夫や妻の不倫が離婚問題に発展しそうな際の対策方法
不倫をした夫や妻に対して、妻や夫は、慰謝料の請求だけではなく、離婚を請求することができます。
しかし、不倫相手との再婚を考えているなど、不倫をした夫や妻の方から離婚を切り出されることも珍しくありません。
離婚を切り出す方はそれなりに準備をしてから切り出すことが多いと思われますが、切り出された方は突然の事態にパニックになり、どうしたらいいかわからなくなるのではないでしょうか。
そこで今回は、不倫をしている夫や妻から離婚を切り出されそうな場合、あるいは実際に切り出されてしまった場合の対処法を解説します。
不倫した配偶者から離婚を切り出されそうな場合の対処法
(1)離婚した場合の生活を予想する
まず、夫や妻から離婚を切り出された場合に備えて、離婚はしたくないのか、条件次第では離婚に応じてもいいのかを予め考えておく必要があります。
そのためには、離婚後の生活についてできる限り具体的に予想することが重要です。
離婚後にどこに住むのか、専業主婦(主夫)やパートの方は仕事をどうするのか、未成年の子どもがいる場合にはどちらが子どもを養育するのかなど、考えなければならないことはいろいろあります。
これらの事情を考慮して、夫婦関係の修復を目指すのか、条件次第では離婚に応じるのか、ある程度自分の中で考えをまとめておくと、いざ夫や妻から離婚を切り出されても、冷静に対処することができるでしょう。
(2)不倫の証拠を確保しておく
離婚に応じるにせよ夫婦関係の修復を目指すにせよ、夫や妻の不倫の証拠を確保しておくことも重要です。
不倫をした夫や妻は、原則としてその配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負いますし、また、原則として裁判で自分の方から離婚を請求することもできません。
そのため、不倫をした夫や妻が、不倫をしたことを隠し、性格の不一致など他の理由を挙げて離婚を切り出してくる可能性は十分にあります。
したがって、不倫をしたことを理由に夫や妻に慰謝料を請求するにせよ、離婚の請求を拒否するにせよ、いずれの場合でも不倫についての証拠を集め、確保しておくことが重要になります。
不倫に関する証拠集めは、配偶者から離婚を切り出された後に行うことも不可能ではありませんが、証拠集めは早い方がいいですし、離婚を切り出した後は夫や妻が警戒して証拠を入手することが難しくなる可能性もあるので、離婚を切り出される前に取り掛かるといいでしょう。
(3)離婚の原因を探る
不倫をした夫や妻のすべてが離婚まで考えているわけではありません。
もし、夫や妻から離婚を切り出されたとしても離婚をしたくないという場合は、なぜ夫や妻が離婚まで考えているのか、その原因を探る必要があるでしょう。
もし原因に思い当たることがあり、それが改善できるようなものであれば、夫や妻から離婚を切り出される前に改善することで、離婚を切り出すことを思いとどまらせることができる可能性があります。
不倫した配偶者から離婚を切り出された場合の対処法
不倫した配偶者から離婚を切り出されそうな場合と違ってすでに夫や妻から離婚を切り出されてしまった場合の対処法については、上記「不倫した配偶者から離婚を切り出されそうな場合の対処法」に加えて次のようなことに注意が必要になります。
(1)離婚届不受理申出をしておく
配偶者から離婚を切り出されたとしても、すぐに離婚に同意できるとは限りません。
しかし、夫や妻がどうしても早く離婚をしたいと考えて、勝手に離婚届を作成して役所に提出してしまう可能性がないとは言い切れません。
そのような事態を防ぐために、夫や妻から離婚を切り出された場合は、念のために役所に離婚届の不受理の申し出をしておくといいでしょう。
この申し出をしていれば、夫や妻が勝手に離婚届を作成して役所に提出しようとしても、役所は離婚届を受理しませんので、知らないうちに形式上離婚したことになっていたという事態を防ぐことができるのです。
(2)感情的ならずに話し合いをする
夫や妻から突然離婚を切り出されると、パニックになったり、自分には落ち度がないのになぜ離婚を要求されるのかとかっとなってしまったりするかもしれません。
しかし、かっとなって感情的になると、夫や妻も感情的になってしまい、売り言葉に買い言葉で口論になるなど、まともな話し合いができなくなるおそれがあります。
どれだけ腹を立てたとしても、話し合いは感情的にならずに冷静に進めることを心がけましょう。
(3)不倫相手と別れさせる
不倫をした夫や妻との夫婦関係の修復を希望している場合、夫や妻と不倫相手を別れさせることを考えなければなりません。
とはいえ、不倫相手の家や職場に直接怒鳴り込むようなことをするとトラブルになりかねません。不倫相手に対する言動の内容次第では、脅迫・恐喝などと言われてしまう可能性もあります。
そこで、まずは不倫相手に対し慰謝料請求をし、その交渉の過程で夫や妻と別れることを条件に慰謝料の減額あるいは免除をするという提案をするという方法が考えられます。慰謝料請求については、下記「慰謝料請求の可否」で改めて解説します。
(4)専門家に相談する
離婚を切り出す側は、自分のタイミングで切り出すことができるわけですから、配偶者が離婚に応じてくれる場合にどのような条件で離婚するか、配偶者が離婚に応じない場合にはどうするかなどといったことについて、事前に十分に検討し、対策を練ることが可能です。
これに対し、離婚を切り出される側は、事前に何の対策もしていないことも珍しくないでしょう。
そうなると、夫や妻のペースで交渉が進められてしまい、あれよあれよという間に不本意な合意をしてしまわないとも限りません。
そのような事態を防ぐには、やはり専門家である弁護士に相談し、夫や妻との交渉についてアドバイスを受けたり、交渉を依頼したりすることが望ましいと言えます。
慰謝料請求の可否
(1)配偶者に対する慰謝料請求
不倫は、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害する行為です。
そのため、夫や妻がした不倫は、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害する行為(不法行為といいます)にあたることになるので、損害賠償(慰謝料)を請求することができます。
ただし、不倫よりも前に別の理由ですでに婚姻関係が破綻してしまっているような場合、もはや婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益はないとされ、不法行為は成立しません。不法行為が成立しない以上、慰謝料の請求も認められません。
(2)不倫相手に対する慰謝料請求
不倫相手は、夫または妻ともに、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害したといえます。
したがって、不倫相手にも不法行為が成立するので、損害賠償(慰謝料)を請求することができます。
ただし、不倫よりも前に別の理由ですでに婚姻関係が破綻してしまっているような場合に不法行為が成立しないことは、⑴と同じです。
また、不倫相手に、「婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益」を侵害したことについて故意も過失もなかった場合、つまり、夫や妻が既婚者であることを知らず、知らなかったことについて落ち度もない場合も、不法行為は成立しません。
まとめ
不倫をした夫や妻から離婚を切り出されそうになった場合、あるいは離婚を切り出された場合の対応等について解説しました。
夫や妻の不倫にお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。