庭崩壊していない
不倫慰謝料は、不倫によって被った精神的苦痛に対する損害賠償です。
離婚に至らない、既に許している等の事情があれば、不倫で離婚に至った場合に比べて精神的苦痛が小さいと考えら、不倫慰謝料が減額できる場合があります。
(3)既婚者が積極的に不倫に誘った経緯がある
不倫の当事者が上司と部下で、既婚者である上司の方が積極的に不倫を持ちかけたなどの事情があれば、慰謝料を減額できる可能性があります。
ただし、配偶者の感情を逆なでする可能性もあるので、主張は弁護士を通すなどして冷静に行うことをお勧めします。
(4)不倫期間が短かったり、性交渉の回数が少なかったりする
不倫の期間が長く、肉体関係の回数が多いほど精神的苦痛は大きくなると考えられます。
そのため、不倫期間が数か月程度で性交渉の回数も数回程度の場合は、慰謝料を減額できる可能性が高いです。
(5)収入が少ない
慰謝料を請求された配偶者や不倫相手の収入が少ない場合は、慰謝料の減額が期待できます。
慰謝料の減額をするには、上記に当たる事実を示して、冷静に交渉することが大切です。
当事者が顔を合わせると、感情的になって話がこじれることもあるので、心配な場合は弁護士を間に入れて交渉することをお勧めします。
不倫慰謝料を払えない場合に分割できるケース
不倫慰謝料が支払えない場合、減額だけでなく分割してもらえるケースがあります。
必ず一括で支払う必要はありません。
分割にさせてもらえるかどうかは、請求相手次第です。
請求相手から分割払いの許可が得られたら、支払いの回数を決めます。
ただし、不倫慰謝料の分割払いについて請求相手を納得させられない場合、一括での支払いを要求されかねません。
ですので、強制執行の条項が記載されている示談書を公正証書で作成したり、分割払いごとに期限を設けたりして、請求相手に信用してもらいましょう。
請求相手を説得するのが困難な場合は、不倫問題に強い弁護士に相談してみてください。
不倫慰謝料を払えない場合に弁護士なしで対応できるか
不倫慰謝料を請求されても払えない場合には、通常一括払いのところを分割払いで許してもらうよう交渉したり、減額を交渉したりすることが考えられます。
不倫慰謝料は民事事件という分野になるので、弁護士をつけなくてもご自身でこのような交渉を対応することも可能です。
しかし、不倫をされて怒りに溢れ、感情的になっている配偶者と冷静に話し合うのは難しい場合が多いです。
このような交渉をするには、まずは反省と謝罪をして相手の気持ちを落ち着かせて交渉をする必要があります。
しかし、特に不倫をした側にも言い分がある場合は、交渉がもめて事態が悪化するケースも少なくありません。
また、慰謝料請求そのものが発生しないと考えられる場合や、減額を請求する場合は、客観的証拠を示す必要もあります。
このような場合は、弁護士を頼んでも、費用倒れにならず、結果的にメリットがある場合も少なくありません。まずは法律相談を利用してご検討ください。
不倫慰謝料を請求された側が弁護士に依頼するメリット
不倫慰謝料の請求には、弁護士を入れずに当事者間で交渉することもできます。
慰謝料を払わなくてはいけない上に、弁護士費用まで払う余裕はないと考える方もいらっしゃると思います。
しかし、弁護士は、最初の相談は無料の法律事務所も少なくありませんし、弁護士費用を払って依頼しても、最終的なメリットが大きいこともあります。
具体的には、次のようなメリットがあるので、検討する際の参考にしてみてください。
(1)不倫慰謝料を請求されても払わなくていい場合の見極めがつく
不倫慰謝料は、不貞行為の存在や夫婦関係が破綻していないことなどの条件が揃わなければ、請求されても払う必要はありません。
不倫慰謝料を請求され「払わなければ裁判にかける」などと言われると焦ってしまいますが、弁護士であれば、法的観点から根拠がある慰謝料請求かを判断できるので、払う義務があるか同課のアドバイスを受けることができます。
(2)法外な慰謝料請求に対して適正な交渉ができる
慰謝料請求は、怒りにまかせて相場をはるかに超える法外な慰謝料を請求してくる場合があります。
また、会社を辞めることや、引っ越しなど、お金以外の請求をしてくる場合もあります。
しかし、不倫の損害賠償は、慰謝料という金銭賠償以外が応じる必要はありませんし、法外な要求には相場を示して適正な交渉により対応すべきです。
当人同士では難しい交渉も、弁護士であればすべて任せることができます。
(3)トラブルの蒸し返しを防げる
不倫慰謝料請求は、当事者間で交渉して解決したと思っていても蒸し返される場合があります。
具体的には、慰謝料を貰って夫婦が元鞘に収まったけれど、愛情が冷めて関係修復できないような場合に、昔の不倫相手に恨みが再燃するような場合です。
弁護士が間に入って交渉した場合は、紛争の蒸し返しを防ぐ内容を入れた合意を締結することができるので、トラブルの蒸し返しや、慰謝料の二重払いを防げます。
(4)対応を全て任せることができ安心できる
弁護士に頼んで代理人になってもらうと、配偶者は弁護士と交渉することになり、原則として不倫相手に直接慰謝料を請求することはできなくなります。
そのため、交渉のストレスから解放され、万が一裁判まで解決が長びいた場合でも弁護士に代わりに出廷してもらえるので、生活への影響も最小限に抑えられます。
まとめ
今回は、不倫慰謝料を請求された場合の対応についてご説明しました。
慰謝料を請求されても払わなくていい場合があることや、減額できる場合があることに驚いた方もいるかもしれません。
不倫慰謝料の請求はとかく感情的になりがちなので、裁判で認められる範囲を超える請求をされることも少なくありません。
このような場合は、弁護士に相談し、間に入ってもらって交渉することで、適正な内容で解決を図ることができ、ご自身も対応する精神的負担から解消されることができます。
不倫慰謝料の相場や、慰謝料の支払いは、不倫の状況によって大きく異なるので、慰謝料を請求されてお悩みの場合は、まずはお気軽に弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。