マッチングアプリで不倫慰謝料を請求されるケース|既婚者の出会いや浮気相手探しのリスクを解説
「夫婦関係がマンネリ化しているのでマッチングアプリで不倫相手を探したい」
「マッチングアプリで友達を作りたい」
など、結婚している方の中にも、マッチングアプリで気軽に浮気相手を探して楽しみたいとお考えの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
マッチングアプリの中は、「アプリで知り合ったセカンドパートナーとの関係は不倫にならない」と書いてあるものもあったり、気軽な出会いのツールとして利用されていますが、出会った相手との関係によっては、慰謝料を請求される不倫に該当したり、配偶者から離婚を請求される可能性もあります。
そこで、今回のコラムでは、マッチングアプリで不倫相手や浮気相手を探すリスクや、慰謝料請求をされるケースについて説明します。
既婚者がマッチングアプリを使うと不倫になるか
不倫の概念は、人それぞれです。
夫や妻以外の異性の友達を作ろうとすること自体が不倫だと考える方もいるかもしれません。
不倫は一般的な概念なので、どこにボーダーラインを引いても構いません。マッチングアプリを使うことが不倫、アプリで出会った人とデートしたら不倫と考えても自由です。
しかし、マッチングアプリを使うことが、慰謝料請求や離婚原因になる法律上の不倫にあたるかというと問題があります。
法律上の不倫とは、不貞行為をしたこと、つまり、既婚者が配偶者以外の異性と自由な意思で性交渉をしたことを言います。
マッチングアプリを利用しただけ、マッチングアプリで出会った人と食事をしただけ、キスをしただけ、では、法律上の不倫である不貞行為には当たりません。
反対に、1回限りの性交渉でも不倫(不貞行為)になりますし、お互いに割り切った関係だからといって不倫にならないということはありません。
マッチングアプリで出会ったセカンドパートナーとの関係が不倫になる場合
マッチングアプリなどで出会った相手と、食事を楽しんだり、デートをしたりなど、性交渉を伴わない異性との関係を「セカンドパートナー」という場合があります。
セカンドパートナーについては、明確な定義があるわけではありませんが、夫や妻以外で恋心を抱いている異性だったり、デートや食事、ハグやキスはするけれど性交渉をしない相手だったりと考えられています。
よく言う「愛人」は、性交渉を伴うのが普通なので、性交渉をしないことを前提としているのが、セカンドパートナーと言えるでしょう。
セカンドパートナーは、セックスつまり不貞行為がないので不倫にならないというのは、法律的には正しいです。
そのため、原則として慰謝料の請求や離婚の原因になりません。実際、不倫にならないから大丈夫とセカンドパートナーを持つことを推奨しているマッチングアプリのサイトもあるようです。
しかし、法律上の不倫に当たらなくても、セカンドパートナーとの関係が、社会の一般常識に照らして度を越して親しい場合には、以下の裁判例のように慰謝料の請求が認められる恐れがあります。
(1)夫婦仲を悪化させる一因と認めた事案
夫の態度が冷たいことに悩んだ妻が、夫と食事やデートを繰り返していた同僚の女性に慰謝料を請求した裁判で、性交渉はなくても通常の男女の関係を超えていること、行為を寄せる夫に対する女性の態度が、夫婦仲を悪化させる一因と認めた事案(大阪地裁平成26年3月判決)
(2)夫婦関係の平穏を害したと認めた事案
妻が、夫と旅行に行くなどしている女性に対して慰謝料を求めた裁判で、既婚者と2人で旅行したり高額なプレゼントを贈りあったりするのは社会通念を超えた関係として、夫婦関係の平穏を害したと認めた事案(東京簡裁平成15年3月25日判決)
マッチングアプリを使った不倫で慰謝料を請求される5つの条件とは
不倫で慰謝料が請求されるのは、原則として不貞行為をした場合とご説明しました。
結婚している夫婦には、夫や妻以外とは性的関係を持たないという「貞操義務」があります。
この義務に違反して不貞行為をすると、された側はショックを受けて精神的苦痛を受けてしまいます。慰謝料は、この精神的苦痛をお金でカバーするものです。
日本の民法という法律で、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」と定められているのですが、これを不倫について考えると、故意(わざと)又は過失(不注意)で他人の権利(貞操義務)を侵害した者は、相手に与えた損害(精神的苦痛)を賠償しなければいけない、という意味になるのです。
これをもとに、不倫で慰謝料を請求される条件は次の5つにまとめることができます。
(1)不貞行為があること
不貞行為とは、結婚して夫や妻がいる人が、配偶者以外の異性と自由な意思で性的関係をもつことを言います。
この「性的関係」が何かというと、裁判では性交渉(セックス)をさすと言われています。実務では、口淫やペッティングなど、射精を伴う性交類似行為も含まれると考えられています。
キスやハグ、デート、プレゼントなどでは不貞行為にあたりません。
(2)自分が結婚していること
不倫慰謝料を請求するには、ご自身が婚姻届けを出して法律的に結婚していることが必要です。貞操義務は、結婚している夫婦が守らなければいけない義務だからです。
例外的に、内縁関係の場合でも、婚姻届を出していないだけで夫婦と同様の生活をしている場合は、貞操義務があるとして、不貞行為をすると慰謝料を請求されます。
なお、ご自身が独身でも、不倫相手が既婚者の場合は、相手の配偶者から慰謝料を請求される恐れがあります。
(3)ご自身の結婚関係が破綻していないこと
不倫慰謝料は、夫や妻が不貞行為をしたことで、夫婦関係が壊されて受けた精神的苦痛をお金で補うものです。
そのため、夫婦関係が冷え切って別居している、離婚手続きを進めているなど、既に夫婦関係が破綻している場合は、そもそも精神的苦痛がないので慰謝料は請求できません。
(4)相手が既婚者であると知っていること
たとえば、夫が不貞行為をした場合は、妻から慰謝料を請求されます。しかし、妻が夫の不倫相手にも慰謝料を請求する際は、不倫相手が夫を既婚者と知っていたか(故意)、簡単に気づけたのに気づけなかった場合(過失)でなければなりません。
マッチングアプリで独身と嘘の登録をして、相手が独身だと信じる理由があった場合は、故意過失がないので、不倫相手には慰謝料の請求ができないことがあります。
マッチングアプリの場合、既婚・未婚の欄が空欄にしている方もいますが、このような人は既婚者が多いとも言われています。
空欄だから独身と思った、という言い訳が通じるとは考えにくいのが実情です。
(5)自由な意思に基づく関係であること
性交渉をした場合でも、強姦・レイプなど自由意思に基づかない場合は不貞行為にならないので、慰謝料請求はできません。
むしろ、強姦した場合は、強制性交等罪(刑法177条)にあたり、逮捕・勾留され、前科がつく可能性も高いです。
マッチングアプリの不倫で請求される慰謝料の相場とは
マッチングアプリで不倫(不貞行為)をした場合、不倫が夫婦関係に及ぼした影響によって、慰謝料の相場が変わってきます。
- マッチングアプリでの不倫が原因で離婚・別居した場合…100~300万円
- 離婚や別居をせず、夫婦関係を続ける場合…50~100万円
ただし、これは裁判になった場合の相場なので、夫婦で話し合いをして決める場合は金額が変わることもあります。
また、その他にも次のような事情が慰謝料の額に影響します。
- 配偶者と不倫相手の年齢差(年齢差が大きいと年上の方の慰謝料が増額されやすい)
- 結婚期間(長いほど増額されやすい)
- 夫婦関係(円満なほど増額されやすい)
- 収入・社会的立場(不倫した側の収入が多い、社会的地位があると増額されやすい)
- 不倫期間(長いほど増額されやすい)
- 不倫の程度(家庭を壊そうとする、別れると約束したのに復縁したなど悪質性が高いと増額されやすい)
- 子供の有無(小さい子供がいると増額されやすい)
マッチングアプリを使って不倫していた配偶者に制裁を加えたい方へ
(1)離婚するか、慰謝料請求か、決めるべき2つのこと
夫婦が話しあって離婚する場合には、離婚原因はどんなものでもいいのです。しかし、話合いがまとまらず、裁判を起こして離婚する場合は、日本では法律で決められた離婚原因がなければいけません。
これを「法定離婚事由」といい、「不貞行為」もその一つです。
ですので、夫や妻がマッチングアプリで不倫(不貞行為)をしていることを知った場合は、制裁として離婚するか、上述のように慰謝料を請求するか選ぶことができます。
また、離婚して慰謝料を請求しても、離婚せずに慰謝料だけ請求することもできます。ご自身の生活や、相手を許せるかどうかなど、検討して決めましょう。
(2)まず対応しておくべきこと
マッチングアプリで不倫(不貞行為)をした配偶者には、離婚や慰謝料請求の制裁を加えることができますが、今すぐ決められない、何もできないという人もいらっしゃると思います。そのような場合は、無理をする必要はありません。
ただ、不倫慰謝料の請求には3年という時効があります。もし、後々制裁を加えたくなった場合に備えて、離婚や慰謝料請求をするための証拠集めはしておきましょう。
集めるべき証拠としては、次のようなものを参考にしてください。
①SNSやメールのやりとりの内容
性交渉をした内容や、性交渉をしたことをほのめかすようなメールやLINE等のやりとりは、印刷したり写真にとったりするなどして保存しておきましょう。
最近は少ないですが、性交渉の感想を述べたような手紙も証拠になります。
②写真や動画
配偶者と不倫相手がラブホテルや相手の自宅に一緒に入る様子を写した写真や動画は有力な証拠になります。ご自身で撮ることが難しい場合は、探偵などに頼むのも方法です。
③音声
性交渉をしたことを話している内容や、性交渉中の音声データも証拠になります。
④領収書
ラブホテルの領収書や、旅行先のホテルの領収書などは証拠になります。ただし、シティホテルでは、それだけでは不貞行為の証拠としては不十分なケースもあります。
(3)マッチングアプリで不倫した配偶者にペナルティを加える際に注意すべきこと
不倫した配偶者を許せない気持ちは誰しもあると思います。しかし、制裁・ペナルティを加える際には、ご自身が違法な行為をしないこと、証拠を無駄にする行為をしないことに注意が必要です。
具体的には、次のような行為が問題になりやすいのでご注意ください。
①暴行、脅迫
不倫をした配偶者や不倫相手が許せないからと言って殴る、蹴るなどの暴力を奮うと、暴行罪(刑法208条)にあたり、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料の処罰を受ける可能性があります。
これは、夫婦間であっても同様です。よくドラマで、不倫相手に水をかけるシーンがありますが、これも暴行罪にあたります。
相手がけがをすると、傷害罪(同204条)として、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金とさらに重い刑が科せられます。
また、証拠を集めようとして、相手を脅すなどすると、脅迫罪(同222条)に当たる可能性もあります。
②データの完全コピー
不貞行為の証拠を見つけようとして、メールやSMSのデータを全部コピーするような行為はしてはいけません。
プライバシーの侵害に当たるとして、せっかくその中に不貞行為の証拠があっても裁判で証拠として認められないばかりか、逆に損害賠償を請求される恐れもあります。
③メールなどの盗み見
同様に、不倫が疑われる配偶者のメールなどを盗み見する行為も、その中に不貞行為の証拠があっても証拠として認められません。
メールは信書と同じように、やり取りした当事者しか見られないものと考えられているからです。
マッチングアプリの不倫がばれた場合にやるべきこと・やってはいけないこと
マッチングアプリで不倫やセカンドパートナーを探したい方には軽い関係を希望し、離婚まで考えていないという方も少なくありません。
離婚をしたくない方がマッチングアプリで不倫(不貞行為)をしたことがばれた場合、まずやるべきことは謝罪と不倫関係の解消です。
不倫関係が長引くほど、慰謝料額は高くなりますし、不倫をしたことが明らかなのに不合理に否定ばかりしていることも、慰謝料を増額させる理由になります。
やってはいけないことは、上記のように不合理な否定を続けること、そして不倫相手との関係を解消させようとして脅したり、名誉を棄損したりするようなことを伝えることです。自分が別れたいばかりに、不倫相手の家族に不倫をばらすと脅すなどすると、脅迫罪に当たる可能性があります。
マッチングアプリの不倫がばれた場合に弁護士に相談するメリット・デメリット
マッチングアプリの不倫がばれた場合、夫婦関係を修復して、円満に解決したいとご希望の方が多いのではないでしょうか。
そのような場合に弁護士に相談するメリットとしては次のようなものがあります。
- 慰謝料を請求された場合に、適切な額かアドバイスがもらえる
- 離婚を請求されたが応じたくない場合に、間に入って交渉してもらえる
- 不倫相手が別れてくれない場合に、代理人として話をしてもらえる
- もし離婚が避けられない場合には、財産の分け方なども相談できる
- 離婚裁判になった場合には、必要書類の準備や出廷を代わりにすべてやってもらえる
反対にデメリットとしては次のようなものがあります。
- 相談料がかかる場合がある
- 依頼すると弁護士費用がかかる
気軽なつもりで始めたマッチングアプリが、夫や妻にばれて大変なことになったという話も少なくありません。弁護士を間に挟むことで、冷静な話し合いができ、もし離婚が避けられない場合でも条件面での交渉を依頼するなど、専門家ならではのできることが多くあります。
相談料は初回無料という弁護士事務所も多いので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、マッチングアプリで不倫慰謝料を請求されるケースなど、マッチングアプリを利用する際のリスク、不倫された側ができる対応について解説しました。
マッチングアプリは、気軽な出会いの場として最近多くのものがリリースされていますが、実はセカンドパートナーだから安心、お互いに割り切った関係だから安心というものではないのです。
気軽な気持ちで始めたマッチングアプリの不倫で、不倫慰謝料や離婚問題に発展してお悩みの方や、夫や妻がマッチングアプリの不倫をしていてお悩みの方は、法律の専門家である弁護士に相談してみることをおすすめします。