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夫婦関係調整調停とは?手続きの流れと必要な準備を解説

夫婦問題の解決や離婚の条件交渉では、しばしば当事者間の話し合いではなく、調停を利用して解決を図られることがあります。
夫婦二人だけでは解決の糸口が見えないケースで、調停は非常に便利な制度です。ぜひ覚えておきましょう。

この記事では、夫婦関係調整調停の手続きや準備、注意点などを紹介していきます。

夫婦関係調整調停とは

夫婦関係調整調停とは、その名のとおり「夫婦の関係を当事者の望む方向に調整する」目的で設けられた調停制度です。
離婚したい場合だけでなく、相手に生活態度を改めて欲しいなど、夫婦間に発生した不満を解消したい場合などでも利用できます。

(1)調停は裁判所を間に挟んだ話し合いの場

そもそも調停とは「裁判所を間に挟んでの話し合い」のことです。
何かしらトラブルが発生したが当事者だけでは解決が難しい場合に、仲裁・調整役である調停委員が間に入ってくれます。

調停は、おもに家庭でのもめ事を取り扱う「家事調停」と、他人の間で発生した問題を解決する「民事調停」の二種類に分かれます。
夫婦関係調整調停は家事調停の一種です。

調停というと物々しい雰囲気がありますが、申立には必ずしも紛争が発生している必要はありません。
制度上は家族喧嘩やご近所トラブルの解決など、軽微な争いが原因でも利用することができます。

(2)夫婦関係調整調停の二つの種類

夫婦関係調整調停には「夫婦関係調整調停(円満)」「夫婦関係調整調停(離婚)」の二種類の手続きが存在し、申立の際にどちらかを選ぶことになります。

円満調停は夫婦関係を改善することを目的とした調停であくまで夫婦関係の維持を目標として話し合いを進めます。
一方離婚調停は、離婚を目的とした合意の獲得や離婚条件の交渉のために申し立てます。
最終的な着地点でどこを目指すかによって、種類が変わる点に注意してください。

(3)夫婦関係調整調停の流れ

夫婦関係調整調停は、おおむね以下の流れで進行します。

  1. 夫婦どちらかによる調整の申し立て
  2. 家庭裁判所から呼出状の送付
  3. 一度目の話し合い
  4. 二度目の話し合い(二度目以降は必要に応じて)
  5. その後月に一度話し合いが行われる
  6. 調停成立・取り下げ・または不成立のいずれかで終了

調停は、早い場合は一日で終了することもありますが、話し合いがまとまらない場合は複数回にわたって行われることもあります。
話し合いは平日の日中に開かれるため、必要に応じて仕事を休むなどの都合をつける必要があります。

夫婦関係調整調停の手続き

夫婦関係調整調停を申し立てる際、どのような手続きで、どこに申し立てればよいのでしょうか。手続きの詳細を確認してみましょう。

(1)調停は家庭裁判所に申し立てる

夫婦関係調整調停は家事事件の一種のため、通常の裁判所ではなく家庭裁判所に申し立てます。
管轄は配偶者の住所地の家庭裁判所か、当事者の合意によって定めた家庭裁判所です。
夫婦が同居しているケースであれば、住所地を管轄している家庭裁判所に申し立てるのが一般的です。

各地方自治体の家庭裁判所と管轄は以下のサイトから調べることができます。
参考:各地の裁判所|裁判所

(2)必要書類と費用

夫婦関係調整調停の手続きには、以下の必要書類と費用の準備が必要です。

【申し立てに必要な書類】

  • 申立書(1通)
  • 申立書の写し(1通)
  • 夫婦の戸籍謄本(全部事項証明)または住民票
  • 連絡用の郵便切手

※離婚調停の場合は財産関連の書類なども必要に応じて求められる場合があります。

申立書は家庭裁判所の窓口で配布しているほか、各自治体の裁判所のWEBサイトからダウンロードできます。
なお、都道府県ごとに様式が異なる場合があるため、提出先の市区町村の裁判所で配布しているものを使用してください。

【申し立てに必要な費用】
1,200円
※申し立ての手続き前に金額分の収入印紙を購入し、申立書に貼付して提出してください。

(3)調停をせずにいきなり裁判を起こすことはできない

最終的に離婚を目標としている場合などは、調停ではなくいきなり裁判を起こせばよいのでは、と思う方もいるかもしれません。
実は離婚問題など家事事件の争いには「調停前置主義」という原則があり、一部例外はありますが基本的に調停を省略して訴訟を起こすことはできません。

いきなり訴訟を申し立てた場合、家庭裁判所の職権により訴訟手続きが停止され、調停に移行されます。

夫婦関係調整調停の準備

実際に夫婦関係調整調停の利用を検討する場合や、呼出状が届いたときはどのように対処すればよいでしょうか。調停の前の準備内容を見てみましょう。

(1)家庭問題に詳しい弁護士を探しておく

家事調停、とくに離婚調停においては、家庭問題を専門とする弁護士に同席を依頼することをおすすめします。というのも、ひとりでは調停を有利に進められない場合があるからです。

調停では、限られた時間の中で調停委員からの質問に答え、また相手方からの主張に反論しなければなりません。
ときには相手方からの心無い主張に動揺し、スムーズに考えを伝えられないこともあるでしょう。

弁護士に代理人として同席してもらえば、自分の主張や思いを調停委員にしっかりと伝えてくれます。
また弁護士は場慣れしているため、相手方からの虚偽の主張などにも落ち着いて反論できます。調停の場で配偶者と争うのであれば心強い味方となってくれるでしょう。

なお、夫婦関係調整調停に参加できるのは当事者と代理人のみです。友人や知人など付き添いの方は調停そのものには参加できません。

(2)自分の言いたいことを整理しておく

夫婦関係調整調停では、自分の言いたいことをあらかじめ整理しておくことが重要です。
調停当日は調停委員からさまざまなことを聞かれるため、事前に回答を準備しておかなければ即座に応えられないケースもあります。

たとえば離婚調停の場合、慰謝料請求の意向や子どもの親権に関する内容、現在の婚姻費用(生活費)の負担などは必ず聞かれるポイントです。
メモ書き程度でもよいので、想定質問と回答を記して会場に持って行きましょう。

調停当日の流れ

実際に調停に赴いた際、当日の進行は以下の流れで行われます。

  1. 事前に指定された待合室で待機
  2. 調停の手続きに関する説明を受ける
  3. 調停(話し合い)の開始
  4. 次回の日程の決定(あれば)

では、調停当日のポイントを確認してみましょう。

(1)夫婦の待合室は別で用意される

調停では、開始までの間や相手方の面談中などは待ち時間が発生します。
この間は待合室で待機となります。夫婦の待合室はそれぞれ別で用意されるのが通例です。
どちらが自分の待合室か分かるよう表示がありますので、間違えないよう注意しましょう。

待機中は、主張の整理や相手方の主張に対しどう反論するかを考える時間として利用できます。弁護士を伴っている場合はこの間に打ち合わせをしてもよいでしょう。

(2)調停委員との面談をおこなう

調停は、自分と相手方が交互に調停委員と面談する形で進行します。一度の面談が約30分程度で、全体の所要時間は2時間から3時間程度取られることが多いです。

調停委員との面談では、なるべく論理的かつ冷静に受け答えできるのが望ましいです。
調停委員から相手方の面談で聞き取った主張を伝えられますが、自分と相手で事実認識が異なる場合もあるでしょう。
こういった場合も熱くならず、しかし意図は明確に自分の考えを伝えてください。

(3)調停は途中で取り下げることが可能

申し立てた調停はいつでも取り下げることができます。たとえ初回の調停が完了した後でも問題ありません。
たとえば、二度目の期日が到来する前に配偶者との間で話し合い、今後の方針がまとまった場合などに取り下げができます。

取り下げにあたっての理由は何でもよく「調停の必要がなくなった」「体調を崩した」「話し合いたくなくなった」などでも問題ありません。

なお、調停を取り下げることができるのは申立人だけです。相手方が申し立てた調停を勝手に取り下げることはできません。

(4)当日質問される内容は?

当日質問される内容は調停の種類や目的よって異なりますが、夫婦関係調整調停では、ほとんどの場合以下の内容は確認されます。

【夫婦関係調整調停で質問される内容(一例)】

  • トラブル発生以前の夫婦の生活状況
  • 今の夫婦関係にどのような不満があるのか
  • 問題解決のためにどのような努力をしたのか
  • 今後配偶者とどうなりたいか

夫婦関係のこれからと現状の問題、そして将来の目標の三点は確認されます。事前に答えを整理しておきましょう。

調停で合意した内容に法的効力はある?

仮に調停が成立した場合でも、配偶者が誠実に対応してくれなければ合意内容を無視される可能性はあります。
調停で定めた内容を反故にされてしまうリスクはないのでしょうか。調停の合意内容に対する法的効力について考えてみましょう。

(1)金銭に関する合意内容には確定判決と同じ効果がある

まず、婚姻費用や養育費など、金銭に関する合意をして調停が成立した場合、この結果は確定判決と同じ法的拘束力を持ちます。
これは、調停成立時に作成される「調停調書」が、強制執行の手続きが可能な書類(債務名義)の一種だからです。

なお、調停の内容や目的によっては、債務名義としての効力を持たせるには別途「執行文の付与」という手続きが必要なケースもあります。

婚姻費用や養育費の支払いを無視する場合は差し押さえによる強制執行が可能です。そのため調停の結果は強い強制力を持つと言えるでしょう。

(2)生活態度や改善の努力に関しては法的拘束力なし

一方、円満調停では金銭の支払い以外の約束ごとを設けることもあります。
たとえば「妻の負担を減らすため夫の家事負担を増やす」「夫にストレスをぶつけないよう努力する」などです。

こういった合意内容に関しては法的な拘束力はありません。仮に円満調停で飲酒量を減らすと約束しその後改善が見られなくても、法的手段を駆使して禁酒を強制することは不可能です。
あくまでも夫婦の今後に向けた方針の擦り合わせ程度に考えておきましょう。

調停が成立しなかった場合はどうなるのか

夫婦関係調整調停は、あくまで夫婦間の任意による話し合いです。
調停委員は合意がまとまるようアドバイスはしますが、合意するよう当事者に強制するわけではありません。
そのため、合意がまとまらない場合は調停委員会が「不成立(不調)」として判断し、調停が終了することもあります。

調停が不成立に終わった場合、その後の考えられる選択肢は以下の3種です。

  1. 離婚訴訟に発停する
  2. 現状維持
  3. 夫婦間の努力・協議で問題を解決する

離婚調停の場合、不成立に終わると離婚訴訟を申し立てる条件をクリアすることになります。
そのため離婚への意思が固いのであれば訴訟に発展する可能性があります。

一方必ずしも離婚を目的としない円満調停なら、改善に向けて引き続き夫婦で話し合いを続けることも可能です。

夫婦関係調整調停を利用する際の注意点

夫婦関係調整調停を人生で何度も経験する人は少ないでしょう。慣れない場で失敗してしまわないよう、出席前にいくつかのポイントを整理しておきましょう。
調停を利用する際の注意点を紹介します。

(1)感情的にならないよう注意する

まず、調停の場では感情的にならないよう注意が必要です。調停は当事者間で折り合いがつかない場合に利用することが多いため、相手の主張に納得できないこともあるでしょう。
しかし、こういったときも、なるべく冷静に受け答えしてください。

大きな声を出す、相手の欠点ばかり主張するなど感情的に対応すると、調停委員からの心証が悪化する可能性があります。
調停委員が相手方の味方についてしまうと、相手の要求を受け入れるよう説得されることも考えられます。

調停を有利に進めるには、調停委員の心証は非常に重要です。調停委員に伝える内容は事実を中心とし、落ち着いて話すようにしましょう。

(2)調停の方針は途中で変更できる

前述のとおり、夫婦関係調整調停には「円満」「離婚」の二種類が存在します。
夫婦関係調整調停では途中で方針を変更することができます。離婚前提で調停を進めていても、途中で気が変われば円満調停に切り替えることが可能ですし、その逆も認められています。

夫婦関係においては、トラブル解決の途中に心変わりすることが珍しくありません。
そのため家庭裁判所も方針変更には柔軟に対応しており、変更したい場合は調停委員にその旨を伝えるだけで変更できます。

調停を申し立てる際、申立書にどちらの調停を申し立てるのか記入する必要があります。
迷う場合は、申立時点の方針を「とりあえず」で記入すれば問題ありません。

(3)調停は出席拒否が可能

配偶者と話し合いの場を持つために調停を申し立てても、そもそも配偶者に話し合う気がなければ出席してくれない可能性があります。というのも、調停は呼び出しを受けた場合でも欠席が可能だからです。
配偶者が一度も出席しない場合は調停不成立で終了となります。

一応、正当な理由のない出頭拒否は5万円以下の過料の対象になっています(家事事件手続法五十一条の3)。とはいえ過料が適用される例は非常に稀です。
調停の欠席に対するペナルティはほとんど存在しないと思ってよいでしょう。

調停はあくまで合意のうえでの話し合いの場です。そのため、できれば事前連絡のない状態で裁判所から呼び出し状を送るのではなく、調停の場で話し合いたいと伝えておくのが望ましいです。
相手方に問題解決の意思がない場合、出席拒否という形で対応されることがある点に注意してください。

まとめ

夫婦関係調整調停は、夫婦が当事者間のみで問題を解決できないときに利用できる制度です。
夫婦関係の改善を目的とする円満調停と、離婚を目的とした離婚調停のいずれかを選択して申し立てを行います。
なお、調停中に方針が変わった場合は離婚調停と円満調停を切り替えることが可能です。

調停成立時の合意は、金銭の支払いに関するものであれば確定判決と同等の法的拘束力を持ちます。
調停自体はあくまで任意の話し合いですが、法定調書は債務名義の一種です。
結果を軽視せずしっかりと約束を履行する必要があります。

調停で自分の意見をしっかりと通すために、調停委員に話す内容は事前に用意しておきましょう。
最初の話し合いで質問される内容はある程度決まっているため、伝えたい内容をメモして会場に持ち込むこともできます。

調停にひとりで参加するのが不安であれば、代理人弁護士を選任して同行してもらうことも可能です。
とくに離婚調停では調停によって離婚条件の擦り合わせをおこなうため、専門家のサポートを受けることをおすすめします。
調停の準備と同時に、弁護士探しを並行して行いましょう。

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